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OALDを使い尽くそう!

寄稿者:山田 茂(早稲田大学)  

第三回目の記事はこちら

 ブログ最終回では、OALDを最大限活用するために、これまで触れられなかった使い方を取り上げる。まずは中級者、これから使おうと思っている学習者向けの活用法を提案し、次に上級者(教員を含む)向けに、前回扱ったアプリのFull text searchのさらなる活用法を見てみる。

中級者、これから使おうと思っている学習者向け活用法

 OALDは上級学習者向け英英辞典で、中級者向けにはOxford Wordpower Dictionary等がある。しかし、中級レベルの学習者が使えないということではない。以下のような使い方を試しOALDに慣れ親しみ、無理なく学習、英語力アップに役立ててみてはどうか。

わかりやすい箇所を読んでみよう!

- 用例、コラム類

 全てが英語で書かれている英英辞典は致し方なく敷居が高く感じられてしまう。しかし、全てがむずかしいわけではなく、比較的とっつきやすい箇所もある。定義は情報が凝縮されていて、抽象的でわかりにくい場合がある1。それに対し、用例、コラム類は普通の英語で書かれているのでわかりやすい。OALDには語法、同義語、文化情報など英語学習におけるキーポイントが様々なコラム(第2回記事「OALD:デジタル化のインパクト(1)情報提示」末の表「コラム」をご参照下さい)でカバーされている。気になるものから、拾い読みしてみるとよい。

- 百科的項目

 初期の学習英英辞典は言語に関する情報に特化していたが、百科的な情報も扱うようになった。OALDにもかなりの数の人名、地名、歴史上のできことなどがエントリーされており、平易な英語で簡潔に説明されている。関連情報も与えられていて、これらを読むことは楽しく勉強にもなる:

sanfrancisco発音記号

知っている語句を引き直してみよう!

- 基本語

 よく聞くアドバイスだが、知っている語句を学習英英辞典で引き直してみるとよい。既に意味(日本語の訳語)はわかっているので定義の難易度のハードルも下がり、時に目からうろこが落ちるような発見もある。拙著『学習英英辞典活用の手引き』(p. 9)では、日本語の訳語と英語の意味(定義)とのギャップに目を向ける目的で、not bad, climb, international, willingを引いてみることを提案した。Not badの直訳は「悪くない」だが、どのように定義されているだろうか:

notbad発音記号

日本語起源の英語

 知っている単語という意味では、日本語から英語に入った語の定義も親しみやすく読みやすい。OALD第8版付属のCD-ROMのAdvanced SearchでJapaneseをキーワードに検索すると、以下のような日本語起源、日本関連の語句がヒットする:
aikido, anime, Bon, bonsai, bonze, bullet train, bushido, butoh, futon, geisha, hiragana, ikebana, ju-jitsu, kabuki, kanji, karate, katakana, kendo, kimono, manga, miso, ninja, Noh, obi, origami, pachinko, romaji, sake, sashimi, shiitake, Shinto, Shogun, soy sauce, sumo, sushi, tatami, tea ceremony, tempura, teriyaki, wasabi, yukata, Zen

現在(2023年3月現在)、OALD(オンライン版)には以下のような語句も追加されている2
bento, cosplay(名詞、動詞), cosplayer, edamame, emoji, hibachi, kanban, matcha, mecha, ramen, TabataTM, Wagyu, yuzu

太字をチェックしてみよう!

- 使い方

 OALDには見出し語の他に太字で強調表示されている箇所がある。立体の太字は使い方(見出し語と一緒に使われる前置詞、副詞等の語句や使用パターン)を教えてくれる。例えば、名詞の後に同格のthat節が来られるか否かという、かなりの上級者でも注意を要する事項も手っ取り早く確認することができる:

danger発音記号

- 成句

用例中の成句や重要なコロケーションは太字で示されている。意味がわかりにくい場合はカッコつきの注記が付されている:

trend発音記号

この太字部分はそのまま使え、受信にも有用な、覚えておくべき表現だ。

Full text searchで何でも引いてみよう!

 アプリのFull text search機能に関しては次セクションで扱うが、中級者は気になる語句を何でも検索してみるとよい。例えば、World Cupを検索語に引いてみると、OALDに散りばめられた臨場感あふれ、すぐに覚えて使いたくなるような用例がヒットする:

  • They crashed out of the World Cup after a 2–1 defeat to Brazil. (crash out)
  • The team are ready for next week's World Cup clash with Italy. (cup 4, Extra Examples)
  • The victory keeps San Marino's dream of a World Cup place alive. (dream 2, Extra Examples)
  • They were disappointed by the team's early exit from the World Cup. (exit 4)
  • World Cup fever has gripped the country. (fever 4)
  • He's been chosen to represent Scotland in next year's World Cup Finals. (represent 3)

上級者向け活用法:Full text search

第3回記事でアプリのFull text search機能の有用性を以下のように紹介した:

Full text searchはキーワード(複数も可能)を基に、見出し語、成句、イディオム、用例を検索してくれる機能だ。用例に付された注記、Extra Examples 他コラム類も検索対象となる。見出し語、成句として収録されていない語句(準見出しになっていないコロケーションなど)も拾ってくれるので、オンライン版(例文検索はできない)より網羅的で、柔軟で、補完的な検索が可能になる。

上級者の中には、自身の検索のみならず、授業の予習のためにOALDを使っている教員も少なくないであろう。かくいう私もその一人で、Full text searchには大変お世話になっている。教員限定ではないが、後半ではFull text searchのさらなる活用法を見てみる。

- 網羅的な検索:あるかないかがわかる

 大学で英語を教えて四半世紀以上になる。授業の予習には学習英英辞典を使い、3分の1位の授業では英英辞典に基づく資料を作成し、配布してきた。常に完璧な予習ができているわけではなく、学生に、この語句は辞書のここに載っていますと、見落としを指摘されたことが2度ほどあった。Full text searchがあってダブルチェックできていれば、このような不覚を取ることはなかったであろう。
 Full text searchを使うと、ある語句が、OALDに見出し語、成句、用例として収録されているか否かがわかる。例えば、成句としてエントリーされていないin plain viewがviewの語義2のExtra Examples(The knife was in plain view on the kitchen table.)に含まれていることが瞬時にわかる。また、Fine feathers make fine birdsは載っておらず、like it or notは、それ自体は載っていないが、whetherの語義2の用例に以下があることを教えてくれる:I'm goingwhetheryou like it or not.

- ピンポイントな語義検索

例えば、下の例文中のfillは語義番号何番に該当するか:

It [The milk froth] should be nice and airy, yet firm at the same time, which is not an easy order to fill. (森田彰.2014. Teacher’s Manual for BBC World Profile on DVD. 南雲堂.94.)

Shortcut(意味の小見出し)があるにしても、多義項目の検索は上級者にもやっかいなものである。そのような思いから、fillと目的語のorderをキーワードにFull text searchを行うと、以下のようなヒットがある:

ドンピシャリの最初の用例をタップすると、それがfillの語義12にあることを教えてくれる3

fill発音記号

- Full text searchで語感を磨く

 上級者が英語力を高めるためにFull text searchを使うこともできる。気になる語句をFull text searchで検索し、ヒットした用例を吟味することにより使い方-意味、ニュアンス、コロケーション、コンテクスト等-を確認してみるのだ。例えば、様々なパターンを取るend upはOALDで以下のように記述されている:

endup発音記号

Full text searchの例文検索で見出し語の枠を飛び越え、OALDを縦横無尽に検索することにより、以下のようなヒット、発見が得られる:

end up doing somethingでは否定語notは動詞のing形の前に置かれる:

  • For all their talk of equality, the boys ended up not doing any cooking. (talk noun 4, Extra Examples)

・+ adv./prep.には以下のようなものもある:

  • We got lost and ended up miles away from our intended destination. (destination, Extra Examples; intended 1)
  • I usually end up with gravy down my shirt front. (front 1, Extra Examples; shirt front)

・名詞と共起する場合はasが伴われる場合が多いようである:

  • Without education, these children will end up as factory fodder (= only able to work in a factory). (fodder 2)
  • ‘Maybe you'll end up as a lawyer, like me.’ ‘God forbid!’ (God/Heaven forbid (that…))
  • I started as a trainee and ended up a supervisor. (start verb 6, Extra Examples)

・以下のような成句といっしょにも使わる:

  • The scene with the elephant ended up on the cutting room floor (= was not included in the final version of the film). (cutting room)
  • The firm ended up deep in debt. (deep 14)
  • His attempts to arrange a party ended up as a comedy of errors (= he made so many mistakes it was funny). (error)
  • The economy went into recession and taxpayers ended up footing the bill. Sound familiar (= does that sound familiar)? (sound verb 1)

OALDの用例はコーパスではない。しかし、見出し語を例示するという目的だが、一次選考を経た、質の良い用例の集合体である。スクロールやタップすれば、例文中の語の定義を即座に確認できる。CEFR(Common European Frame of Reference)、OPAL(Oxford Phrasal Academic LexiconTM)(いずれも第1回記事をご参照下さい)他で語句の重要度もチェックできる。例文中の成句は太字で示され、注がついている場合もある。ワンストップで、意味も文法も発音も、何でも手っ取り早く調べられるということが重要なのだ。

4回にわたり、OALDの過去と現在、紙版とデジタル版の違い、どのメディアで何ができるか、デジタル化の情報提示・検索への影響、使い方のヒントに関して書かせて頂いた。これらは、学習英英辞典を研究し、OALDを学習、教育の場で実際に使いながら考えてきたことの一部だ。拙ブログがこの素晴らしいリソースに親しみ、さらなる活用につながる何らかのきっかけになれば幸いである。

注:
1 3000語程度の基本語(定義語彙、OALDの場合はOxford 3000TM)で書かれているため、また文定義の導入により、定義はかつてよりはやさしくなっている(第1回記事をご参照下さい)。プレミアム・オンライン版(有料)のResources内のビデオUsing the dictionaryの一つに”Understanding dictionary definitions” (https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/resources/usingthedictionary)がある。以下のような定義に頻出する単語が、定義を理解するためにはもちろん、英語で物事を説明する際にも役立つと指摘されている:process, substance, instrument, act, organization, state, quality。
2 2022年8月には、bibimbap他、多くの韓国語起源の語がOALDに追加された
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/wordlist/new_words)。
3 トピックがLatte Macchiatoで、orderには「注文」と「要求」の意味がかけられている。

参考文献:
山田茂.2014.『学習英英辞典活用の手引き:英語教育における効果的な辞書指導のヒント』オックスフォード大学出版局.
https://www.oupjapan.co.jp/sites/default/files/contents/catalogue/oald/media/oup_guide_to_dictionary_use_2014_j.pdf

- 著者プロフィール -

山田 茂(やまだ しげる)
早稲田大学教授。日本英語表現学会副会長、日本実用英語学会理事、元アジア辞書学会 ジャーナル Lexicography 共同編集長。英語学・辞書学専攻。英和・和英辞典の編集、執筆にも携わる。

主な業績:
“Monolingual Learners’ Dictionaries – Past and Future” (The Bloomsbury Handbook of Lexicography, 2nd ed., Ch. 11, 2022)
『OALD活用ガイド』(2020、旺文社)
https://dic.obunsha.co.jp/oald10/dl_guide_book/OALD10_dic.pdf
『英語辞書をつくる: 編集・調査・研究の現場から』(共編、2016、大修館)

Let’s GoとGamerize Dictionaryを使った反転授業

寄稿者:Adam Kardos(AAS Press)  

ある日レッスンを始めようとした時、学習者たちが既にそのレッスンで学習する予定の語彙やフレーズを正確に綴ったり発音したりできるようになっていたらどうしますか。実は先日、こんな質問をLet’s Go共著者のバーバラ・ホスキンズ・坂本先生にお伺いしました。彼女の返事はこうでした。

「様々なことを無限にできますね!」

そして、学習者が有意義かつ信頼のおける方法で言葉を使い「習得」できるようになるために、教師にできるあらゆる楽しい指導法の具体的な例を彼女の言葉で説明してくれました。

この記事では反転授業に焦点を当て、学習者が英語で自然なコミュニケーションを図れるようになるために、Let’s Goシリーズを使って学習意欲を引き出す言語学習のアクティビティを行う方法について考えてみます。

反転授業とは?

反転授業は、ある意味日本では長年教育実践の一つとして「予習」という名前で行われているものと同じです。授業を受ける前に学習者が事前に学習内容を学ぶ過程のことを指し、授業での直接的な指導を最小限に抑えて学習者にアクティブ・ラーニングの機会を可能な限り与えることを目的としています。

Gamerize Dictionaryについて

Gamerize Dictionaryはゲームを搭載した言語学習アプリです。学習者はLet’s Goシリーズを含む様々なカリキュラムに基づいて英語の綴りや文法、スピーキングなどの演習を行うことができます。Gamerize Dictionaryに搭載されているたくさんのゲームをやっているうちに、それがコースに直接関連したリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングを練習する豊富な機会となります。反転授業には勿論慣れ親しんだワークシートやワークブックなどを使うこともできますが、このGamerize Dictionaryを反転授業に活用すると以下のようなことが行えます。

  ワークシート Gamerize Dictionary
フィードバック

学習者は間違えた箇所についてのフィードバックを遅れて受け取ることになり、英語の正確性を高めるための効果はあまり高くない。

学習者は間違えた箇所についてすぐにフィードバックを受け取れるので、正確性や英語への自身の向上へと繋がる。

反復演習

- 1ページにつき8~15の演習問題。
-進出語彙の演習は1~2回。
-何ページも宿題や課題を出されると学習意欲の減退に繋がる。
-復習問題を追加することはできるが、毎回ワークシートを作り直す必要がある。

- 1回10~15分のセッションにつき最大64の演習問題。
- 1つの問題につき最大8回まで繰り返し行える。
-ゲームで学習が楽しくなるので、学習者は気づかぬうちに多くの学習をこなすことができる。
-レッスンを通して繰り返し質問されるので、自然と復習にも繋がる。

学習者に求められること

-レベルにかかわらずワークシート1枚に取り組む。
- スピーキングやフォニックスの練習を取り入れるのは難しい。
-学習者によっては問題数が適切でないことがある。

-学習者のレベルによってゲーム内容を容易に変更することができる。
-特定のスキルにターゲットを絞ってゲーム内容を調節できる。
-学習者は覚えるまでゲーム内容を繰り返すことができる。

発音

-発音に関するフィートバックはない。

-発音に対するすばやく正確なフィードバックを受け取れる。
-再度取り組んだり向上させたりするための機会が豊富にある。

サポート・足場かけ

- 学習者は使用しているテキストの解答を確認することができるので、答えの書き写しに繋がってしまう。記憶力を養うという観点ではあまり好ましくない。

- ゲームを行う前後に音声を聞いたり文章を読んだりして内容を確認することができるので、学習者はゲーム中におのずと学習内容を思い出すことになる。

綴り

-手書きのライティング練習が可能。
-綴りについてのフィードバックを後から受け取ることは効果的ではない場合がある。

- 学習者は手掛かりをもとにキーボードで綴りの練習ができるが、手書きの練習はできない。
- 瞬時にフィードバックを受け取れるので、正しく綴れるようになるまで何度も練習することができる。

学習意欲

- 学習者によってはワークシートを面倒に感じることがある。
-ワークシートを行う目的が明確に提示されていないことがある。
-課題を終わらすよう強いられていると感じる学習者がいる可能性がある。

-ミニゲームで楽しく練習できる。
- ポイントを貯めて王国を作ることができる。
- ボーナスやペット、着せ替えなど学習者がプレイを続けたくなる機能が搭載されている。

復習

- Let’s Goのシラバスは既習内容を何度も練習できるように螺旋構造になっている。
- 必要な時必要なものを復習として宿題に出すのは難しい。

- 間隔反復学習により最適なタイミングで十分な復習を行うことができるので、記憶した学習内容を自然にアウトプットできるようになる。
AIによる復習セッションは、なかなか習得できないものを更に復習できるようになっている。

Gamerize Dictionaryでは、目標となる語彙・フレーズなどを授業で学ぶ前に自主的に学習することができます。更に学習内容を身に付けて自信を持って使えるようになるまで、すばやいフィードバックを受けながら何度も復習を繰り返すことができます。反転授業を行い限りある授業時間を最大限に活用するためにも理想的な解決法と言えるでしょう。

可能性は無限大

想像してみてください。ある日レッスンを始めて新しい単元の語彙やフレーズを紹介しようとした時、学習者たちが既にそれらを習得しスピーキングでもライティングでも流暢に使いこなせていたとしたらどうしますか。「すごい!今日の私の役目は終わった。」と思うかもしれません。そして「残りの55分間何をやればいい?」を思うのではないでしょうか。授業で時間が余った時は、次のユニットに進んだり他のコースブックを取り入れたりすることに使われることが多いでしょう。しかし、こうした場面は学習の次のステップの機会となります。既習の内容を活かして学習者に考えさせたりコミュニケーションを取らせたりするのです。

Let’s Go 5th Edition Level 4

Yellow Banana Academyにおける反転レッスンの例

先日、ベテラン教師で長年Let’s Goを愛用している天野尚子先生(Yellow Banana Academy主宰)とお話しする機会があり、天野先生が実際にクラスでどのようにGamerize Dictionaryを活用し学習を次のステップへを繋げているかをお伺いしました。以下に天野先生よりお伺いしたアイデアをご紹介します。

旅行の計画を立てる

このレッスンでは、学習者はどこに旅行に行くか、何を持って行くかを自分で決め、楽しく旅行の計画に取り組むことができます。レッスンの各段階は以下の通りです。

段階 Description

状況を設定し学習者の興味を引き付ける

ワクワクするような旅行先を紹介する動画を見る。音声は出しても出さなくてもよい。リスニングの理解を測る活動にならないように注意する。
学習者は簡単なワークシートに取り組み、動画で見たことや自分が行きたい場所について話し合う。

タスク1:目的地とアクティビティを決める

- 学習者はペアを組み、行きたい場所を決めてその理由も考える。
- 学習者は旅行先でどのようなアクティビティを行いたいかを決める。
- 学習者はペアで話し合ったことを簡単なワークシートに記入する。こうすることでスムーズに活動を進めることができ、英語での会話をより達成しやすくする足場かけとなります。

タスク2:持ち物を決める

- 再度ワークシートを使う。学習者は旅行に持って行くものを決めリストを作成する。

タスク3:計画を発表する

- 学習者は他のグループの方を向いてお互いに旅行計画を発表し合う。ワークシートは発表の原稿の役割を担うとともにタスクを達成するための手助けとなる。

タスク4:ライティング

- 最後に学習者は自分の立てた旅行計画のまとめを短い文章にして書く。

このレッスンプランでは学習者間に多数のやり取りが発生し、異なるスキルを通してコースブックで学習した内容を練習する機会を何度も持つことができます。また、自分の計画を表現しタスクを完了するために知らない単語を学ぶ機会にもなります。こうした活動では、学習者はGamerize Dictionaryで学習した馴染みのある語彙やフレーズを使ってタスクに取り組み始め、気負いせずに新しい言葉を学ぶ機会に対し心を開くようになるでしょう。

共著者のアイデア

授業でLet’s Goを活用するためのクリエイティブなアイデアや、学習者の限界を押し広げて既習語彙・表現でのコミュニケーションを促す方法のことなら、Let’s Go共著者のバーバラ・ホスキンズ・坂本先生が無限にアイデアをお持ちです。彼女によると、学習者にとって有意義な情報を聞き手に伝える機会を持つことが重要だといいます。つまり、自分が相手と話したいことを述べるべきだということです。これを実践する方法はたくさんあります。以下に、バーバラ先生からお伺いした授業で学習内容に息を吹き込むためのアイデアをご紹介します。

パペットショー:パペットの活用は学習者に思い切って話してみたいと思わせるにはうってつけの方法です。パペットを使ってLet’s Goのユニットに登場したダイアログを演じることもできます。テキストの内容通りのダイアログでも良いですし、少しずつ学習者にオリジナルのダイアログを作らせてパペットショーで演じさせてみましょう。

本を作る:ユニットを通して、学習者は自分でストーリーブックを作るために必要な情報を徐々に学んでいきます。バーバラ先生がある学習者の一例をご紹介くださいました。その子は猫が大好きで、毎日行う活動について学ぶユニットでは自身のストーリーブックの主人公を猫のキャラクターにしました。その子はお話を作るにあたり、まず猫の日常的な行動を描いた絵を順に並べて基本のアウトラインを作り始めました。そして更に細かい情報を付け加え、例えば「The cat takes a nap.」という文章を「The cat takes a nap on the bed.」といったように長い文章に書き換えました。そして完成したお話を皆の前で発表しました。

ゲームを作る:学習者が得意なゲームをやる時は、順番に主導権を握らせてあげましょう。一緒にルールを決めさせても良いですしまったく新しいゲームを作らせることもできます。子供はよくそういったことをやりますので、彼らに自然なコミュニケーションを促す例として上記のような進め方が挙げられます。このようにアクティビティを進めると、子供たちにゲームのルールについて話し合うための機会を与えることができます。子供たちはテキストで学習した言葉を使うこともできますし、それ以外の言葉を使ったコミュニケーションも促すことができます。

動画を制作する:学習者がユニットで学習する言葉を自信を持って使えるようになったら、動画を作らせてみるとよいと思います。例えば天気にまつわるユニットを学習した場合、天気予報の動画を作ることができます。コミュニケーションを取りながらこうしたタスクを最大限に活かせるようになると学習者も自分たちで機材を取り扱うようになり、また役割分担や小道具・ジェスチャーの提案、録画の再生・停止、撮影した動画のチェックなど、コミュニケーションの必要性が自然と発生します。

学習者に動画を制作させる別の利点は、保護者の方々や海外の学校の子供たちなど他の人に見てもらう機会になるということです。

反転授業を取り入れる

教師とは学習者にとって価値のあるリソースです。しかし、学習者には自分自身でできることと教師の助けや授業中でないとできないことがあります。もし毎週の授業内で限られた時間を使うのであれば、学習者が一人ではできないことを授業内で行ってみてはいかがでしょうか。文法や語彙のドリル練習や綴りの練習の時間を短縮し、一人では経験できないことを英語を使ってさせてあげ彼らの授業時間を有効活用しましょう。

Gamerize Dictionaryの詳細はこちら

OALD:デジタル化のインパクト(2)情報検索

寄稿者:山田 茂(早稲田大学)  

第二回目の記事はこちら

 今回はデジタル化が辞書検索に与えた影響について考えてみたい。ハートマンの辞書検索の7段階1の内、影響が最も顕著な第4段階「見出し語の特定」と、検索の幅を著しく広げたアプリのFull text search機能に焦点を当てOALDの電子的な検索について考えてみる。

見出し語の特定

 デジタル化のお陰で、適切な見出し語にたどり着くことが飛躍的に容易になり、確実に実行できるようになった。インクリメンタル・サーチ、ワイルドカード・サーチ(アプリのみ)、音声入力(アプリのみ)のお陰で、単語のスペリングが定かでなくても検索を進めることができるようになった。またアプリには、履歴検索(history search)の機能も備わっている2。成句検索も容易になり、kick the bucketがkickにあるのか、bucketにあるのか悩まなくてすむようになった。成句は基本的にそのまま入力すればよい。オンライン版では”kick t”を入力した時点でkick the bucketが候補として表示される。アプリ版ではFull text searchで”kick the”と入力すると、Idiomsにkick the bucketが候補として表示される:

 インクリメンタル・サーチは“教育的”な価値をも持つ。例えば、下の抜粋の句動詞fight out調べるためにfightを入力した時点でfight it outが表示され、fight it outそのものが成句であることを教えてくれる:

引用文:

Considerant and Proudhon fight it out. The caption reads: “Proudhon and Considerant know very well that neither one can digest the other. Nonetheless each seeks to devour the other. … A strange social aberration!!” Cartoon by Bertall, Le journal pour rire, February 24, 1849, reprinted in Bêtisorama. Photo by Harvard University Library Reproduction Services. By permission of the Houghton Library, Harvard University.

Beecher, Jonathan. “Chapter 11 - June 13, 1849” Victor Considerant and the Rise and Fall of French Romantic Socialism, Part Ⅲ Revolution. (California: University of California Press, California Scholarship Online, 2001), pp.246-266.
(https://academic.oup.com/california-scholarship-online/book/35523/chapter/305721089?searchresult=1#305721219)

Full text search

 Full text searchはキーワード(複数も可能)を基に、見出し語、成句、イディオム、用例を検索してくれる機能だ。用例に付された注記、Extra Examples他コラム類も検索対象となる3。見出し語、成句として収録されていない語句(準見出しになっていないコロケーションなど)も拾ってくれるので、オンライン版(例文検索はできない)より網羅的で、柔軟で、補完的な検索が可能になる。
 例えば、アプリでeye contactを検索してみると、これが見出し語としては収録されていないことがわかる。
Full text searchをタップすると、Examplesに8件のヒットがある:

詳しく見るとcontacteyeの項目の用例中に太字で示されていることがわかる:

contact(名詞、語義1):
eye(名詞、語義1):

通常、「見出し語→語義→用例」のルート4で行われる検索の手順が逆転している。これはすごいことで、紙辞書でもオンライン版でもできない。他の6つのヒットは以下の通りで、有用なコロケーション、コンテクスト、文化情報も与えてくれる:

contact(名詞、語義1、Extra Examples):
conversation (Extra Examples5):
empathetically
polite (Extra Examples):
rule(語義3):

 最後にFull text search の“補完的”な検索法を2例みてみたい。「補完的な検索」とは、辞書の記述を補うために行う検索という意味だ。下のweaknessのように、OALDは伝統的にスラッシュで区切ることによりスペースを節約し、多くのコロケーションを提示している:

使用者としては、それぞれのコロケーションがどのような文脈で使われるか知りたいところだ。exposeとweakness、revealとweakness…をキーワードにFull text searchを行えば、OALDをくまなく検索し、これらの語を含む用例を表示してくれる。
 成句にはバリエーションがあるものがある。OALDでは、”etc.”で他にオプションがあることを示している6。下の成句では、down to の後に「形容詞(最上級など)+名詞(物)」が来ることを示す:

どのような形容詞、名詞と共に使われるか気になる。down to theを検索語にFull text searchを試みると、down to the last detailを含む用例が最も多く7件ヒットした。その内6例の動詞がplanであった。動詞を含む使えるパターン(plan … down to the last detail)が確認できた。down to the smallest …を含む用例もヒットした。該当する項目(small、語義5)をチェックすると例文中にsmallest detailが太字で表示され、smallが「微細な」の意味で使われていることもわかった:

 Full text searchを使い、OALDに散りばめられた用例を一堂に集め眺めることにより、見えてくるものがある。例文をタップすると出所のエントリーが表示される。適宜、定義や他の例文をチェックすることにより、理解を深めることができる。

注)
1 ハートマン(Hartmann 2001: 89-92)は辞書検索を以下の7段階に抽象化した。これは紙の辞書の検索に基づいているが、受信・発信の両方の目的のための検索に適用される実によくできたモデルだ。一口に辞書検索といっても複雑で、正解にたどり着くためにこれだけのステップをこなしている訳だ:

  • 1) Activity problem(問題の認識)
  • 2) Determining problem word(問題となる語の特定)
  • 3) Selecting dictionary(辞書の選択)
  • 4) External search (macrostructure)(見出し語の特定)
  • 5) Internal search (microstructure)(語義の特定)
  • 6) Extracting relevant data(有用な情報の抽出)
  • 7) Integrating information(情報の活用)

2 紙、オンライン(無料・プレミアム)、アプリ版それぞれにどのような検索機能が備わっているかに関しては、第2回記事「OALD:デジタル化のインパクト(1)情報提示」末の表「検索」を参照されたい:
https://www.oupjapan.co.jp/ja/kidsclub/articles/teachers/index.shtml#OALD_202211
3 語源は対象とならない。
4 読んでいる英文と似た例文を手がかりに語義を特定することもあるので、「見出し語→用例→語義」の順番もある。
5conversationの Extra Examplesは54もあり、その中からeye contactを含むものを見つけ出すだけでも一苦労である。そもそもFull text searchがなければ、この中にeye contactを含む用例があることさえ知る由もない。
6 代表的な語句は示されず、スロットが…で示されている場合もある(例:in terms of something | in … terms)。

参考文献
Hartmann, R. R. K. 2001. Teaching and Researching Lexicography. Pearson Education.

著者プロフィール

山田 茂(やまだ しげる)
早稲田大学教授。日本英語表現学会理事、日本実用英語学会理事、元アジア辞書学会 ジャーナル Lexicography 共同編集長。英語学・辞書学専攻。英和・和英辞典の編集、執筆にも携わる。主な業績:“Monolingual Learners’ Dictionaries – Past and Future” (The Bloomsbury Handbook of Lexicography, 2nd ed., Ch. 11, 2022)
『OALD活用ガイド』(2020、旺文社)
https://dic.obunsha.co.jp/oald10/dl_guide_book/OALD10_dic.pdf
『学習英英辞典活用の手引き:英語教育における効果的な辞書指導のヒント』(2014、オックスフォード大学出版局)
https://www.oupjapan.co.jp/sites/default/files/contents/catalogue/oald/media/oup_guide_to_dictionary_use_2014_j.pdf

OALD:デジタル化のインパクト(1)情報提示

寄稿者:山田 茂(早稲田大学)  

第一回目の記事はこちら

 かつて辞書といえば紙だった。しかし、1990年頃から、学習英英辞典も携帯型電子辞書、CD/DVD-ROM、インターネットで引けるようになり、現在では、アプリも登場しスマホからアクセスすることも可能になった。今回は、デジタル化が辞書の情報提示に与えた影響を探ってみる。
 Oxford Advanced Learner’s Dictionary第10版(OALD10)のacknowledgeの項目を冊子版とインターネット版で比べてみよう。インターネット版の見やすさは歴然としている。紙の時代はスペースが貴重だった。限られたスペースを有効活用し内容を充実させるため、記号や略語を多用し、無駄なスペースを省く努力がなされた。使いやすさは最優先ではなかった。デジタル時代に入り、スペースの制約が緩和され、見やすく、フレキシブルな情報提示が可能になった。冊子版と違い、インターネット版では、発音記号、ショートカット、定義、個々の用例が改行されており、余白が多く目に優しい。

 細かく比較してみると、冊子版にはなく、電子版にのみ収録させている情報があることに気づく。以下がそれだ。プラス・サインをクリックすると展開される。
 + Verb Forms(動詞の活用と発音)
 + Synonyms admit(同義語acknowledge、recognize、concede、confessの解説)
 + Extra Examples(追加の用例)
 + Oxford Collocations Dictionary(左記の辞書からコロケーションを部分的に表示)
 + Word Origin(語源)
 acknowledgeの項目を最初から更に細かく見てみよう。をクリックするとOxford 3000からCommon European Reference of Frame for languages(ヨーロッパ言語共通参照枠、CEFR)のB2レベルの語がアルファベット順に表示される。Filtersの機能を使うと、Oxford 3000、Oxford 5000、Oxford 5000 excluding Oxford 3000のプルダウンが表示され、A1からC1までのレベル(複数レベル選択可)の単語を表示することができる。Downloadをクリックすると、以下のPDFのリストがダウンロードできる:
 The Oxford 3000
 The Oxford 3000 by CEFR level
 The Oxford 5000
 The Oxford 5000 by CEFR level
 American Oxford 3000
 American Oxford 3000 by CEFR level
 American Oxford 5000
 American Oxford 5000 by CEFR level
スクリーンのリスト上の単語をクリックするとその単語のエントリーにジャンプすることができ、青色()、赤色()のスピーカーのアイコンをクリックすると英米それぞれの発音を聞くことができる。検索ボックスに単語を入力することにより、表示されているリストを検索することもできる。
 隣のOPAL WをクリックするとOxford Phrasal Academic Lexicon (OPAL) のwritten wordsからacknowledgeが含まれるSublist 10の単語が表示される。OPALは、オックスフォード大学出版局がコーパスの分析により新たに開発したアカデミック・イングリッシュの重要語句のリストである。以下の4つのリストからなる:書き言葉の単語、話し言葉の単語、書き言葉のフレーズ、話し言葉のフレーズ。「書き言葉の単語」リストには1200のキーワードが100語ずつ12のサブリストに、「話し言葉の単語」リストには600のキーワードが100語ずつ6つのサブリストに示されている。それぞれサブリスト1に最重要語が含まれ、以下リストごとに降順で重要語が掲載されている。フレーズのリストは機能別になっている。「書き言葉のフレーズ」リストには約370のフレーズが15の機能別サブリストに、「話し言葉のフレーズ」リストには約250のフレーズが16の機能別サブリストに収録されている。

 

*書き言葉・話し言葉フレーズに共通する機能はハイライトされている。

Filters をクリックすると以下のプルダウンが示され、リストごと(単語は重要度別、フレーズは機能別)にフィルターをかけ該当する語句を表示できる:
 Dictionary: Academic English/English
 Word List: OPAL written phrases/ OPAL spoken words/OPAL written words/OPAL spoken phrases
Download をクリックすると、アカデミック・イングリッシュの重要語句がサブリストごとにまとめられた以下のPDFのリストがダウンロードできる:
 OPAL: written single words
 OPAL: spoken single words
 OPAL: written phrases
 OPAL: spoken phrases
 acknowledgeの項目に戻り、発音記号の前の青、赤のスピーカーのアイコンをクリックすると、英・米の発音を聞くことができる。冊子版では用例のパターンを示す太字の部分でacknowledgeが~で示されているが、オンライン版ではスペルが示されている。sthがsomethingとスペルアウトされている(sbもsomebodyとスペルアウトされている)。語義1には冊子版にない3つの用例が含まれている。
 acknowledgeの項目を見ただけでも、オンライン版は見やすく、情報量が多いことがわかる。余剰的な情報は畳み込まれ、見やすさは損なわれていない。紙の時代には、限られたスペースに情報を詰め込むため、最大限の努力がなされていた。
 現在、OALDには紙、オンライン(無料)、プレミアム・オンライン、アプリ版(Google PlayApp Store)がある。プレミアム・オンライン、アプリは有料だが、冊子版にはこれらのアクセスコードが付いている版もあり、またプレミアム・オンラインへのアクセスコードを単体でも購入可能である。OALDは今や「辞書」の枠組みを超え、語彙学習の指針を示し、英語学習・教育を総合的にサポートするリソースを提供する。検索のみならず、学習、授業に役立つ情報、機能、ツール、資料がふんだんに与えられている。重要なものについて、以下の見出しの下、どこに何があるか一覧表にしてみた:
 辞書本体に関わる情報
 コラム
 検索
 付録
 辞書の使い方、凡例
 その他

珠玉のリソースを有効活用し、OALDを使いつくす一助になれば幸いである。

Reference:
山田茂.2020.『OALD10活用ガイド』旺文社.
Takahashi, Rumi, et al. 2021. “An Analysis of Oxford Advanced Learner’s Dictionary of Current English, Tenth Edition.” Lexicon. No. 51. Iwasaki Linguistic Circle. 1-106.

 

凡例:○有り、△部分的に有り、×無し、―該当しない。記号の下に適宜所在を示した。
NEWはOALD10(2020)に合わせて導入されたことを示す。

●辞書本体に関わる情報

●コラム

●検索

●付録

〇Reference(オンライン・プレミアムResources内のReference pages)

●辞書の使い方、凡例

●その他

著者プロフィール

山田 茂(やまだ しげる)
早稲田大学教授。日本英語表現学会理事、日本実用英語学会理事、元アジア辞書学会 ジャーナル Lexicography 共同編集長。英語学・辞書学専攻。英和・和英辞典の編集、執筆にも携わる。主な業績:“Monolingual Learners’ Dictionaries – Past and Future” (The Bloomsbury Handbook of Lexicography, 2nd ed., Ch. 11, 2022)
『OALD活用ガイド』(2020、旺文社)
https://dic.obunsha.co.jp/oald10/dl_guide_book/OALD10_dic.pdf
『学習英英辞典活用の手引き:英語教育における効果的な辞書指導のヒント』(2014、オックスフォード大学出版局)
https://www.oupjapan.co.jp/sites/default/files/contents/catalogue/oald/media/oup_guide_to_dictionary_use_2014_j.pdf

中高の英語授業における英英辞典活用の取り組み 第二回

寄稿者:田中 十督(西南学院中学校・高等学校)  

第一回目の記事はこちら

 生徒たちに「ある学習活動を継続してやって欲しい」と指導者が思った時、必ずやらなければいけないコツがあります。それはその活動を授業できちんと大切にして、毎回どんなことがあってもそれをやる、ということです。これは英語の授業のどの活動においても同じことが言えます。例えば「音読をして欲しい」と指導者が目標や狙いを持っている場合、授業で必ず音読をしなければ生徒は家庭でもやろうとはしません。これはシャドーイング、リスニングなどにも同じことが言えると思います。

 通常、教育現場で出される英語の課題や宿題は、物理的に目に見えるものが中心的だろうと推測します。例えば問題集であったり、ノートであったり、いわゆるカタチがはっきりと残るものですね。
 一方で、音読、シャドーイング、リスニング、辞書引き、などは生徒がきちんと取り組んでいるかどうかをチェックする術がありません。僕も音読のチェックシートを作って毎週生徒に提出させていたこともありますが、果たしてどれくらい虚偽申告なく正直に生徒が記録し提出しているか、それを調べたり測ったりする手段が存在しないのです。すなわち、生徒を信じるしかない、ということになります。生徒のチェックシートに、いろんなことが体裁よく書き込まれていても、いざ生徒の音読を聞いていると「これは練習してないな」と疑わざるを得ないことも多々ありました。

 どうすれば生徒を信頼しつつ、かつ生徒に確実に学習活動を定着させられるようになるだろうか、と若い頃随分悩みました。僕は生徒が授業中に何に対して一生懸命なのか、また宿題でどんなことに丁寧に熱心に取り組むのかを丁寧に観察してみることにしました。すると次のようなことが分かってきました。それは「生徒は評価対象となることに対して熱心に取り組む」ということでした。当たり前と言ってしまえばそれまでなのですが、僕はこの大切なキーポイントを見逃していたんだな、と分かりました。その後は「この学習は必ず毎日やって欲しい」と思う学習活動は必ず授業でも重点的に力を入れて行うように授業をデザインし直しました。すると、生徒は家でも音読やシャドーイング、多読活動に熱心に取り組むようになりました。

 英英辞典を授業で活用するにあたって、生徒が日常的に英英辞典を使うように指導していく時にもこれと同じことが言えます。それは「毎回の授業、いかなる時も例外なく、必ず英英辞典を引き続ける」ということです。

 英英辞典を自分の指導に取り入れて6年目になりますが、毎回の授業では必ず英英辞典を引きます。生徒たちは冊子版のOxford Basic American Dictionaryという辞書を全員持っていますので、それを引かせます。教科書に出てくる単語、単語帳に出てくる単語、読み物に出てくる単語、リスニングで聞き取った単語、ありとあらゆる単語を英英辞典で必ず引くのです。

 辞書を引く際に大切にしていることは、文法事項をその都度確認していく作業です。この行為を除いては、英英辞典を引くことから得られる効果が半減してしまいます。これは「普段自分達が習っている英文法は生の英語の世界で生きているんだな」という実感を毎回毎回生徒に持ってもらうことが目的です。

Tip:音読・教科書を使っての活動・グループディスカッション・アクティブラーニングなど、あらゆる場面で手元の英英辞典を引き、ノートテイキングをしていく。

 音読をしたり教科書を解説したりする際、すぐ日本語の意味を教えたり英和辞典を引かせたりするのではなく、必ず英英辞典を引いてノートテイキングする習慣づけをしましょう。「生徒はすべて英語で書かれている語義がわからないのではないか」と言う観念を一度脇に置きましょう。第二言語習得を考えた時、生徒たちにとって余計な不安や恐れは習得の妨げになります。

 「英英辞典を引いてごらん」と指示を出すと、生徒の反応はこちらの見立てとは異なる様相を呈します。彼らは無抵抗に英英辞典を引きます。「英文を読んで友達と意味を考えてみて」と指示を出すと、ペアやグループで意味を推察し始めます。その後「この文って、前から区切っていくとこうで・・・こうで・・・」とスラッシュリーディングの要領で簡単に解説をし、その後別の指示を出します。ここが重要です。

 1つ単語を引いて終わり、としてしまうと習慣にはなりません。それは単なる「辞書引き」行為で終わってしまいます。活動に連続性を持たせて、その活動を生徒の学習習慣にまで高めていくためには、1つの活動の後に再度同じ活動を繰り返すことが大切です。

 「じゃあ、同じ品詞のこの単語はどう?引いてみて」と指示を出して、別の単語を引かせます。次は要領を得ているので、生徒もスムーズに「ふむふむ、なるほど」と得心が行くわけです。

 この活動を名詞、動詞、形容詞、副詞、そして冠詞、などのように、毎回の授業で辞書で引く品詞を変えて繰り返していきます。これを2週間くらい繰り返すと、生徒は英英辞典を難なく引くことに慣れていくのです。例を挙げてみます。goという動詞を引くと「to move or travel from one place to another,」と書いてあります。「ある場所からある場所へ動いたり移動したりすること」が日本語の意味にあたるでしょうか。これを解説する時に「to move動くことだよ、orあるいは、travel移動することだよ、from one placeある場所から、to another別の場所にね」という風に僕は解説をするようにしています。意味を前から取るんです。「じゃあ次に、comeを引いてごらん」と言って、同じ動詞を引かせるようにします。すると「to move to or towards a person or place,」と書いてあります。そして「to move toある方向へ動いて行くこと、orあるいは、towardsその方向へ、a personある人や、orあるいは、placeある場所へ」という風に生徒に簡単に解説を加えます。

 すると「動詞はto doで説明するんだな」ということと「前置詞が方向を指すんだな」という2つの文法事項が認識できます。こちらが細かく文法用語を駆使して解説しなくても、英英辞典の語義に触れるだけでこれだけの文法事項に生で触れることができ、なおかつ単語や繋がりを見ながら実際にどのように文が生成され、文法の意味が形成されていくかを自然に理解していくことができるんです。これを他の品詞でも繰り返していきます。

 実際に、僕は不定詞to do を文法授業で教える前に、中一でto doの意味を教えていました。また、例えばOxford Reading Tree Dictionaryに載っているaddressの語義は「Your address is the place where you live.」と書かれているのですが、中一のまだ英語に初めて触れる子供たちには一切文法事項を説明せずに「あなたの住所って、イコールどこにあなたが住んでるかってことなんだよ」と伝えていました。これで十分なんです。細かく「where S+Vは名詞節でどうの・・・」なんて話をしても、中一の子供は理解できませんし習得もできません。まずは読んで意味がなんとなく分かる、という認識を子供たちに作ってあげて、後々に文法解説を聞いた時に「そうか、あれはこういう仕組みだったんだ」という風に思考回路が確立していく理解の流れを作ってあげることが大事です。これはまさに、幼児が言葉を覚えていく時の「慣れ→習慣化→使用→文法理解」という流れを擬似的に作ってあげていることに他なりません。

 とっかかりを作ることは面倒に感じるかもしれませんが、きっかけを作りそれを毎日丁寧に繰り返しながら習慣化していくと、それが普通のこと、ごく当たり前のこと、当然のことに変わっていきます。僕が高校生の頃までは英和辞典を引くことは授業や家庭学習で当たり前のことでした。それは先生もそうしていましたし、経験則的にではありますが「授業でもそれがごく自然に行われていたからだ」と肌で感じて理解してきた事実です。それを英英辞典活用にそっくりそのまま適用し直しているだけの話で、このお話はなんら目新しい言説ではないのです。

 実際の授業で英英辞典を活用して、生徒の直読直解の回路を育ててみませんか。ではまた。

ORTの愉快なキャラクターたちとのスペシャル対談:ご家庭でORTを使用してのおうち英語について
~これからOxford Reading Treeを使おうとしている方に向けて・現在ORTを使っている方に向けて~

寄稿者: Oxford University Press Japan  

今回は森藤ゆかりさん(ビコさん)をゲストにお招きしてOxford Reading Tree (以下ORT)を使用した子育て方法について対談形式でお伺いいたしました。

① これからORTを使おうとしている方に向けて

Q:「初めてORTを使ってみようとおもったきっかけはなんでしたか?」

A: 息子が4歳の時、初めて本屋さんで「買って」と持ってきた絵本がORTでした。タイトルは”The Toys' Party”です。
我が家では息子が1歳前から少しずつ英語のCDを聞かせていたのですが、いずれは読書できるようにしてあげたい、と思っていたので、ORTを見て「これは、息子にちょうどいい」と感じました。薄手の絵本パックで量があり、内容も理解しやすく、何より子ども(キッパー)が生き生きと描かれていることに温かみが感じられて、とても気に入りました。

Q:「読んでみてORTの良さはどのようなところに感じましたか?」

A: ………続く

対談記事全文ではORTのキャラクターたちが登場しビコさんにお話をお伺いしています。こちら よりお読みいただけます。

森藤 ゆかりさん

森藤 ゆかり(ビコさん)

自身の子育てを機に、英語子育てサイトR-Train開設。以後20年以上、コミュニティやメディアで英語や家庭教育について情報発信を続けている。
息子は、バイリンガルに育ち東京大学へ。
著書「+(プラス)えいごではなまる子育て」、絵本の活用法など多数。

Oxford Advanced Learner’s Dictionary:今と昔

寄稿者:山田 茂(早稲田大学)  

 2020年、Oxford Advanced Learner’s Dictionary(以下OALD)の第10版が出版された。この辞書は、世界初の本格的な学習英英辞典、Idiomatic and Syntactic English Dictionary(以下ISED)に端を発する。ISEDは、英国から招聘され日本で英語教育に従事したA. S. Hornby他により編集され、1942年に開拓社から出版された。2022年はISEDが出版されたてから80年目の節目の年に当たる。この間、英語の世界語としての地位の確立、各出版社のR&D(Research & Development, 研究開発)並びに出版社間の競争、(応用)言語学・辞書学の研究の発展が相俟って、学習英英辞典は進化し続けてきた。 学習英英辞典は、1990年代半ば以降、情報の質が向上し、使いやすくなった。キーワードは「コーパス準拠」(corpus basis)と「使いやすさ」(user-friendliness)だ。具体的にどのような変化があったか、OALDの第4版(1989)と第10版(2020)のacknowledgeの項目を比べてみよう。

 まず、第4版に比べ第10版は、二色刷で、語義ごとに改行されており、見やすい。OALDは第6版(2000)から二色刷りになった。第10版の見出し語の後の は何を表しているのだろうか。

The Oxford 3000TM and The Oxford 5000TM

  はThe Oxford 3000を示す。これは、学習者が最初に習熟すべき3000語だ。第7版(2005)から導入され、第10版で改訂された。この3000語は、「使用頻度」と使用者に対する「妥当性」に基づいて選定されている。「使用頻度」はOxford English Corpus(20億語以上)の分析によって、「妥当性」はオックスフォード大学出版局の教科書から構築されたコーパスの分析により担保されている。また定義はThe Oxford 3000を使い書かれているので、定義語彙を設けていないOALD第4版のそれに比べてわかりやすい。
 は第10版で新たに導入されたThe Oxford 5000を示す。上級学習者の語彙学習の目安として、新たに2000語が追加された。The Oxford 3000、The Oxford 5000の鍵マークは見出し語のみならず、該当する語義にも付されている。
※The Oxford 3000TM 、The Oxford 5000TMのリストは以下を参照のこと。
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/wordlists/oxford3000-5000

Common European Frame of Reference (CEFR)

  等は、「ヨーロッパ言語共通参照枠」(Common European Frame of Reference, CEFR)におけるレベルを示している。CEFRは言語を使って何ができるかの基準を示し、昇順にA1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階がある。The Oxford 3000には から が、The Oxford 5000には または が併せて表示され、学習、教育の指針を示している。

The Oxford Phrasal Academic LexiconTM (OPAL)

  はwrittenの略であり、acknowledgeがアカデミック・イングリッシュの重要な書き言葉であることを示している。留学、英語での授業の受講等により、OALD使用者の多くにとってアカデミック・イングリッシュは重要な地位を占めるであろう。オックスフォード大学出版局はOxford Corpus of Academic English(7100万語)、British Academic Spoken English(120万語)の二つのコーパスを分析し、The Oxford Phrasal Academic Lexicon (OPAL)を作成した。OPALとは、書き言葉/話し言葉×単語/フレーズの組み合わせからなる4つのアカデミック・イングリッシュの重要語句のリストである。OPALの書き言葉のリストに入っている語句には 、話し言葉のリストに入っているものには 両方に入っているものには のマークが表示されている。
※OPALに関しては以下を参照のこと。
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/wordlists/opal

文法表記

 第4版に目を移すと、語義番号1に続く[Tn, Tf, Tw, Ca·n, Cn·t]が何であるかが気になる。これらは動詞型を示す。Tn は Transitive verb + n を意味する。第3版(1974)では[VP6A]と表示されていたことを考えると格段に親切であり、裏表紙裏には動詞型一覧が掲載されているのだが、いちいちこの表を参照し動詞型を確認するのは面倒である。そこでスペースは取るが、文法コードがスペルアウトされるようになった(sbはsomebodyの、sthはsomethingの略)。OALD第10版では動詞型(verb frame)を該当する用例の直前に置いている。OALD第4版とOALD第10版におけるacknowledgeの第1語義の動詞型と用例を下の対照表にまとめた。第10版のわかりやすさは一目瞭然である。

Shortcuts

 再びOALD10に目を転ずると、各語義番号の前にドットと大文字で示されている などが目に入る。全てが英語で書かれている学習英英辞典において、見出し語の複数の語義の中から、迅速かつ正確に適切な意味を選び出すことはかなり骨の折れる作業である。そこで、OALDでは第6版(2000)からshortcutsという、いわば「意味の小見出し」を付けることによって、使用者の検索の負担を軽減した。使用者は、英語の定義と用例を一つ一つ精査するのではなく、shortcutsをスキャンし、当たりを付けてから語義を吟味することにより、容易に語義選択ができるようになった。

コーパスの影響

 1987年に『コウビルド英語辞典』が導入して以来、コーパスが辞書編集に不可欠なものになった。コーパスは頻度という客観的な基準をもたらし、この基準が辞書編集のあらゆる段階―見出し語の特定・選定から語義区分・配列、文法的・語彙的パターンの特定、用例の提示まで―に影響するようになった。
例えば、OALD第4版と第10版におけるacknowledgeの語義配列を比べてみよう。両者に違いがあるが、後者はコーパスの分析による頻度に基づいている。

 上掲の対照表からもわかる通り、OALD第4版に示されていた動詞型 TwCn·t はOALD第10版には含まれていない。コーパスの分析の結果、頻度が十分に高くなかったのであろう。acknowledge the factなど頻度の高いパターンは用例中に太字でハイライトされている。

 現在の学習英英辞典は「コーパス準拠」と「使いやすさ」の名の下に、正確な情報がわかりやすく、使いやすい形で提示されている。OALD第10版も大規模コーパスに基づき編集され、重要語の表示がなされている。重要語と定義語彙を兼ねるThe Oxford 3000、shortcuts、見てすぐわかる動詞型の表示等、使いやすさを追求した新機軸が導入された。かつては紙のみだったが、現在はインターネット上に無料で公開されている(https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/)。使わない手はない。辞書の電子化は、編集、検索にも影響を及ぼしている。これらに関しては次回触れることにする。

参考文献
山田茂.2020.『OALD10活用ガイド』旺文社.
https://dic.obunsha.co.jp/oald10/dl_guide_book/OALD10_dic.pdf

著者プロフィール

山田 茂(やまだ しげる)
早稲田大学教授。日本英語表現学会理事、日本実用英語学会理事、元アジア辞書学会 ジャーナル Lexicography 共同編集長。英語学・辞書学専攻。英和・和英辞典の編集、執筆にも携わる。最近の業績に“Monolingual Learners’ Dictionaries – Past and Future” (The Bloomsbury Handbook of Lexicography, 2nd ed., Ch. 11, 2022) がある。

中高の英語授業における英英辞典活用の取り組み 第一回

寄稿者:田中 十督(西南学院中学校・高等学校)  

 「日本語を介さないで英語を英語のまま理解する」ことは、英語を学習する日本人にとって一つの夢であり理想なのではないか、と思います。これは、僕たちが日常生活の中で「字幕なしで英語の映画が見たい」という話を耳にすることがあることからもわかります。

 高校で英語を教えている時に、日本語での指導から一転、英語のみでの授業、いわゆる’all in English’型の授業を標榜し取り組んだ時期がありました。初めは僕も手探り、生徒たちも様子見。「どうなるんだろう」とお互いに思いながら、でもとにかく良いものにならないか、と互いに歩み寄りつつ授業を進めていました。

 スピーキング活動をしている時、生徒に英語を話させる段階で、ひとまずはものを英語で説明したり場面を描写することができなければ、自分の意見を自由に言ったり、相手が言ったことに対して反論したり同意したりすることはできないのでは?という疑問が自然発生的に目の前に表出しました。

 「寿司って英語でなんて言えばいいんだろう」「本音と建前って英語でどう言えばいいの?」授業の中のトピックに対して英語が出てこず、生徒にも僕にもフラストレーションが溜まる日々でした。

 授業準備の際、途方に暮れていた僕は、何気なく本棚に目をやり気分転換の為に普段はあまり手に取ることのない本を数冊取り出して、立ったままパラパラとめくったりしていました。何気なく手に取った数冊の中に、Oxford Advanced Learner’s Dictionary(オックスフォード大学出版局 刊)がありました。「これもしばらく開いてないよなぁ」と思い、過去に線を引いた単語などを眺めては「懐かしいよなぁ」と微笑みながら辞書をめくっていました。「おっ、ちなみに寿司ってなんて書いてあるんだろう」と思いめくってみると「sushi / noun / a Japanese dish of small cakes of cold cooked rice, flavored with vinegar and served with raw fish, etc. on top」と書いてありました。

 「そうか、英語で寿司を説明する時にはこう言うふうに言わないといけないんだよね」と再認識させられました。同時にその時に、セサミストリートの番組の中に出てくる、小さな子供に新しい物事や単語を大人が優しく説明するコーナーを思い出しました。

 そうか!これだよ!これだ!これをやれば良いんだ!

 「英英辞典を引く」という活動を授業に入れる。「一体どういう反応が返ってくるんだろう」と僕は内心不安でした。自分が学生の頃から英和辞典を中心に辞書を引いて勉強をしてきたことはあったけれど、英英辞典を引いて英語を勉強したことはありませんでしたし、自分の先生から勧められたこともありませんでした。英英辞典は全て英語で書いてあるし、英語が相当できるようにならないと引いて勉強するには高度な教材、というイメージを持っていたんだと思います。

 僕はその翌日の授業から、英英辞典を引いて語義をノートに書いたり、友達と説明しあったりする活動を授業に取り入れました。僕が心配していたことは杞憂に終わりました。生徒たちはなんの違和感もなく英英辞典を引き、語義をペアやグループで読みながら「これって、もしかしてこう言う意味?」「この単語って、意味これじゃない?」なんて言いながらワイワイ活動に取り組んでいたのです。

 英英辞典を導入して2年ぐらい経った時、生徒たちの書いてくる英作文に変化を感じることができました。英作文をする際、日本人は日本語の語順のまま単語を並べて英語を書くきらいがあり、添削指導をする時にはその違いを一つ一つ指摘して直していかなければいけなかったのですが、英英辞典で指導している生徒たちにそれは見られませんでした。また、添削をする際、英英辞典を持ってきて「先生、この部分はこんな風に書いたほうがいいですよね?辞書にはこう言う例文が載っていたのですが、どう思いますか?」と言う生徒が増えました。これは喜びと共に大きな驚嘆をおぼえたのを記憶しています。

 高校3年間、英英辞典を使う活動を生徒に指導してみて、英英辞典を使うことのメリットを強く感じたので、僕は翌年中学1年生の担当になる際、パートナーの同僚に「中1から英英辞典を使わせてみて、英語を英語のまま理解する直読直解の回路を生徒に開発してみませんか?」と提案しました。高3の活動を同僚には伝えていましたので、とにかくやってみましょう、ということでピクチャーディクショナリーを教材として導入し、生徒たちと英文を頭から固まりごとに理解していく方法で音読、暗唱活動を行いました。あれから3年経ち、生徒たちは今高1になりました。今は小さめの英英辞典を一人ずつ持って、授業の内外で引くようにしています。生徒の方が、英英辞典を引くことによって得られる効果を実感しているように思います。

 英英辞典を使うことのメリットの一つは、日本語を介さずに英語のままの理解を促進できる点です。確かに単語を覚える際は、日本語で覚えてしまうことが先に来る方が良いのですが、英単語の語義を英文で理解することにより、文法説明もシンプルにスムーズに理解することができます。
 次回は、実際に英英辞典を使ってみるお話をご紹介いたします。ではまた。

日本の小学生を対象とした英語レッスンにおけるグローバルスキル指導

寄稿者:ロブ・ピーコック(Oxford University Press Japan)  

私が日本で英語を教え始めたのは2000年10月のことでした。当時小学生だった教え子達が今ではすっかり大人になり、テクノロジーの発達したグローバル社会である2020年代を担っていると考えると何だか妙な感じです。2000年代初めの頃のことを思い返すと、その後の20年で私たちの生活がどのように変わりどのような能力や知識が必要になるかなんて、当時はまったく想像できませんでした。私は携帯電話すら持っていなかったのですから。
21世紀の発展に伴い、絶え間なく変化するこの世界において様々な変化に柔軟に対応し、夢を実現させるために必要となる能力や適応力を養うための教育がますます必要となってきました。オックスフォード大学出版局が刊行した「グローバルスキル」についてのポジション・ペーパーでは、このスキルを5つのグループに分けて示しています。コミュニケーションとコラボレーション、創造と批判的思考、感情の自己調整と幸福、デジタルリテラシー、そして異文化コンピテンシー*とシチズンシップ。これらのスキルはすべての年齢の子供たちが一般教養として身に付けることが不可欠だと考えられています。そして、英語のレッスンは子供たちが早い段階からこれらのスキルを伸ばすための絶好の機会となり得るのです。この記事では、日本の小学生を対象とした英語のレッスンを想定し、グローバルスキルの5つのグループのうち2つ(コミュニケーションとコラボレーション、感情の自己調整と幸福)の要素をレッスンに取り入れるためのアイデアをご紹介します。
* 異文化を理解して適切な行動をとることができる能力

コミュニケーションとコラボレーション

日本の子供向け英語教室のレッスンというと、大抵は比較的1クラスの人数が少なく、教師が質問し生徒が答える、といったように英語でのコミュニケーションの大半は生徒と教師間で交わされます。例えば、レッスンでは「What’s your favorite (sport)?」「I like (tennis).」など質問とそれに対する答えのパターンを学習しますが、多くのレッスンでは教師が一人一人に質問し生徒が自分の答えを返す、といったことが行われています。勿論このやり方に問題はありませんが、優れたコミュニケーション力・コラボレーション力を伸ばすためにはもっと生徒同士で会話をさせる必要があるのです。それはペアやグループワークでも良いですし、共通の目標を達成するために共同作業をさせるのも良いでしょう。課題の内容によって、生徒自身に自分の役割を決めさせてから課題に取り組ませるのも良いと思います。以下は、レッスン内で生徒がより多くのコミュニケーションとコラボレーションの時間を持つためのアイデアです。

・生徒に質問と回答の両方のフレーズを教え、それを生徒同士ペアで練習させます。初めはお互い英語で話すことをためらうかもしれませんが、繰り返し練習していくうちに自然と英語でコミュニケーションを図れるようになっていきます。特に幼い年齢の生徒の場合にはまず会話を組み立てる練習が必要です。例えば、各ペアに数枚のカードのセットを配り、カードを表にした状態でシャッフルさせます。そしてカードの絵を指さしながら「What’s this?」とお互いに質問させてみましょう。

 ・レッスンにプロジェクト活動を取り入れましょう。プロジェクトは生徒たちに共同作業をさせるにはうってつけの方法です。例えば、まず生徒をグループに分け、各グループに体に良い食べ物についてのポスターを制作させます。課題を完成させるには、生徒たちはまずどんな食べ物を取り上げるか相談して決めなければなりません。(話し合いを進めやすくするために「取り上げる食べ物は5種類」など選択肢の数や特定の目標を提示しておくと良いでしょう)生徒一人一人が行うタスクには様々なものがあります。食べ物の絵を描く人。各食べ物の絵の下にその食べ物の名前を書く人。ポスターに題名を書く人。ポスターに装飾を付け足す人。ポスターが完成したら、最後に各グループにポスターを紹介するための短い発表を行わせます。勿論、この時も誰がどの種類の食べ物について発表するかを決めさせます。この一連の流れにおいては、すべて自分でやりたいという子もいればグループ活動に気乗りしないという子もいるでしょう。しかし注意深く課題を設定しどのような期待が望めるかを考慮して生徒たちのグループ活動を観察すると、どの子も「課題を完成させるためにはどのように共同作業をすれば良いか」「皆でやるにはどう協力すれば良いか」を学んでいることが分かるはずです。生徒たちが物事を決めるためには自然とお互いにコミュニケーションをとることが必要になりますので、クラスルーム・イングリッシュを教えておくと便利ですし生徒たちにもより多くの英語を発話させることができます。例えば、今回ご紹介したプロジェクトの場合には「Let’s draw (broccoli).」「I’ll (write the title).」といったフレーズが考えられます。

感情の自己調整と幸福

毎回のレッスンだけでなく学習プロセス全体において、生徒たちの感情は自然と様々な遍歴を辿ることになるでしょう。大切なのは、生徒自身がそれらの感情に気づき、また友達も同じような感情を抱いているのだということを認識することです。なぜなら、こういった感情は生徒たちの人生において、自分や他人にとって何が正しくて何が間違っているかを判断するための指針となるからです。10代の若者の強い感情を抑圧することは鬱病を引き起こすことに繋がると言われていますが、そうした状況を回避するためには子供でもできる健康的な対処法を教えておくことが大切です。そこで、英語のレッスン内でも行えることをいくつか挙げてみます。

・絵本を読みましょう。物語は、生徒たちが登場人物の感情を理解したり共感する心を育んだりすることに繋がります。皆で一緒に物語を読む活動は、登場人物の感情に注目させるのに大変役立ちます。例えば、ある登場人物がアイスクリームを落としてしまうシーンがあったとしましょう。そんな時は生徒たちに「How does the girl feel?」「Why?」「Do you like ice-cream?」といった質問をしてみると良いと思います。

・生徒たちの感情を聞いてみましょう。レッスンの合間に生徒たちの気持ちを確認するための時間を設けるようにすると、教師も生徒に自分の感情と向き合うよう促しやすくなります。毎回決まって「I’m fine, thank you.」と返答させることは避け、その時の本当の気持ちや状態について答えさせるようにしてください。レッスン開始時に少し疲れている様子だった生徒もレッスンが進むうちに楽しくて元気一杯になるということもあるかもしれませんし、レッスンが終わる頃にはお腹が空いているかもしれません。常に生徒たちの感情がどのような状態なのかに気を配っておくと、集中力を維持させるためにどのアクティビティを取り入れるべきかを判断する手立てにもなるでしょう。

今回この記事では、ポジション・ペーパーで示しているグローバルスキル5つのグループのうち2つのグループについてのみ言及しました。グローバルスキルのすべての要素についてもっと知りたい、という方は、7月に大阪・東京にて開催予定のオックスフォード児童英語教師向けサマーワークショップ2022にぜひご参加ください。私のプレゼンテーションにてグローバルスキルについてより詳しくお話しいたします。

More about (not just) Phonics! 第2回

寄稿者: 佐藤ケイト(北海道科学大学) (2021/5/31)  

今年3月に開催したオックスフォード児童英語教師向けワークショップシリーズ2021オンラインにて、教員トレーナーとしても活躍中の佐藤ケイト先生(北海道科学大学 准教授)がプレゼンテーションを行い、幼児・児童へのフォニックス指導に役立つアクティビティをご紹介くださいました。2回にわたってお送りするこの記事シリーズでは、それぞれの年齢グループに適切なフォニックス指導についてのアドバイスのほか、教室管理・運営や継続的な指導技術のブラッシュアップなど、佐藤先生が様々なトピックについてさらに情報提供してくださいます。

第1回目の記事はこちら

その他の要素

以前所属していた教室で私が受け持っていたコースは約2年間で修了するものでしたが、毎週50分の授業のうち10~15分をフォニックス指導に費やしていました。フォニックスのルールに当てはまらない少し難しい綴りの語彙グループを学習する前段階のクラスです。授業では、英語の44の音素を教えることから始まり、繰り返し音を統合して単語を作る練習をさせたり、グレイディッド・リーダーの本文で使われている単語の音のパターンを探し出させたりしていました。(お教室にグレイディッド・リーダーのシリーズをいくつか揃えておくことは非常に良い投資だと思います)ここでは、例えば小学校の大人数クラスのように難しい環境で指導していらっしゃる先生方に向けて、コロナ禍でも取り入れられるウォーミングアップのアクティビティをご紹介します。
「North-South-East-West」というアクティビティで、まずその日授業で指導する4つの音素が書かれたカードを用意し、壁に貼り付けられるようにしておきます。子供たちを席につかせ先生に注目させた後、カードを一枚ずつ壁に貼り付けていきます。(壁一面につき一枚)この時、カードに書かれた音を紹介しながら行い、すべてのカードを壁に貼ったら子供たちを立たせます。そして先生が言った音のカードを指ささせましょう。例えば、先生が’b’の音を発音したら、子供たちは「b」と書かれたカードの方を向いて指さします。はじめはゆっくり行い、段々とスピードを速めることもできます。また、復習のアクティビティとして行う場合には、子供たちに先生役をやらせても良いでしょう。このアクティビティを行う際は大きなカードを使用することをお勧めします。先生がご自身で印刷してカードを作れる場合には、学習の進み具合によって’st’、’sl’、’sp’、’sn’等音を組み合わせる練習をするために2文字のカードを作っても良いと思います。
ご存じの通り子供たちは母国語もまだ流暢には話せませんので、ましてや英語であればそれは明らかです。ですから、耳や目に入ってくる言葉の多くを子供たちはまだ知らないかもしれない、ということを気に留めておくと良いでしょう。彼らにはまだ知らない語彙がたくさんあります。6歳頃になると語彙が増え始め「分からない」ことも主張するようになります。こうした成長は当たり前のことですが、学習をうまく進めていくためには一度に新しい単語をたくさん導入して子供たちが負担に感じないようにすることを心掛けると良いと思います。
新しい音を紹介・導入したら子供たちはその情報を脳内で処理し、思い出して自信を持って口にするためにある程度時間がかかるということを覚えておいてください。
従って、学習内容を定着させるために子供たちに時間や間隔を与えることは非常に重要なことで、私がペースの早い指導をお勧めしないのもこの理由です。ですから「denacard」やrace track race」といったアクティビティが重要な役割を果たします。子供たちに練習の機会を多く与えるために躊躇せずクラスをグループ分けしてください。
そして、予め決めたルーティーンに沿って授業を進めましょう。(私の研究論文*(JALTのTeaching Young Learners分科会が刊行するジャーナル誌『The School House』に2018年に寄稿したもの)でも詳しく触れています)研究にあたっては、フォニックスのみを指導するクラスだけを受け持っているということを言及しておきます。
*参考文献一覧をご参照のこと。

教師の指導力向上

私が自身の教室を開校した2002年当時は、インターネット上の情報も限られていました。書物が私の指導者だったので何冊も読みました。今日では研究論文やジャーナルを読むことが多いです。何を読むにしても、自身の専門性や指導力の向上のために続けていくことが大切です。
もしあなたが2つの音、例えば’u’の音(”cup”の’u’)とあいまい母音の指導につまずいている場合、ちょっとした知識が手助けになります。この類の問題を解決するにはIPA(International Phonetic Alphabet、国際音声字母あるいは国際音声文字)を参照するのが良いでしょう。するとそれら2つの音が類似していることが分かります。また、先生が問題を抱えている時には子供たちも同じ状況であることが多いです。以下に述べる通り、あまり一つの問題に固執してしまうと障害になりかねません。あいまい母音というのは扱いにくい音です。より口を閉じて下を前に出すことで発音することができます。しかし”cup”の’u’は、より口を開けて下を引いて発音します。人はそれぞれ訛りやアクセントが違いますので音声を流したり動画を見せたりしても良いですが、いずれにしてもフォニックスを指導するうえであいまい母音を取り上げない場合もあると思いますのであまり心配し過ぎる必要はありません。
フォニックスがリーディングへの踏み台であるということを覚えておいてください。幼児からもっと歳が上の子供たちまで、リーディング活動としてあらゆることができます。ワークショップで一緒にアクティビティを行ったように、先生方も様々なことができます。絵本を使った読み聞かせは、文脈の中で幅広い種類の語彙を紹介するのに最適です。幼児クラスでは毎回「本の時間」を設けることを強くお勧めします。

書体とライティング

正しい書き順で書き方を学ぶことは他の文字同様アルファベットでも重要です。オックスフォード大学出版局等の出版社は幼児・児童向けの教材の文字にイギリス式のサスーン書体を使っています。サスーン書体はイギリスやオーストラリア等で教育用書体として用いられているものです。
筆記体のように繋げて書く文字のかたち(サスーン書体の仲間にもあるもの)を教える場合、小学4年生以上であれば自力で文字を繋げられる子もいますが、その場合でも授業内で黒板・ホワイトボードに書かせるようにしてください。
子供たちは機会を与えられれば色々なことができるようになり、それに驚く先生方もいらっしゃることでしょう。例えば3歳の子供たちにフォニックスを教える場合、多くの先生方がカードを見せるというグレン・ドーマン博士のテクニックを基にしたメソッドを試されるのではないでしょうか。カードは毎回の授業でとても素早く行うことのできるアクティビティです。毎回少しずつ素早く(かつ機敏に)一貫して指導を続けることが鍵となります。3歳でも文字の音を学ぶのに幼すぎるということはなく、文字と音を繋げることもできるということを忘れないでください。初めて行うアクティビティはうまくいかないこともあるでしょう。1つのアクティビティについて少なくとも3回は試してみて、何がうまくいっているかを見ながら微調整をしていくことをお勧めします。

お勧めしないこと

「何をしないか」は「何をするか」と同じくらい重要なことになり得ます。私が申し上げたいのは、何をするにせよ目的は子供たちの英語力を向上させるということであり、すなわち教師としてSMART(specific(具体的で)、measurable(計測可能で)、realistic(現実的で)、timed(適切な時間範囲の))ゴールを設定するのが最適であるということです。週に1回50分のクラスではすべてを教えることはできません。ですから、集中して幾つかのことに焦点を絞って指導する必要がありますが、先生自身が授業の中心になるということではありません。Floppy’s Phonicsの’le’のカードがその一例です。 私は’ff’が ‘f’という音になると指導したことはありませんが、子供たちは自然と促されて理由付けし’ff’が’f’という同じ音を作り出すことを推測するのです。同様に’le’の文字の組み合わせもあえて取り上げて指導したりはしません。逆にそれらの文字を混ぜて提示すれば、子供たちはこれまで学習したことを思い出して論理的に理由付けし、それらの音が一文字や‘l’を使った2文字と同様の音だということに自ら気づけるかもしれません。

しかしながら、結局のところは教師としてどのフォニックス指導のシステムを取り入れるかを決めるべきだということです。’le’の文字は‘l’と同じ音を生み出しますので、しばらくしてそれらの文字の組み合わせを、特に詳しい説明をせず子供たちに見せてしまって問題ないでしょう。その後必要であれば、単なる記憶だけでなく、自ら生成できるようになる段階まで引き上げてあげることができます。インターネットで検索すれば、参考文献一覧に載せている「Get Reading Right」のように多くのフォニックス指導のシステムについて情報を収集することができます。

教室を運営していた頃、私は一時的に起こることについては問題視していませんでした。ですから、例えば子供たちがよそで習ってきたことと私と一緒に学習したことが違うと指摘してきたとしても、私だったらよそで習ったことはそこでは正しいことだし私が教えたことは私のクラスでは正しいことだ、と伝えます。よく混乱を招くのはローマ字と英語の違いです。シンプルにローマ字は日本語で英語は英語、だと伝えれば子供たちもまた英語学習に集中し始めてくれるでしょう。
同様に、私はアメリカ英語とイギリス英語の違いも問題にしていませんでした。世界にはイギリス英語やアメリカ英語だけではなくあらゆる種類の英語が存在しています。教師は自分が一番馴染みのある英語を教えていましたし、必要に応じて英語にも様々なバージョンがあることを教えれば十分だと思います。着実に学習を積み重ねていくためには教科書のシラバスに忠実に沿っていくのが良いでしょう。私だったら不必要な混乱は避けるようにします。やはり先生方皆さんも生徒を混乱させるようなことはしたくないと思います。もし子供たちから違いを指摘されたら違いがあることを認めるだけに留め、それ以上深入りして問題や障害を生むようなことはしなくて良いのです。
最後に、3月に行った私のワークショップの録画はいつでも見ることができ確認したい点をおさらいできます。お店にもインターネットにも数多くの教材やリソースがありますが、最適なのはそれらをよく見て、自分が指導するにあたって必要としているものに合致するかを見極めることです。勿論オックスフォード大学出版局のエリア担当ELTコンサルタントも喜んで教材探しのお手伝いをしてくれるでしょう。

参考文献一覧

・Cowan, N., Morey, C. C., AuBuchon, A. M., Zwilling, C. E., & Gilchrist, A. L. (2010). Seven‐year‐olds allocate attention like adults unless working memory is overloaded. Developmental science, 13(1), 120-133.

・Doman, G., Doman, J., & Aisen, S. (1975). How to teach your baby to read. Gentle Revolution Press.

・Fry, E. (2004). Phonics: A large phoneme-grapheme frequency count revised. Journal of Literacy Research, 36(1), 85-98.

http://www.getreadingright.com.au/synthetic-phonics-teaching-sequence-letters-and-sounds/

・Sato, K.J.M. (2018) Factors to Consider in Creating Optimum Learning Environments (OLE) for the Young Learner’s EFL Classroom. The School House, 26(1) 19-25

More about (not just) Phonics! 第1回

寄稿者: 佐藤ケイト(北海道科学大学) (2021/4/28)  

今年3月に開催したオックスフォード児童英語教師向けワークショップシリーズ2021オンラインにて、教員トレーナーとしても活躍中の佐藤ケイト先生(北海道科学大学 准教授)がプレゼンテーションを行い、幼児・児童へのフォニックス指導に役立つアクティビティをご紹介くださいました。2回にわたってお送りするこの記事シリーズでは、それぞれの年齢グループに適切なフォニックス指導についてのアドバイスのほか、教室管理・運営や継続的な指導技術のブラッシュアップなど、佐藤先生が様々なトピックについてさらに情報提供してくださいます。

先日のワークショップでは、幼児・児童へのフォニックス指導に関心がある大変多くの日本の先生方にお会いすることができ、感激しました。ワークショップ内でお話ししたとおり、フォニックスは4技能すべての基礎となるものです。3月7日の私のワークショップに参加してくださった方々に御礼申し上げます。土曜日の午前中に貴重なお時間を費やしていただくのは大変だったのではないでしょうか。ワークショップ中にいただいたご質問すべてにお答えすることができませんでしたので、今回この記事を書くことにしました。

フォニックス指導の始め方

ある研究結果によると、幼児・児童が確実に記憶することができる物事の理想的な数は4つ前後だそうです。(Cowen他、2010年)このようにワーキングメモリ(情報を短期間保持しておく記憶のシステム)には限界があり、例えば電話番号が数桁ごとに区切られて書かれたり伝えられたりするのもそのためです。したがって、フォニックスを教える際にはまず子供たちに馴染みのある音や英会話でよく使われる言葉の音から始めると子供たちも学びやすいでしょう。そうすればフォニックスのレッスン内容を他の要素と組み合わせやすくなります。

フォニックスのルールに従って単語とストーリーを読み進めていくことができるリーダーシリーズ「Floppy’s Phonics」(オックスフォード大学出版局刊)では、まず英語で最もよく使われる文字とその音、すなわち’s’、’a’、’t’、’p’、’i’、’n’(’p’は例外的にここに含まれています)を導入します。英語での文字や音の使用頻度についてより詳しくお知りになりたい方は、Edward Fry氏が2004年に発表した研究論文*をお読みください。フォニックスの指導については、母音から教え始めるのが効果的という説もあります。明確な理由を持ってどのフォニックス指導のシステムを取り入れるかを決めて実行すれば、保護者や子供たちにもきちんと説明することができますし、先生がなぜそれを授業で教えるのかを理解してもらえます。特定のフォニックス指導のシステム、あるいはそのシステムを基に作られた教材(例えばFloppy’s Phonics)を使えば大幅な時間と労力の節約に繋がります。
第一に、授業におけるご自身の「基本の動き・取り組み」を確立させることが重要です。
ここでは5つの例を紹介しますが、それぞれの詳細については私の研究論文*(JALTのTeaching Young Learners分科会が刊行するジャーナル誌『The School House』に2018年に寄稿したもの)にてお読みいただくことができます。
*参考文献一覧をご参照のこと。

  • ルーティーン(例:ウォーミングアップから始める)を決め、各クラスで基本の流れに沿って授業を進めましょう。子供たちが使う体力・エネルギーのレベルを変えるのが良いですが、まずエネルギー消費の高いアクティビティを行ってからエネルギーレベルの低いアクティビティに移行するのが良いでしょう。(例:エネルギー消費の高いもの―教室内を動き回る、エネルギー消費の低いもの―座って色塗りやライティング活動をする)基本的には、粗大運動(全身や大きな筋肉を動かす運動)を使ったアクティビティから徐々に微細運動(手や指を使った細かい作業を伴う運動)に移っていくということです。
  • 子供たちの気が散ってしまう要因となるようなものを排除しておく。
  • 授業の流れを一定に保つ。
  • 子供たちの自律を促す。(集中できるよう手助けする)
  • じっとしていられない子供がいる場合には、席に着かせる時間を決めるか早めに切り上げる。

3~4歳児へのフォニックス指導

3~4歳児に指導する場合には、ペースを落としてアクティビティも比較的穏やかなものを取り入れましょう。この年齢グループには、子供たち同士で協力して取り組むようなアクティビティがうまくいきます。私は「find and touch」というアクティビティをやっていました。その日指導する文字が書かれたカードを部屋のあちこちに置き、先生がそのうちの一つの文字の音を言います。その時、子供たちが思い出しやすいようにその音を使った単語(例えばそのカードに書いてある絵の単語)も言うようにしていました。子供たちは先生の言った音を聞いて該当するカードを探し、見つけたらカードにタッチします。コロナ禍においては授業でもソーシャル・ディスタンスを保たなければなりませんので、子供たちにはカードにタッチさせるのではなく指をさして対応させるとよいでしょう。また、私がクラスを受け持っていた時には体力が有り余っている元気な生徒もいましたので、そういう時は皆で輪になって手を繋ぎ、子供たち全員がカードを探しに行く準備ができてから行動させるようにしていました。しかし当然ながらこれも今は行わない方がよいでしょう。その代わりに、例えば子供たちには立った状態で椅子やマットに手をつかせ、その状態のまま先生が言った音と単語を聞いて部屋を見まわし、全員がカードを見つけたら実際にカードの置いてある場所まで行って指ささせるという方法があります。この方法だと考えたり探したりするのに時間がかかる子や素早く動けない子も参加しやすくなります。指さしについては、早く行うことではなく子供たち皆の意見が一致しているかという点が重要です。

どのアクティビティにおいても、自信を持って楽しんでいる子もいればそうでない子もいます。例えば4週間を1サイクルとして年間40コマの授業を行う場合、サイクルの1週目にかるた形式のゲームをやると子供たちは年間10回そのアクティビティをやることになります。そこで各クラスや子供の状況によって先に挙げた例のようにゲームに変化を持たせていくと、最初のかるたに楽しく取り組めなかった子も積極的に参加できるようになるかもしれません。

年長さんへのフォニックス指導

この年齢の子供たちへの指導では準備・セッティングが重要となります。例えば、幼稚園の大きな教室で大人数の子供たちを相手に月1回教える場合、子供たちが集中しにくいだけでなく、当然小さな教室で6人の子供を相手に行う週1回の授業よりもペースが遅くなります。したがって、その環境や状況に応じて臨機応変に対応することが求められます。

例えば週1回50分の少人数クラス(10名以下)に英語を初めて学ぶ5~6歳の子供たちがいる場合、50分の授業のうち10~15分をフォニックスの指導にあてましょう。「Slam」というアクティビティ(かるたと同じ)は、この年齢グループにぴったりのゲームです。子供たちがよく知っているアクティビティですし、日本語でも何度も遊んだことがあるはずです。子供たちが大好きなゲームなので大抵はスピーディに行えますし簡単にアレンジを加えることもできます。カードを増やして子供たちがタッチして獲得できる枚数を増やしてもよいですし、1セット以上のカードを一度に使ってもよいと思います。子供たちが興奮しすぎてしまったら、子供たち自身が感情を抑えてコントロールできるよう促しましょう。例えば、手を頭の上に乗せて5秒数えてからカードにタッチさせると子供たちの動きも落ち着きを取り戻すでしょう。子供たちがきちんと集中できるようになるまで、手や頭を他の体の部位に変えながら同じことを繰り返してみましょう。勿論ですが、「Slam」で使うカードは単語カードやサイトワードのカード、間違いやすい単語のカードのほか、発音記号や文字のカードに置き換えることができます。
ちなみに、フォニックスのルールに当てはまらないような間違いやすい単語、あるいはサイトワードの指導については、ワークショップ内でご紹介したアクティビティをそのまま取り入れていただいても結構ですし、文字カードをサイトワードのカードや使用頻度の高い単語カードに置き換えてもよいでしょう。(このアクティビティは、Floppy’s Phonicsの教師用指導書P.22に記載されています)または、ワークショップ内でデモンストレーションしたリーディングアクティビティを通して教えてもよいと思います。
’s’、’a’、’t’、’p’、’i’、’n’に加えて’e’、’o’、’u’もできそうであれば導入し、定着したら文字のブレンディングの指導を始めます。私は子供たちが個々の音すべてを覚えていない段階で音を「合成させる」方法を教え始めます。先に挙げた音だけでも、組み合わせの形は’sat’といったC-V-C(子音 - 母音 - 子音)、C-C-V-C(’stop’など)、C-V-C-C(’pant’など)、そしてC-C-V-C-C(’spent’など)があります。

参考文献一覧

・Cowan, N., Morey, C. C., AuBuchon, A. M., Zwilling, C. E., & Gilchrist, A. L. (2010). Seven‐year‐olds allocate attention like adults unless working memory is overloaded. Developmental science, 13(1), 120-133.

・Doman, G., Doman, J., & Aisen, S. (1975). How to teach your baby to read. Gentle Revolution Press.

・Fry, E. (2004). Phonics: A large phoneme-grapheme frequency count revised. Journal of Literacy Research, 36(1), 85-98.

http://www.getreadingright.com.au/synthetic-phonics-teaching-sequence-letters-and-sounds/

・Sato, K.J.M. (2018) Factors to Consider in Creating Optimum Learning Environments (OLE) for the Young Learner’s EFL Classroom. The School House, 26(1) 19-25

授業において学習者の行為主体性を高めるための方法

寄稿者: Oxford University Press Japan (2021/3/1)  

完璧なレッスンプランを立てて授業に臨んだはずなのに、学習者はあくびをしたり上の空だったり・・・といった経験はありませんか?学習者の中には、自分自身で何か決断を下したり学習目標を立てたり授業でやりたいことを提案したりすることで、意欲的に学習に取り組むことができ成果が表れるという人もいます。学習の進め方を決めるために学習者自身にも協力させたり当事者意識を持たせたりすることで、Learner agency(学習者の行為主体性)を育てることができます。この記事では、授業において学習者に行為主体性を持たせるための実践的なアイデアをご紹介します。

一緒にレッスンプランを立てる(幼児・児童、中高生、大学生~社会人向け)

教師の中には、学習者がその日何をするかが分かるように授業を始める際にレッスンプランを黒板(ホワイトボード)に書く方も多くおられます。その際「どのアクティビティがやりたいか」、「ワークブックはアクティビティの前と後どちらに取り入れたいか」(幼児・児童の場合は歌を歌う前と後どちらにワークブックをやりたいか、等)、「ビデオを見たいかどうか」、「スピーキングアクティビティはペアと4人グループのどちらで行いたいか」等、簡単な選択肢を用意し、学習者に決めさせてみてはいかがでしょうか。自分の意見がレッスンプランや授業作りに反映されたり好きなアクティビティに取り組めるようになったりすることで、学習者の当事者意識も高まっていきます。

読みたいリーダー教材を選ばせる(幼児・児童、中高生、大学生~社会人向け)

学習者のレベルに合わせてフィクション・ノンフィクションを含む幅広い内容のリーダー教材を用意しておくことで、学習者の意欲を高めモチベーションを上げることができます。「内容が面白そうだから」、「表紙の絵が好きだから」、「面白そうな題名でもっと内容を知りたいから」、「知っているキャラクターが表紙に載っているから」、「クラスメイトから薦められたから」等、好きな理由で自由にリーダーを選ばせましょう。上級生の場合には、各々にその月の読書目標を立てさせると良いでしょう。リーディングへの意欲が高まって積極的にリーディングに取り組めるようになると、語彙を記憶しやすい、流暢性が高まる、学ぶことが好きになる、といった多読の良さを楽しむことができるようになります。

歌やチャンツをインタラクティブに活用する(幼児・児童向け)

ウォームアップや時間が余った時に同じ歌を定期的に取り入れていますか?子供たちに馴染み深い歌が何曲かあるのであれば、その中から歌いたい曲を選ばせてみてはいかがでしょうか。また、ただ歌わせたりジェスチャーを真似させたりするのではなく、子供たちにオリジナルのジェスチャーを考えさせるのも自主性を育てるのに役立ちます。そして、子供たちにとっては歌うスピードを選ぶのも楽しい要素です。

一緒にゲームのルールを考える(幼児・児童向け)

ゲームはとても楽しいものですが、ゲームを行うことに意味を持たせるためにはルールが必要です。例えば、子供たちに柔らかいものを投げさせカゴの中に入れさせるとします。その際、カゴを置く場所はどのくらい子供たちから離せばよいでしょうか。前を向いて投げるのか、後ろを向いて投げるのか、あるいは足を使って投げてみるのはどうでしょうか。何ポイント取ったら勝ちにすれば良いでしょうか。こういった点について子供たち自身にルールを決めさせることで、子供たちもより意欲的に楽しんでゲームに取り組むことができるでしょう。

取り組みたいクラフトアクティビティを選ばせる(幼児・児童向け)

工作等のアクティビティは授業の流れやテンポを変える良いタイミングです。しかし、生徒全員がまったく同じものを作って同じような見た目に仕上がったとすると、生徒も十分な達成感が得られないかもしれません。そこで、生徒が作れそうなものをいくつか見せ、各々に作りたいものを選ばせてみましょう。例えば画用紙を使って虫を作る場合、カブトムシを作りたい子もいればテントウムシを作りたい子もいるでしょうし、クモを作りたいという子もいるかもしれません。生徒自身が作りたいと思ったものを作らせることで、生徒も自分が作ったものに自信を持てるようになるでしょう。

テクノロジーを活用する(中高生、大学生~社会人向け)

従来授業内では教師主導でCDやDVDプレーヤーを使ってこられたと思います。しかし、自由に音声やビデオを止めたり再生して聞き直したりできないと、学習者もイライラしてしまうことがあるかもしれません。弊社の教材の多くも現在ではeブック形式でお使いいただけますので、授業内で学習者が各自パソコンやタブレット端末を使うことができるのであれば自主的にリスニングアクティビティ等を進めさせることができます。学習者が自由にオーディオ機能を活用して問題を解いたりすることでリスニング力に自信がつくでしょう。

一緒に年間学習目標を設定する(中高生、大学生~社会人向け)

ほとんどの教師が新学期を始める際に学習目標を設定していると思います。例えば、今年度は学習者に何語読ませたいか、新出単語を何語学ばせたいか、一人当たり何回プレゼンテーションを行わせるか、授業以外で学習者に英語を使わせるためにはどのような機会・場面があるか、英語でどのような情報をリサーチさせられるか、どのようなライティングの課題が適切かなど。こういった点について学習者と一緒に目標を立ててみてはいかがでしょうか。自分が設定した目標に向けて学習を進めることができれば、学習者も学習意欲を持って取り組むことができます。また、同様の項目について前年度どこまで達成できたのか記録があると、新年度には更に上を目指そうという姿勢で学習に取り組むことができるでしょう。

幼児への指導において柔軟に対応するための5つのコツ

寄稿者: ロブ・ピーコック (Oxford University Press Japan) 2021/2/3  

3~6歳の子供たちを指導するのは困難が伴うものですが、同時にやりがいのある経験でもあります。英語のレッスンは子供たちに英語やコミュニケーション力を指導する場であるだけでなく、身体の発達や社会性・情動の向上を促す良い機会にもなります。ですから、子供たちが色々なことに挑戦・参加したり、安全で学びに対して前向きな姿勢で取り組んだりできるような環境であることが大切です。この記事では、オンラインレッスンやソーシャルディスタンスを保って行う対面式レッスンにも役立てることのできる、子供たちがレッスンを最大限に楽しむためのコツを5つご紹介します。

1.文脈の中で英語を教える

レッスンで毎回同じキャラクターを登場させると英語を指導するうえで文脈を設定しやすくなります。例えば、食べ物・飲み物(牛乳、りんご、にんじん、クッキー等)の単語を復習する場合、ただドリルで繰り返し練習するのではなく、いつも登場するキャラクターがピクニックに行くという設定で一つ一つキャラクターに食べさせたり飲ませたりするところを子供たちに見せながら一緒に単語を確認していきます。子供たちが自ら「Here you are.」や「Thank you.」といったフレーズを言いながらキャラクターに食べ物・飲み物をあげるフリをするのも楽しいかもしれません。こうしたミニロールプレイのアクティビティは、子供たちに言葉の意味を捉えさせるのに役立ちますし参加もしやすいでしょう。もう少し難しいことにチャレンジさせたい場合には「ピクニックには他にどんな食べ物や飲み物を持って行けるか」といったことを質問し、子供たちに創造力をはたらかせながら考えさせてみましょう。

2.筋肉(大筋群・小筋群)の発達を促す

学習にジェスチャーを取り入れると学習内容がより定着しやすいと言われていますが、ジェスチャーは右脳・左脳の両方を活性化することに加え体内の大きな筋肉を鍛えることにも役立ちます。単語の学習だけでも様々なジェスチャーを取り入れることができますが、少し難易度を上げて子供たちにオリジナルのジェスチャーを考えさせてみるのも良いでしょう。オンラインのレッスンであれば、子供たちにウェブカメラの前でオリジナルのジェスチャーをさせ先生がそれを褒めてあげることで、レッスンへの積極的な参加を促すことができます。また、色塗りや線なぞり、基礎的なライティングの練習などはすべて手や指にある小さな筋肉を発達させるのに有効です。

3.好奇心や創造力を養う

先生の後についてリピート練習をするだけでは子供たちはすぐに飽きてしまいます。彼らを常にレッスンに参加させるために、先生が次に何を見せるかを当てさせてみましょう。例えば、4枚1セットになったカード(赤、青、緑、黄色の色のセットなど)を一枚ずつ見せて導入し、もう一度同じ順番でカードを見せます。3枚目のカードを見せたところで止め、次のカードが何かを考えさせます。また絵を描かせるのも、子供たちが自分を表現したり小筋群を発達させたりすることに繋がりますのでおすすめです。「How are you today?」とただ問いかけるのではなく、彼らのその時の様子や感じていることを絵に描かせ、クラスメイトに見せるよう指示しましょう。オンラインのレッスンの場合には、描いた絵をカメラの前に掲げさせると良いでしょう。子供たちをオンラインのレッスンに引き込む別の効果的なテクニックとしては、先生の画面背景を面白い画像に設定し、背景の画像内に写っているものに名前を付けさせる、というのがあります。難易度を上げたい場合には、似ている画像を2つ用意し、レッスン中に背景を切り替えて子供たちに間違い探しをさせてみましょう。

4.社会性・情動を向上させるようなお話を活用する

幼児期の子供たちは人格、社会性、情動においてまだ発展途上の段階です。社会性や情動(例えばお友達を助ける、良い言葉をかける、おもちゃを分け合ったり順番に使ったりする、など)を伸ばす活動を行うことで、彼らが幼稚園や保育園で身に付ける一般教養にも反映されますし、学習過程が有意義なものとなります。お話(動画や絵本、フラッシュカードやパペットを使って取り入れられるもの)は子供たちが先述のような行動・態度を身に付けるのに大変有効です。可能であれば毎回「登場人物は次にどういった行動をすべきか」といった質問をしながらインタラクティブに話を進めていくと、子供たちもお話の内容を考えながら積極的に参加してくれます。彼らが良い社会的行動を身に付ける最も良い方法は、それらを他の人にも教えてあげることです。

5.芸術的素質を活かせるようなプロジェクトを取り入れる

例えば色の学習をしているのであれば、虹の色塗りをさせてみましょう。学習している単語が家族に関するものであれば、子供たちに自分の家族の絵を描かせてみましょう。食べ物・飲み物の単語の学習であれば、紙皿を配ってその上に自分のお昼ご飯の絵を描かせるのも良いでしょう。簡単なプロジェクトは子供たち一人ひとりが自分のことに置き換えて取り組むことができるだけでなく、手や指の筋肉の発達にも繋がる有効な機会となりますし、特にshow and tell(あるものを見せ、それについて話す活動)はコミュニケーション能力の向上にも役立ちます。

指導のコツについてより詳しい情報をお探しですか?
上記でご紹介した指導のコツについてより詳しくお聞きになりたい方は、3月7日(日)にオンラインで開催されるオックスフォード児童英語教師向けワークショップシリーズにぜひご参加ください。皆様のご参加をお待ちしております。

学習者のウェルビーイングのためのSTARアプローチとは

寄稿者: Oxford University Press Japan 2021/2/3  

この記事では、昨年10月に開催されたオンラインカンファレンスELT Together 2020でのSarah Mercer氏のウェルビーイングについてのプレゼンテーション「The ‘STAR’ approach to student wellbeing」の概要をご紹介します。

学習者のウェルビーイング(健全性)を向上させることは、学習過程において良い成果をもたらすことは勿論、彼らの将来がより良いものへと変化することにもつながります。学習者のウェルビーイングとの結びつきを意識しているか否かはともかく、ほとんどの先生方がモチベーションや授業への積極性、感情、考え方、グループ活動における学習者の行動や目標設定など、ありとあらゆることに注意を払っていらっしゃることでしょう。世界的なウイルスの感染拡大によって、学習者のメンタルヘルスはより重要視されてきています。青少年のメンタルヘルスを支援する慈善団体YoungMindsが2020年6月から7月にかけて行ったアンケート調査によると、回答者の80%がコロナウイルスによって精神状態が悪化したと回答したほか、87%がロックダウン(都市封鎖)期間に孤独または孤立していると感じたと回答しました。一方、若者がもっと心の健康について学ぶための教育を受けたいと思っていることも事実で、それは良い兆候でありウェルビーイングを高めるための実践法が広まっていく可能性があることも意味しています。今回ご紹介するSTARアプローチとは「Self(自己)」「Together(共にあること)」「Agency(主体性)」「Regulation(調整)」の4つに注目したメソッドで、学習者のウェルビーイングを向上させたいとお考えの先生方にお役立ていただけるものです。ここでは、その4つの項目について概要をご説明いたします。

Self(自己)

己の強みと成長の可能性に焦点を当てる

「自分はできる」という感覚
学習者は特に言語学習において進歩がゆっくりだと感じることが多く、自身の英語力が伸びていること自体に気づかないこともあるようです。達成しやすい段階を幾つも踏みながら上達していけるようなアクティビティを取り入れると、学習者の成長を可視化できますし学習者が成功体験を得られるようになります。オンライン授業では、学習者が学習の手順をきちんと理解し次の段階に進む前に自分がどこまで学習を終えているかを把握する必要がありますので、明瞭な指示・説明をすることがより大切です。
思考
凝り固まった思考を持った学習者は、才能のあるなしは生まれながらのものだと信じています。もし「人は成長し才能を伸ばすことができる」と考えている学習者がいるのであれば、それは成長型思考の持ち主です。言語は誰でも習得でき上達させられるものである、という信念があれば学習者のモチベーションも向上します。学習者の意見や彼らの考える英語学習者の理想像について聞くのも良いですし、凝り固まった考えに反対意見を投げかけたり、まだ取り組んでいないことについて目標や筋道を立てさせたり、成長型思考を活かして挫折を乗り越えた有名人・著名人(アルベルト・アインシュタインなど)の例を探させるのも有効です。
強みを活かす
教師は改善すべき点にばかり目が行ってしまい、うまくいっていることに対しては目を向けるのを忘れがちです。「Strengths-based」教授法は学習者が本来持つ長所・強みを活かしながら指導を行うもので、結果ではなくあくまで過程に焦点を当てた具体的・建設的で理解しやすいアドバイスを適切なタイミングと言葉で伝えることが重要と考えられています。まずはご自身の生徒さんに対してライティングの課題を出してみましょう。その際、提出後の課題については誤りを訂正したり添削したりせず先生が良いと思った好きな点のみ評価し良いコメントだけ返すことを伝えましょう。

Together(共にあること)

建設的な社会的関係を構築させる

心理的安全性
学習者は教室が心理的に安全な場所だと感じていますか?周りからからかわれたり恥をかいたりするかもしれない、と感じていませんか?学習者にとって言語を学ぶということは思い切りが必要なことでもありますので、教室では守られていると感じられることが大切ですしオンラインの授業であれば尚更です。教室での集団行動における個々の在り方を改善させる方法は様々なものがあり、アイスブレイクを取り入れる、個々についての情報交換(Show and Tellなど)を行う、ペア・グループ活動をする、学習仲間を作る、3R(rules:ルール、roles:役割、responsibilities:責任)を設定する、恒例行事(誕生日を祝う、毎回皆で同じことをやるなど)を作る、といったことが挙げられます。
教師と生徒間のラポール形成
学習者にとって教師とは、個々の学びをしっかりと把握し一人一人の成長を願う人物であるべきです。オンラインの授業においては、教師の自宅の様子がカメラに映ったりペットの鳴き声や家族の声が聞こえたりして、教師も一人の人間であり人生があるということが学習者に伝わることもあるでしょう。このように教師の生活の一部が露呈すると、教師の新たな一面を知ることができた学習者からは積極的に返答が返ってくることもあり、教師と生徒間の関係性を築くうえでは適切なことと言えます。また、飼っているペットの名前や応援しているスポーツチームのことなど学習者の個人的なことを教師が覚えていると、より絆が深まります。つまり、教師は「学習者の関心を引くのではなく自分が学習者に興味を持つ」(Kerpen, 2016, 25頁)べきです。教師が学習者に対して興味を示すことで心の結びつきが芽生え、学習者はクラスの一員であると感じられるのです。
思いやり
周りの人に対し思いやりのある行動をとることはウェルビーイングにも継続的に良い影響をもたらします。どうすれば良いクラスメイトになれるかを考えたりグループ内での人間関係においてや一般的に考えて思いやりのある好意的な態度ととれるものをメモに残したりしながら、どうすればお互いに優しくなれるかを学習者に考えさせてみましょう。

Agency(主体性)

自分をコントロールする力を身に付けさせる
主体性は重要な構成概念であり、自身の学びを感化するような感情や学ぶことと向き合いたいと願う気持ちもそれに含まれます。学習者は自身のことを与えられたものを受け取るだけの者だと捉えがちですが、それは自身を無力にしてしまい健全性に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

選択と意見
学習者には何をすべきか、そしてどのようにそれをすべきかを自分で決めさせましょう。学習計画に時間の余裕があるようであれば、学習者に読みたい記事を探させたりやりたいアクティビティを決めさせたりするのも良いでしょう。一つの活動において、4人グループとペアとではどちらが良いかを聞くこともできます。先生方の中には、学習者自身が内容を選んで毎週10分間の時間を取って取り組み、年度末にそれを発表するような「10分間プロジェクト」を取り入れている方もいらっしゃいます。他にも、学習者の授業への参加を促しグループごとに民主主義的に物事を決めさせたりする方法は沢山あります。学習者の主体性を最大限に引き出すことは、学習者が自信を持ったりやる気を出したりすることにつながりますし、己の健全性が向上していることを感じることができるでしょう。

Regulation(調整)

社会性と情動を養う

感情の調整
イェール大学に所属する心理学者Mark Brackett氏は、以下のような感情の尺度モデルを示しています。
  • 自分や他人の感情を認識している
  • 感情の因果関係を理解している
  • 感情の種類を正確に分類している
  • 適切に感情を表現している
  • 感情を効率的に調整している

自分の感情に気づき何が引き金となってその感情が生まれたのか、どのようにそれらの感情に対処すれば良いか、といった「自己の気づき」ができるようなるために、教室では学習者に感情の記録を付けさせると良いでしょう。これは、学習者が良い対人関係を構築できるようになるための基礎的な要素となり、他人の感情を理解できるようにもなります。英語学習を通し、私たちは「相手に共感する」ということを自然に教えています。有効なコミュニケーションを図るためには、学習者は話している相手のことを知る必要があります。文学、芸術、映画などを活用するのは他人の視点で物事を捉える素晴らしい方法ですし、登場人物がなぜそのような行動を取ったか、といった点などについてクラス全体でディスカッションを行うこともできます。また、別の視点や角度から物事を見つめ直すことを学ぶのも有益です。例えば、あなたが朝バスに乗り遅れたとします。それによって怒りの感情が湧き出るかもしれませんが、乗り遅れたことを前向きに捉えるにはどうしたら良いでしょうか。「乗り遅れたことによって読書する時間ができた」と考えることもできますね。そして、ウェルビーイングを向上させるためのアクティビティはストレスの対処にも役立ちます。リラックスしたり学校以外で過ごす時間を持ったり趣味や好きなことに時間を費やしたりするのは人間にとって重要なことであり、それによって気持ちを切り替えて学校生活と適度な距離を保つことができるのです。

ポジティブなことに注目させる
学習者に、己の健全性に好影響を与えてくれた感謝するような出来事に注目させましょう。感謝の気持ちをまとめた日記を書かせても良いですし、一つずつ紙切れに書いてそれを瓶に入れて貯めさせていっても良いでしょう。書き溜めたメモは、後で瓶から取り出して読み直すこともできます。他に良い方法として「Gratitude scavenger hunt」というアクティビティがあります。人を笑顔にするような贈り物や自分が匂いを嗅ぐのが好きなものなどをリストに書かせていく活動です。こういったアクティビティによって学習者は生活におけるネガティブなことではなくポジティブなことだけに注目することができ、自分の感情のバランスをうまく保つことができるようになるのです。

最後に申し上げたいのは、教師と学習者の健全性は表裏一体ということです。学習者は教師がもっと指導することを楽しんでくれたら幸せだと感じるでしょうし、教師が力の限りを尽くして指導し学習者に成果をもたらすことができれば教師自身もそれを幸福だと感じるでしょう。教師のウェルビーイングに注意を払うということは学習者のウェルビーイングに注意を払うことでもあり、その逆もまた然りなのです。

ウェルビーイングについては、Sarah Mercer氏によるプレゼンテーションでも詳しくご紹介しています。ウェビナーのアーカイブ動画をぜひご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=AxAALvSSP3o

探求型学習:生徒主体の授業作り

寄稿者: ロブ・ピーコック (Oxford University Press Japan) 2020/12/8  

私が日本の10代の子供たちを指導していた頃、子供たちのやる気を維持させるのが難しく感じることがよくありました。子供たちは他の授業でも言葉のやりとりだけで進める授業を受けていたため、ただ受け身になってじっと座っていることに疲れを感じたり、活動を進めるにも先生の指示を待ったりしていました。もっと彼らが自分のペースで学びを進めたり、英語を使って意味のあるやり取りをしたり、自発性を伸ばしながら自律学習ができるような機会が必要だったと思います。もし私が授業で取り上げる題材に対して生徒の好奇心を引き出したり、その題材についてクラスメイトと一緒にディスカッションしたり調査したりするような授業を行えていたら、より良い指導ができていたと思います。当時は気づいていませんでしたが、今思えば私は探求型学習を目指していました。

探求型学習(IBL: Inquiry-based learning)は生徒主体のアプローチを推進する教授法で、質問したり、実験したり、問題解決したりする活動を通して学びを進めていきます。ここでは、探求型学習を授業に取り入れるための簡単な6つのステップをご紹介します。

質問に注目させる

取り上げる題材について生徒に批判的思考を持って考えさせるためには、大きな質問とそれに関連した質問から始めるのが良いでしょう。例えば、大きな質問は「What is the value of time?」、それに関連した質問は「How much time do we waste?」、「How do we use our free time?」、「How much time to we spend studying?」などが挙げられます。こういった質問について話し合うことによって生徒も題材に興味を持ったり自分なりに考える時間を作ったりすることができますし、題材についてもっと知りたいという意欲を引き出すこともできるでしょう。

インターネットを使って調査させる

生徒がもっと学びたいという気持ちを持ったまま授業を終えることが望ましいと思います。そこで、生徒に好奇心を持たせるためにインターネットを使って調べることのできる題材を設けてみましょう。例えば「宿題にどのくらい時間をかけているか」という題材ついて授業中に話し合ったとします。その場合には「海外の生徒は宿題にどのくらい時間をかけているか」について自宅で調べてこさせると良いでしょう。

重要語句や役立つ方略を事前に伝える

探求型学習ではあまり言語に重きを置きすぎずに学びを進めますが、ディスカッションや調査を行うために必要とするものまで与えないのでは生徒に大変な思いをさせてしまいます。予め重要語句を導入しておくと生徒同士のコミュニケーションも円滑になりますし、「ざっと目を通して特定の情報を読み取る方法」など役立つ方略を教えておくと生徒も教科書から素早く効率的に情報を読み取れるようになります。

生活に必要なスキルを教える

授業は英語を学ぶ場所というだけではなく、生徒が学校の内外でうまく生活を営んでいくために役立つスキルを教える機会でもあります。例えばタイムマネジメントやグループ活動の行い方、自己認識の仕方やオンラインでの調査方法などが挙げられます。こういったスキルは探求型学習の成果を最大限に活かすために必要となりますし、10代の子供たちが個人の能力や人間関係を発展させるための手助けとなります。

プロジェクトを通して自己表現させる

ライティングの課題を完成させる、ポスターをデザインする、プレゼンテーションを行う、といった創造力を必要とするプロジェクト活動は、生徒がこれまで学んできたことや提示された題材に対する考えの集大成を発表する良い機会となります。またプロジェクトは、コミュニケーション力スキル・コラボレーションスキルの向上を図れるグループ活動を行う機会にもなりますし、創造力を伸ばすことにもつながります。

自身が行ってきた学習についてじっくり考えさせる

数回の授業にわたって、興味深い事実を色々知ることができ、かつ考えを絞ったり発展させたりできるような題材を取り上げるとします。生徒たちはその題材について事前にどんなことを知っていましたか?新たに知ったことは何でしょうか?最終的に彼らの考えに変化は表れましたか?生徒の意見や回答がどのように変化したかを見るためには、題材を紹介する時にした大きな質問とそれに関連した質問をもう一度投げかけてみるのが良いでしょう。生徒は新たに学習した語句や文法構造を記録するだけでなく、自分を取り巻く社会や生活の動きについて新たに知ったことや自分との関わりについても記録をつけておくと良いでしょう。

2020年12月20日(日)に開催される「 中学高等学校教員向けオンラインセミナー」では、中高生向けの新しいコースブックOxford Discover Futuresから実践的なアクティビティの例を取り上げ、探求型学習を行うためのコツをご紹介します。皆様のご参加をお待ちしております。

Stretchをおすすめする理由

寄稿者:ケビン・チャーチリー(秀明八千代高等学校)2020/12/4  
Stretch

最近オックスフォード大学出版局のStretchというテキストを私立高等学校の2年生の授業で使い始めました。このテキストのお陰で、私の指導だけでなく生徒たちの授業に対する熱意にも大きな影響が表れ、大変良い効果を得られるようになりました。英語力を総合的に鍛えられるよう構成されているこのテキストは、他の先生方や生徒さんたちにとっても大変役立つと確信していますので、ここでは私が使ってみて感じたことや経験したことなどをお話ししたいと思います。

視覚的なサポートが用意されています。各ユニットのVocabulary and Listeningページでは、はじめに主要語彙(通常8語、または8句)が分かりやすいイラストとともに紹介されていて、生徒がすぐに語彙の意味を理解できるよう工夫されています。

短くかつ要点が絞られたリスニング演習は、生徒が学習した言葉が文脈の中でどのように使われているのかを確認し理解するのに役立ちます。

実生活に即したダイアログを使ってコミュニケーションの練習を行い、より深い理解と内面化を図る機会を持てるようになっています。リスニングの音声は、わざとらしくない自然な会話文が様々なトーンの声ではっきりと聞こえるように録音されています。

コミュニケーションを通した文法演習が用意されています。英語の文法は、指導するうえで「ややこしくて無機質で難しい」という言語の側面を持ち合わせています。しかしこのテキストでは、英文法の構造を分かりやすく体系的に紹介し、生徒が楽しいアクティビティに取り組みながら練習できるようになっています。

生徒が興味を持てるよう配慮されたリーディング文は幅広いトピックに基づいていて、コース内の既習語彙を使って書かれています。

映像コンテンツは実際のニュース内容から厳選されたもので、各ユニットのViewingページに用意されています。映像を見た後にディスカッションを行ったり、探求型学習など生徒中心の指導アプローチにつなげたりするための手立てにもなります。

プレゼンテーションの練習パートが各ユニットの最後に設けられていて、生徒がうまくプレゼンテーションを行えるようになるための工夫が施されています。慣れている生徒にもそうでない生徒にも役立つようなアドバイスが掲載されていて、素晴らしいプレゼンテーションを行うためのしっかりとした土台作りに必要なコツが読めるようになっています。

私が受け持っている生徒たちはStretchを使った英語学習を本当に楽しんでいます。そして活発な授業作りのために人生の半分以上を捧げてきた私にとってこのテキストはお気に入りの一つとなりました。これまで何年もの間数々の市販のテキストを使って教えてきましたが、こんなに指導に自信が持てて、サポートや指導のアイデアが充実していて、刺激を与えてくれるテキストは他にありませんでした。Stretchは、本当に多くの情報や内容が盛り込まれていて、様々なレベルやタイプの生徒たちに確実に良い影響をもたらすような授業を実現することができます。このようなテキストが生まれたことは極めて大きな功績だと思います。

コミュニケーション力を伸ばすための動画の活用法

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/10/02)  

学習に動画を取り入れるのは理解を深めるうえでも多くのメリットがあります。まず動画は学習者の関心を引きますし、意味のある文脈に沿った学習をしたり授業に変化をもたらしたりするのにも役立ちます。さらに、学習者のコミュニケーション能力を高めるために活かすこともできます。この記事では、主に2種類の動画についてご紹介し、それぞれどのようにスピーキング学習に活用できるかを考えます。

1.コミュニケーションのお手本となる動画

ペアで会話練習を行う際に注意したいのは、文脈やジェスチャー・表情など言語以外の要素について何も考えないまま学習者が機械的に発話をしていないかということです。その点、動画を見せれば、役者の会話や動きから学習者もその会話の実際の場面を想像しやすいですし、発音や身振り手振りを真似ることもできます。
短い会話動画を視聴する前後に、以下のようなアクティビティを行ってみましょう。

中高生向けコースブックMetroサンプル動画

中高生~大学生向けコースブックSmart Choice第4版サンプル動画

動画を見る前に

ダイアログを適切な順序に並べる
クラスをいくつかのグループに分けます。印刷したダイアログのセリフを一文ごとに切ったものを各グループに配り、学習者はそこから一文をランダムに選びます。一人ずつ順番に自分の持っている文章を読み上げ、グループで相談して文章を正しい順序に並べてダイアログを完成させます。その後に動画を視聴し、並べた文章の順序が合っているかを確認します。

登場人物の会話を想像する
ダイアログの画像を見せ、登場人物の一人について動画内で明らかになりそうなことを学習者に予想させます。(例えばその登場人物の好きな音楽のタイプなど)ペアで相談させ、その後に動画を見せて予想が当たっているかを確認させます。

動画を見た後に

ダイアログを実際に演じてみる
学習者をペアに分け、動画で役者が行っていた表情やジェスチャーを真似させながらダイアログを読ませます。ペアの相手を変えながら何度か練習させてみましょう。

セリフを自身のことに置き換える
ダイアログのセリフ内の単語を学習者自身のことに合うよう変えさせ、違うペアの相手と練習させてみましょう。

2.ドキュメンタリー動画

野生の生き物、音楽、食べ物など学習者が興味を持ちそうなトピックを扱ったドキュメンタリー形式の短い動画は、世界に対する学習者の知見を広げるとともに、教科横断型学習や異文化学習にも役立ちます。こういった動画は通常教材のレベルに合わせた語彙を使ってナレーションを行っており、学習者がしっかり理解できるように作られています。
動画を視聴する前後、また動画を見ながら行えるアクティビティの例をご紹介します。

中高生向けコースブックMetroサンプル動画

中高生~大学生向けコースブックSmart Choice第4版サンプル動画

動画を見る前に

視聴前のディスカッション
グループやペアでいくつかの点について話し合わせます。例えば以下のような例が挙げられます。

  • トピックについて知っていることを思い出させる
  • 動画に出てくる事柄を予想させる
  • 動画から何を学びたいかを考えさせる

動画の視聴中

音声なしで見てみる
動画を消音で再生します。その後ペアになって動画で見たことを説明し合い、クラス内で発表させます。必要であれば重要な点についていくつか質問をし、学習者がそれらの点に注目できるよう促します。次に、音を出してもう一度動画を再生します。

音声のみ聴いてみる
画面を見せずに動画の音声だけを再生し、学習者にナレーションとその背後にある雑音だけを聴かせます。もう一度ペアになって聴こえたことを確認させるか、ある特定の情報だけに注目して聴くように促してみます。次に、画像と音声両方を再生して視聴させます。

動画を見た後に

視聴後のディスカッション
ペアや少人数のグループでいくつかの点について話し合わせます。例えば以下のような例が挙げられます。

  • 動画の内容について自分に置き換えて考えさせ、自らの経験について説明させる
  • 自国での生活と外国の文化について比較させる
  • 動画の内容に関連した問題について意見を述べさせる

プロジェクトワーク
動画の内容に関連したトピックについて、ポスターや動画を制作してみましょう。共通の目標を立てそれに向かって共同作業を進めさせますが、グループ内で密なコミュニケーションを図りコラボレーションスキルを高められるよう、まずはブレインストーミングする時間を与えましょう。

プレゼンテーションの練習
グループで制作したポスターの発表や動画の課題の一環として、ディスカッションの後にプレゼンテーションを行わせてみましょう。こういった活動は、原因(理由)・例・結論の提示といった論文構成のように論理的に考えをまとめるのに有効ですし、人前で発表することへの自信や一つのトピックについてある程度の長さの話をする力を養うのにも役立ちます。

指導のテクニック(Let’s Go第5版ティーチャーズ・ガイドより)第3回

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/9/02)  

3回にわたってお送りするこの記事シリーズでは、定評ある教授法に基づく児童英語コースブックLet’s Goの指導法や、指導の際に使えるテクニックをご紹介します。
指導のテクニック第1回の記事はこちら。
指導のテクニック第2回の記事はこちら。
より詳しい解説や役立つリソースはTeacher’s Resource Centerをご利用ください。
※Teacher’s Resource CenterへはLet’s Go第5版Teacher’s Packの裏表紙に記載されているコード・キーを使ってアクセスしてください。

Can-Doステートメントを活用した指導

Can-doステートメントを活用することによって、生徒の習熟度を継続的に評価していくことが可能です。Classroom Presentation Toolのスチューデントブックには、毎レッスンの終わりに生徒の理解度を確認できる楽しいアクティビティが用意されており、クラスの人数によってグループやペアで行うこともできます。生徒がアクティビティを問題なく行えたら、スチューデントブックの「I can do this lesson」ボックスにチェックを付けさせましょう。もし生徒にとってアクティビティを行うのが難しいようであれば、指導書に掲載されているドリル練習・ゲームやリソースをご参照いただき、復習をさせてみてください。Classroom Presentation Toolのワークブックには先生の指示に沿って進める練習問題も用意されています。
Let’s Begin 2およびLevel 1・2のLet’s Reviewのレッスンには、口頭で行うCan-Doアクティビティが用意されています。まずはクラス全体で行い、その後グループやペアに分かれて再度行うことで、生徒に既習の言葉を使う機会を与えます。生徒には質問と回答の両方を行わせるようにしましょう。生徒の習熟具合に注意し、これまで学習した言葉をうまく使って会話しているようであれば、頑張りを英語で褒めてあげましょう!

「I can do this lesson.」ボックス(Let’s Go第5版スチューデントブック)  

フォニックスとリーディングの指導法

英語を外国語として学ぶ場合は、リーディングの学習として文字と音を結びつける前に、まず口頭でことばの基礎を身につける必要があります。生徒はアルファベットの文字と音をさまざまに組み合わせることによって、単語の読み方を学習するのです。Let’s Go第5版では、子音(/b/、/p/など音の対比で覚える主な子音)、短母音、長母音、混成語、二重字、二重母音を導入します。
本書のフォニックス指導は、できる限りすでに知っている単語を使って、新しいフォニックスの音や綴りのパターンを導入しています。生徒はまずそれらの単語の中で音を聞き、発音はフォニックスチャンツで学習します。フォニックスの新しいパターンを学習したあとは、楽しいリーディングが読めるようになっています。本書に掲載されたリーディング用の文章は、そのレッスンで学習したフォニックスを使った単語や既習文型を用いた魅力的なストーリーです。生徒は音声を聞きながら読んだり、自力で読む練習をしたりします。ワークブックには更に追加のリーディングが掲載されていて、学習した単語、文法、トピックの定着を深めるために役立ちます。

ライティングの指導法

外国語のライティングで自信をつける一番の近道は、わかりやすい手本の模倣から始めることでしょう。手本を使えば、文法や綴りをはじめから自分で考える必要はなく、の書きたい内容に集中できます。Let’s LearnとLet’s Learn Moreのレッスンの文型を自分のことを書くときの手本にすれば、その文を自分のことばにすることができます。Level 1~6のLet’s Readのストーリーも、同じようなストーリーを創作する手本として使えます。
Level 3から上のレベルにはLet’s Read Aboutというレッスンがあり、このアクティビティでは毎回自分のことについて書きます。ライティングの応用アクティビティとして、グループで一つのストーリーを作るというのも効果的です。生徒がよく知っている文型や単語(必要に応じて追加してもよい)を使って、オリジナルのストーリーを作らせます。このとき、イラストやクラスのみんなが知っているエピソードを用いるとよいでしょう。生徒たちが作ったストーリーは一文ずつボードに書き出し、全員で間違いを直してもよいでしょう。生徒はそれを見ながら文を読み、ノートに書き写すこともできます。好みで挿絵を添えてもよいでしょう。このようなアクティビティなら、生徒は自分のレベルに合わせて読んだり書いたりすることができます。

教科教育と言語教育の統合的学習(CLIL: Content and Language Integrated Learning)

Let’s Goでは、他教科に関連のある内容で、一般的にもよく使われる単語や文法を学んでいきます。それは、子供たちと接する時間がより多く取れる先生方にとってはCLILとして容易に展開させることができるものです。たとえば色や形を学習するレッスンは、色や形を使って何かを作ったりどのように色を混ぜたりするかについて学習すれば、容易に美術の授業になります。Let’s ReadやLet’s Read Aboutのレッスンでも、英語の力を養いながら他教科に関係のある内容を学習できるものを扱っており、自然、理科、歴史、社会科と地理などが含まれています。また、教師用指導書のレッスンプランには、教科教育につなげて授業の幅を広げるためのアイデアが盛り込まれています。


Let’s Go第5版ティーチング・ガイドの完全版(英語のみ)およびLet’s Goに準拠した役立つリソース類はOxford Teachers’ Clubに掲載されています。
また、家庭学習・オンライン授業などにご活用いただける教師・保護者・学習者向けリソースはLearn at Home に用意されています。ぜひお役立てください。

埼玉大学におけるコロナ禍での授業運営についてLeander Hughes氏へのインタビュー

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/8/4)

多くの困難や課題を抱えながらスタートした2020年度。休校措置や非常事態宣言により、各大学は教育の質を維持しつつ講義をオンラインに切り替えることを余儀なくされました。本インタビューでは、埼玉大学英語教育開発センター准教授Leander Hughes氏に、同大学における前期の授業運営方法や実際の指導の様子、また「ニューノーマル」に向けた動きのなかで今後状況がどう展開していくかについて見解をお伺いしました。

今年度前期において、貴学では英語の授業をどういった形式で行っていましたか?

Zoomを使ったオンライン形式で、ほとんどの授業をリアルタイムで配信していました。

授業を行うにあたり、どのようなデジタル教材をお使いになりましたか?また、授業を円滑に進めるのに役立ったものはありますか?

私の授業では、eブックやオンラインプラクティス(演習・アクティビティや学習管理をオンラインで行えるウェブサイト)などデジタルサポート教材が充実しているQ: Skills for Success(オックスフォード大学出版局刊)を使っています。eブック版のテキストはもちろんですが、解答一覧のPDFファイルや音声・動画のスクリプトも本当に役立ちました。重要な箇所を画面共有したい時などは特に。オンラインプラクティスの演習やテストも不可欠です。

対面式授業からオンライン授業へはどのように移行しましたか?また、切り替えにあたりどのような疑問や問題が多く浮上しましたか?

オンラインへの切り替えは思っていたよりスムーズにいきましたが、以下のような疑問・問題が多く挙がりました。

  • 授業(Zoomミーティング)の出席に必要な情報を部外者に知られずにその授業に登録されている学生のみに知らせるにはどうすればよいか
  • どうやって出席を取るか
  • 人数の多いクラスの出席状況をどのように管理・統制するか
  • 試験をオンラインで安全に施行するにはどうすればよいか
  • Qのオンラインプラクティスとは別に自宅学習用の課題を出す効率的な方法は何か
  • 単位は取得したいけれどリアルタイムでオンライン授業を受講できない(あるいは受講しない)学生にはどのような措置を取ればよいか

貴学の学生にとって最も困難だったことは何ですか?

恐らく、普段の対面式授業ではなくZoomというツールを使ってペアやグループワークなどでコミュニケーションを取ることに慣れるのが大変だったのでは、と思います。

オンライン授業や遠隔指導で学ぶことは学生にとって何らかのメリットがあると思いますか?

特に私が受け持つ小規模のクラスでは、学生が取り組んだ課題などのレベルや質が全体的に向上してきていることに気づきました。自宅待機要請によって、自粛期間中に課題に取り組む時間を十分に取ることができたのが大きな理由ではないでしょうか。出席率も高いのですが、それはオンラインの方が授業に参加しやすいからだと思います。その他のメリットとしては、ある意味、パソコン自体や画面共有機能を使って学生と教員が教材などのやり取りを簡単に行えるようになったという点です。受講生の多い大規模のクラスで対面式授業を行う場合、全員に何かを見せたければ教室にパソコンを持っていってプロジェクターに接続するか、あるいは配布資料を全員分印刷しなければなりません。同様に、学生側もパソコンを持ってくるか発表したいものを印刷しないといけないのです。その点、遠隔授業であればすでにパソコンを使っていますので、ボタンをクリックするだけで画面に表示させているものを即座に共有することができます。私はウェブプログラミングに特化した専門英語のクラスも受け持っているのですが、実際Zoomでの授業だと簡単に画面を共有できるので昔ながらの対面式授業より教えやすいと感じています。

今年度の後期の授業はどのように継続していく予定ですか?対面式とオンラインの両立になる可能性はありますか?

すぐには新型コロナウイルスの感染も収束しないでしょうから、学生や学部、大学職員の安全を守るために必要なのであればオンライン授業を継続していきますし、そのための準備もできています。学生や職員が安全に教室に戻ってこられる日が来ればそれはとても嬉しいことですが。

今後オンライン授業に切り替えなければならない、という先生方に向けてアドバイスをお願いいたします。

  • 教員がオンライン授業に切り替えるにあたって必要な情報を掲載したQ&Aページを用意し、頻繁に情報を更新することです。ページにはセットアップや授業を行うのに必要な手順をすべて記載し、想定される様々なトラブルへの対処法も載せるとよいでしょう。
  • 教員同士がコミュニケーションを図るための場所(チャットなどのチャンネル)を用意し、質問や問題、またそれらに対する回答をお互いに書き込めるようにしましょう。そこでのやり取りを基にQ&Aページの情報を更新することもできます。
  • オンライン授業をセットアップする際にハードルとなるテクニカルな手順や問題については、教員のために重要なポイントを押さえたチュートリアル動画を制作するとよいでしょう。私もチュートリアル動画を作りましたが、動画では例えば学生がQオンラインプラクティスに登録したりeブック版テキストにアクセスしたりする方法などを紹介しています。最も効率がよいのは、まず学部の担当教員が受け持つ授業のセットアップを行い、他の教員にもまったく同じようにやってもらいます。セットアップの段階で浮上した問題はメモを取り、それらを解決するためのチュートリアル動画も準備します。他の教員に提供する情報は必要最低限に留めて簡潔に伝えた方がうまくいきます。すべての授業のセットアップが完了し各教員がある程度それらの手順などについて把握できているようであれば、次に実際に授業で使用するツールのその他の操作方法や機能を確認していきます。
  • 柔軟に対処しましょう。インターネット接続環境が悪い、パソコンに不具合がある、などの理由により学生が授業に出席できないと言ってきた場合に備え、授業を欠席しても単位が取得できるよう課題を準備しておきましょう。また、授業中先生自身のパソコンに予期せぬトラブルが発生した時に備え、受講生全員と確実に連絡が取れる手段を確保し対応方法を指示できるようにしておくとよいでしょう。
  • その授業自体について学生と意見交換をしましょう。機会があれば、学生一人一人にオンライン授業に対する感じ方や意見などを聞いてみるとよいでしょう。授業についてのフィードバックを一対一で収集するための機会を作るよい方法としては、授業の最後に質疑応答の時間を設け質問がない学生には退出させる方法が挙げられます。誰か質問のある学生に対して教員が回答したら、残っている他の学生にも授業に対する意見を聞いてみます。そういった一対一のやり取りやEメールでの学生とのやり取り、チャット機能を使ったクラス全体で投票などを行うなかで、私はいくつか興味深いことを発見しました。例えば、私の受け持つ学生はブレイクアウトルーム機能を使って会話練習をする際は、3人グループの方があまり緊張せずに取り組めるのでペアワークよりいい、と感じています。一方、宿題を確認する際は4人の方がよいようです。グループのメンバーが取り上げた質問に対して答えを導き出せる可能性が高まるからです。しかし面白いことに、教室に戻った際にはそのどちらの活動もペアワークで行いたいと言っているんですよ。

指導のテクニック(Let’s Go第5版ティーチャーズ・ガイドより)第2回

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/7/29)  

3回にわたってお送りするこの記事シリーズでは、定評ある教授法に基づく児童英語コースブックLet’s Goの指導法や、指導の際に使えるテクニックをご紹介します。より詳しい解説や役立つリソースはTeacher’s Resource Centerをご利用ください。
※Teacher’s Resource CenterへはLet’s Go第5版Teacher’s Packの裏表紙に記載されているコード・キーを使ってアクセスしてください。

短縮形の指導法

会話に出てくるisn’tやI’mといった短縮形の使い方を学ぶと、よりなめらかに英語を話せるようになりますし、自然な英語の発音もよりよく聞き取れるようになります。また、リーディングやライティングの学習を始めるときにも役に立ちます。Let’s Goでは、短縮形は最初に登場したとき一つ一つていねいに指導しますが、そのあとは必要に応じて復習する必要があります。短縮形のカード(Teacher’s Resource Centerよりダウンロード可能)を使って、短縮した表現とそうでない表現は同じ意味であることを説明しましょう。また必要に応じてこのカードを使って復習します。

Contraction Cards (Let’s Go 5th edition Teacher’s Resource Center)  

ペアワークとグループワークを使った指導法

練習するときには、生徒が気後れしないようにまずはクラス全体で行います。このとき、必ず自然なスピードとリズム、イントネーションを保つように気をつけます。これはのちにことばの流暢さを身につける際に役立ちます。次にクラスを2つに分けます。一つのグループが質問し、一方のグループがそれに答えます。このときたとえ練習であっても、質問したり答えたりする必要性を生徒に与えます。たとえば、What do you like?という疑問文を練習する場合、答えとなる絵が描かれてある教師用カードは答える側のグループにだけ見せます。そうすれば、質問する側のグループは答えが本当にわかりませんから、質問することに現実的な動機が生まれます。
このあと、ペアや小さなグループに分かれてさらに練習を続けます。はじめに自分の声が目立たない大きなグループで、そして徐々に小さなグループへ移動することで自信を持って発音できるようになるのです。
生徒がペアや小さなグループで練習している間は、教室をまわって生徒がうまくできないところを確認しましょう。生徒がつまずいていた点は(うまくできない生徒に個別指導するよりも)最後にクラス全体に簡単に指導します。
Conversation Lines、Beanbag Circle、Back-to-Backなどのグループ分けを使ったアクティビティは、生徒がそれと気づかないうちにたくさんの練習の機会を与えることができます。これらをすばやく行い、アクティビティを次々と変えることによって、生徒の集中力を保つことができます。さらによい点は、このようにすると、先生よりも生徒がレッスン中に話す機会が大幅に増えることです。

歌やチャンツを使った指導法

ことばにリズムをつけると、とても効率よく楽にことばを学習し記憶できます。Let’s Goでは、学習したことばの自然なリズム、アクセント、イントネーションを、歌とチャンツによって覚えさせます。新しい歌を導入するときは、まずチャンツにして指導してください。生徒は手をたたいて規則的に4拍子のリズムを刻みます。先生もリズムに合わせて手をたたきながら歌の歌詞を一行ずつ読みます。生徒は先生のあとについて発音します。この要領で一行ずつ加えていき、最終的にすべての歌詞が言えるようになるまで続けます。そして最後に音楽をかけて歌を歌います。生徒には歌に合ったジェスチャーを加えたり、おもしろい替え歌を作ったりして自分なりに歌を楽しむように促します。歌詞の行や文が長くて生徒が苦戦しているときは、練習するフレーズの最後の単語から始めて、徐々に単語を前に足していき、フレーズを完成させる“逆方向積み上げ(backward build up)”のテクニックを使いましょう。
著者、作曲家、歌手として活躍するキャロリン・グレイアム氏は、先生方もオリジナルのフォニックスチャンツを作るように勧めています。ことばを何度も口ずさむことにより、生徒はそれぞれの文字が持つ音を覚えることができます。生徒が言いやすい単語の中からそれぞれのフォニックスの音を使った単語を選び、それらを使っておもしろい文やまじめな文を作って4行のチャンツにします。一つのチャンツとしてまとめる前にフレーズごとに声に出して言ってみましょう。最後に生徒全員でチャンツを言います。

動画を使った指導法

アニメーション動画は、新しい表現を文脈に沿って導入したり、発音やジェスチャーのお手本を示したりするのに役立ちます。Let’s Talkに準備されているアニメーション動画にはいきいきとしたLet’s Goのキャラクターたちが登場し、Listen and say.で学習した会話の続きを見ることができます。続きの会話には、新しい表現だけではなくこれまで学習したなじみのあることばも登場し、それらのことばはスクリプト内では青くハイライトされています。Let’s Beginシリーズ、およびLet’s Goレベル1~3に用意されている歌やチャンツのアニメーション動画では生徒にとって身近な主要語彙が使われているので、やる気にもつながり楽しみながら学習を進めることができます。
動画を使って指導を行う際には、まず一度再生して生徒に見せ、知っていることばがあるか注意させたり、登場人物の質問などに答えさせてみたりしましょう。次に、簡単なタスクを与えてもう一度生徒に動画を見せます。たとえば、これまでに学習した主要なことばが聞こえたら手を挙げる、などの簡単なものがよいでしょう。また、動画を途中で止めながら、生徒にリピートやジェスチャーをさせる機会を与えます。そのあと、できる生徒がいれば一人あるいは複数人に動画で見た会話のやり取りをさせてみます。最後に生徒をペアやグループに分け、続きの会話のやり取りを練習させます。このとき、動画の中で見たジェスチャーやアクションを適宜取り入れてみるよう指導しましょう。

Let’s Talk video (Let’s Go 5th edition Level 1 Unit 6)  

Let’s Go第5版ティーチング・ガイドの完全版(英語のみ)およびLet’s Goに準拠した役立つリソース類はOxford Teachers’ Clubに掲載されています。
また、家庭学習・オンライン授業などにご活用いただける教師・保護者・学習者向けリソースはLearn at Home に用意されています。ぜひお役立てください。

指導のテクニック(Let’s Go第5版ティーチャーズ・ガイドより)

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/6/24)  

3回にわたってお送りするこの記事シリーズでは、定評ある教授法に基づく児童英語コースブックLet’s Goの指導法や、指導の際に使えるテクニックをご紹介します。より詳しい解説や役立つリソースはTeacher’s Resource Centerをご利用ください。
※Teacher’s Resource CenterへはLet’s Go第5版Teacher’s Packの裏表紙に記載されているコード・キーを使ってアクセスしてください。

会話の指導法

会話の指導は、まず英語を使うこと自体に慣れてから、正確に話すように心がけることに目標を移します。Let’s Talkのレッスンでは、実用的な会話の中で日常生活に役立つ表現(あいさつ、紹介、依頼、援助など)を導入します。生徒はまず音声で会話全体を聞きます。このとき新しい語句は文脈の中で導入されます。次に、テキスト内のボックスで囲まれた重要な会話表現に注目します。そして、生徒は続きの会話表現を取り上げたアニメーション動画や歌、チャンツを通して、ことばのイントネーションやリズムを学習していきます。アニメーションや歌、チャンツは、子供にとって一番ことばを覚えやすい方法でもあります。(歌とチャンツの指導を通して文法をしっかり覚えさせる方法は「歌やチャンツを使った指導法」のセクションをご参照ください)最後にSay and actというセクションで、ここで学習した語句を使って自分自身について表現します。

語彙の指導法

新しい単語(キーワード)を導入するときは、実物または教師用カードを使います。生徒が見やすいように実物や教師用カードを高く掲げ、単語を言います。生徒たちはあとについて何度か発音します。このあとその単語をドリル練習します。このときできるだけいつも同じ表現を使って練習しましょう。
Let’s Goの指導書では数多くのドリルやアクティビティを紹介し、生徒たちの語彙力の強化と上達を図っています。言語を習得するときにはだれでも必ず受容語彙(receptive language)と発表語彙(productive language)という2種類のことばを覚えます。
受容語彙とは、学習者にとって意味はわかってもまだ発することができないことばを意味します。受容語彙の練習では、生徒はその単語の意味を知り、体を使ってその単語に反応する必要があります。たとえば、何枚かの教師用カードをボードに並べ、2人の生徒を前に呼びます。先生がカードの単語を一つ言い、2人の生徒は走っていってカードにタッチします。先にタッチした生徒の勝ちです。
発表語彙は生徒が話すことのできることばです。発表語彙の練習では、生徒はその単語の意味を理解したうえで発音できなればなりません。先に説明したゲームの場合、カードにタッチしながらその単語を発音させます。

文法の指導法

Let’s Goでは、生徒たちが最初から文の意味と会話の目的を理解できるように、文脈に文法を組み込んで教えていきます。生徒はまず、ユニットのテーマに沿った単語を学びます。次にそれらの単語を短い会話文の中で練習します。そのあと、アニメーション動画、ゲーム、アクティビティ、歌、チャンツなどを使ってさらに質問と答えの会話練習を重ねます。ここで生徒が理解すべきことは、単語や会話表現をお互いに組み合わせたり、他の表現と組み合わせたりして、新しい会話を作ることができるということです。ですから、ユニットの中でも何度も同じ単語や会話表現を扱うこと(リサイクル)が有効なのです。
文法の指導では、まずことばを正確に覚えて、そのあとそれを使いこなす練習をすることに目標を移します。語句は常に文脈の中で指導されますが、色々な会話表現を使えばもっと多くの様々な文脈の中で再利用することができます。授業時間を最も有効に使うためには、まず単語を教え、そのあと新しい会話表現を教えることが大切です。生徒はその会話表現に単語を当てはめながら、文の練習をしていきます。 このあとWh-の疑問文を教えるときには、生徒はすでにその答えを知っていることになります。(先に学習した会話表現が答えそのものになるからです)このような小さなステップの積み重ねによって、生徒は正確にたくさんのことばを身につけることができます。練習に進む前に生徒が新しいことばの意味をしっかり把握しているか、一つ一つのことばをきちんと発音できているか確認しておきましょう。先生が手本を示すときに正確に発音すれば、生徒は新しい語彙の意味を覚えるときに自然と発音も正確にしようと努力します。
Yes/Noで答える疑問文と答えを導入するときには、助動詞を入れて答えさせるようにしましょう。(例:Do you like cats? Yes, I do. / No, I don’t.)これは質問文と回答を一つのまとまりとして覚えられるだけでなく、これによって文法的な基礎が築かれ、英文を書くときにもスムーズに学習できるようになるのです。
また、Yesで答える文とNoで答える文は、最初は別々に指導しましょう。そうすれば意味を取り違えることもありません。そして最後にYesとNoの答えを混在させて練習します。(すばやくドリル練習をするコツ:Noの答えのときには、合図として教師用カードをさかさまにするというふうに決めておくとよいでしょう)

ことばのリサイクル

すべての文は基本の文を土台にして組み立てられています。たとえばHe likes cats.という文を基にして、What does he like?やDoes he like cats?などの文を作ることができます。Let’s Goの入門レベルではこれらの会話表現(平叙文、Wh-の疑問文、Yes/Noで答える疑問文)は一つずつていねいに指導しますが、レベルが進めば、平叙文とWh-の疑問文だけ、または平叙文なしで疑問文だけ指導する場合もあります。先生がレッスンで毎回説明しなくてもいつもと同じ方法でことばを組み立てればよいことを、子供たちに教えておきましょう。同じように、代名詞が変わると動詞の形も変わることや、名詞がどのようにして単数から複数に変わるかを学習したら、あとは特にレッスンで教えられなくても自分で形の変化を練習するように勧めましょう。


Let’s Go第5版ティーチング・ガイドの完全版(英語のみ)およびLet’s Goに準拠した役立つリソース類はOxford Teachers’ Clubに掲載されています。
また、家庭学習・オンライン授業などにご活用いただける教師・保護者・学習者向けリソースはLearn at Home に用意されています。ぜひお役立てください。

オンライン授業の可能性を考える

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/4/16)  

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う長期休校に直面している学校、塾、英会話教室の関係者の皆様の中には、インターネットを利用したオンライン授業を検討されている方もいらっしゃることでしょう。これまでオンライン授業を全く経験されたことがない場合、とてもハードルが高いように思われるかもしれません。しかし、実際は教師と学習者双方にインターネット接続環境とデバイス(PC、タブレット、スマートフォン、など)があれば、オンラインコミュニケーションツールを使い、比較的簡単に実際の授業に近い形の授業をオンラインで行うことができます。現在、オンライン授業を既に採り入れている大学や英会話教室もあれば、今後のために検討している中学校・高等学校もあるようです。

教科によってメリット、デメリットはありますが、特に英語の授業においてはオンラインで行うことによるメリットも多いと言われています。先日、東京都立両国高等学校・附属中学校の鈴木悟先生と、オンライン授業の可能性について意見交換した際に挙がった注目ポイントを以下のとおり紹介いたします。 ※両国高等学校・附属中学校ではオンライン授業はまだ開始していませんが、鈴木先生が生徒や他の先生と実際にオンラインコミュニケーションツールZoomを使い実験的にやり取りを行ってみたそうです。

オンラインで授業を行うメリット

(先生側)

  • 生徒一人一人の表情が実際の教室で授業を行うよりよく見える
  • 生徒同士の私語がなくなるので、緊張感のある授業ができ学習に集中できる
  • グループディスカッションやペアワークの機能を使えば、実際の授業で行うアクティビティのほとんどは同じように行える
  • 資料配布(ファイルの共有)や課題の受け取り(ファイルのアップロード)が簡単にできる

(生徒側)

  • はっきりと話すことが求められ、スピーキングのよい練習になる
  • 挙手の機能がある
  • 発言が難しい場合は、チャット機能を使って質問や意見を伝えることができる(発言は全員に向けて行うか、先生のみに向けて行うか選べる)
  • 他の生徒との私語ができないので集中して授業に取り組める
  • グループディカッションでは、生徒同士で主体的に取り組むことが求められるため、話し合いをリードしたり、まとめたりする力が身に付く

はじめてオンライン授業を行う際の注意点

  • 教師同士で練習セッションを行い、指導者が使用する各機能について慣れておく
  • 教師同士の練習では、生徒側の操作や見え方も体験しておくことで、実際の授業がスムーズになる
  • 生徒の自宅にWi-Fi環境があるかを確認する
  • 教師と生徒で実際の授業の前に少なくとも一回テストセッションを行い、各機能や音声の確認をする
  • 最初は可能な限り少ない人数(20人以下)で行うとやりやすい

1コマの授業をずっとオンライン上で教師中心に行うこともできますが、例えば課題を出して生徒自身にオフラインで取り組ませる時間を与え「何時何分」と時間を決めて再度オンライン授業に戻り、発表させたり解説したりするということもできます。授業を受ける生徒側の操作もとてもシンプルなので、パソコンを使用したことがある生徒なら事前に練習を1~2回行えば使い方にはすぐ慣れるでしょう。最初はスクリーン越しに先生やクラスメートと話すのは違和感があり緊張するかもしれませんが、回数を重ねるうちにそれほど違和感はなくなり、授業に集中することができるでしょう。教師も生徒も授業をやりながら徐々に操作に慣れていきますので、最初は必要最低限の機能だけを使ったり、1セッションの時間も20分にするなどにとどめ、慣れていくに従い色々な便利な機能を試してみたり、時間を延ばしていくことをおすすめします。鈴木先生もそうであったように教師、生徒共に初めての体験なので、お互い試行錯誤していく中で各クラスの特性に合った進め方を見つけていくことができます。このような授業では教師が生徒から教わることも多いのです。

このように、オンラインで授業を行うことは、各家庭でのパソコンやタブレットの準備、Wi-Fi環境を整えるなどの前提条件はありますが、それをクリアできれば初心者でも想像以上に容易に行うことができます。また、授業の質や学習効果も教室で行う授業と同じ程度を期待できますし、オンライン授業ならではのメリットもあります。­学校再開後に学習をスムーズに行うためにも、休校中の家庭学習は非常に大切です。オンラインで定期的にクラスメートや教師と顔を合わせる機会を設けることは、この困難な状況を皆で乗り越えていこうという励みにもなるでしょう。

効果的なオンライン授業に関する更に詳しい記事をご覧になりたい方はこちら(英語):

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う休校の間、オンラインツールを活用して子供たちの家庭学習をサポートするための方法やアイデアについて、キャスリーン・カンパ先生にお伺いしました

寄稿者: Kathleen Kampa (2020/4/15)  

1. まず、先生の学校の現状をお聞かせください。

私の学校(都内の某インターナショナルスクール)では、3月4日からオンラインを利用した家庭学習を開始しました。6月初旬の学年末まで継続の予定です。

私は自宅でも英会話教室を行っていますが、こちらの教室ではマスクの着用と徹底した手洗いを前提にほんの数週間前まで楽しく授業を行っていました。幼児クラスでは、マスクをして近くの公園に行ったりしていました。

2. 登校日の限定や休校にあたって、生徒たちの学習をどのようにサポートしていますか。

学校の各部で、生徒の年齢と個々のニーズに合わせた学校独自のプログラムを提供しています。

幼稚園では、教員がアクティビティをまとめてセットにし保護者に提供しました。これまでに使用経験があるブログサイトを活用するほか、今回初めてSeesawというオンラインプラットフォームも使い始めました。教員は保護者とSkypeやGoogle Meetを介して連絡を取り、生徒が授業に参加していることを確認しています。動画配信に際して教員は事前に3日間を準備に充てました。読み聞かせや歌の動画も一通り作成しYouTubeに上げました。

小学校では、生徒のニーズに合わせてSeesaw、Google Classroom、Loom、Screencastifyなどいくつかのシステムを使い分けています。担任教員はその日行ったアクティビティを記録するようにしています。また、専科の教員は各々の活動案をGoogle documentにコピーして共有しています。多くの教員がそれらを生徒向けに簡略化し、生徒が毎日確認できるようにしています。一部生徒との連絡手段にはZoomも利用しています

中学・高校では、大抵Zoomを使って普段通りの時間割に沿って授業を行っています。

自宅の英会話教室でも新しい試みを取り入れています。状況がここまで悪くなる前は、マスクを着けて公園で Magic Time を使ったレッスンをしたりしました。テキストの内容に関連付けた新しいアクティビティもたくさんやりました。現在は以前と比べて難しい状況になってきていますので、YouTube上の動画の中で過去に私が制作したものや学習に役立ちそうなものをピックアップしてシェアしています。

私の共著 Everybody Up のレベル6をテキストに採用しているクラスではZoomを使って授業をしていますが、今のところ順調です。授業に必要な準備は終えていますが、子供たちをオンライン授業に慣れさせるためのアクティビティや飽きさせずに授業に参加させるためのゲームは模索中です。イースターのうさぎなどを使ってユーモアの要素を取り入れるようにもしています。

3. テクノロジーを使った学習サポートやオンライン授業を始めるにあたり、どのような問題・課題がありましたか。

使用するシステムやプラットフォームによってできることや機能が異なるので、スムーズにいかないこともあります。日本人の保護者の中には、オンライン授業を始めるにあたって何をどうすればよいのか分からないという人もいました。Zoomへの登録方法、セットアップの仕方、オンライン環境で生徒同士にやり取りをさせる方法、生徒に挙手させる方法、皆で一斉に歌う方法、宿題をチェックしたりテキストの1ページを皆で見たりする方法など、疑問は尽きませんでした。

YouTubeの動画は様々な点で使い勝手が良いと言えます。動画の画質やライティング、音声のクオリティが高いとよい学習結果にも繋がります。

4. オンライン授業をやってみて分かったことは何ですか。

オンライン授業を通して、これまで気づかなかったことに気づかされました。使用するシステムやプラットフォームそれぞれに利点があることも分かりました。Seesawは短時間の授業を行ったり生徒の反応を確認したりするには絶好のツールで、生徒一人一人に文字や音声でフィードバックを送ることもできます。子供たちは各家庭で色々なものを見つけては学習に活かしています。また、私が授業のために準備した動画の中で見せているお手本を、多くの子供たちが真似ていることにも気づきました。例えば、小道具や衣装、セリフやフレーズなど、私が動画内でやっていることを子供たちもやってくれるのです。先生方も、授業の最後にどのような学習成果を期待するか、ということを考えておくとよいと思います。

5. 最後に、ご自身の経験を通して一番学んだことは何でしょうか。

いくつかあります。第一に、私たちは人間であるということ。授業は完璧に、とはいかないかもしれません。しかし、その時持っている力やリソースを駆使してベストを尽くすことはできます。第二に、あまり授業の行い方に制約を課さない方が良い授業ができるということです。各家庭にあるものを活かして課題に取り組ませたりすることもできますからね。そして最後に、生徒同士も自由にやりとりできる時間を与える必要があるということです。

忘れないでいただきたいのは、うまくいかない日もあれば驚くほどうまくいく日もあるということです。一つのテクノロジーを使ってうまくいかなくても、別の方法で英語を教えることができます。臨機応変に対応しましょう。創造力を働かせましょう。手際よく動きましょう。その時助けとなる魔法があるはずです。


児童英語教材 Magic TimeEverybody UpOxford Discoverの共著者であるキャスリーン・カンパ氏は、日本における英語指導者、また教師トレーナーとして、25年におよぶキャリアを有しています。子供たちの目をまわりの世界に向けさせ、様々な気づきを与えながら英語の流暢性を高めていく「探求型教授法」を提唱し、精力的に活動を続けています。

イベントレポート -- オックスフォード・リーディング・ツリー 多読ワークショップ

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/3/10)  

去る2月22日(土)、オックスフォード・リーディング・ツリー 多読ワークショップ 2020 名古屋 「日本の中学・高等学校でのオックスフォード・リーディング・ツリー活用法講座」を開催いたしました。本イベントは読み聞かせや多読用としてオックスフォード・リーディング・ツリー(ORT)をお使いの方、またはORTなどの絵本を使った多読授業にご興味のある中学・高等学校の先生方向けのワークショップです。ORTを用いた授業経験も豊富な西山哲郎先生(香里ヌヴェール学院小学校 学校長)、田中十督先生 (西南学院中学校・高等学校 教諭)、諸木宏子先生 (A & A ENGLISH HOUSE 代表)の3名による活気溢れるプレゼンテーションと、ご参加の40名近くの熱意ある先生方により盛況のうちに終了することができました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

子供たちのグローバルスキルを伸ばす4つのコツ

寄稿者: Oxford University Press Japan (2020/1/20)   

世界情勢が目まぐるしく変わる昨今、子供たちが21世紀の社会に本格的に参画し活躍していくためには「グローバルスキル」が不可欠である、という考えが広く受け入れられ始めています。私たちは英語教育を通して、どのような「グローバルスキル」を子供たちに身に付けさせてあげられるでしょうか。

オックスフォード大学出版局が刊行した最新のポジション・ペーパー『Global Skills: Creating empowered 21st century learners』では、このグローバル社会において子供たちに必要とされるスキルの中でも特に英語教育に関連性の深いスキルを以下の5つのグループに分けて示しています。

  • コミュニケーションとコラボレーション
  • 創造と批判的思考
  • 異文化コンピテンシー*とシチズンシップ
  • 感情の自己調整と幸福
  • デジタルリテラシー

では、英語を外国語として学ぶ日本の子供たちにこれらのグローバルスキルを身に付けさせるにはどうしたらよいでしょうか。この記事では、先生方にすぐに取り組んでいただける4つのアイデアをご紹介します。
* 異文化を理解して適切な行動をとることができる能力

1. 英単語の分類

子供たちに、単語をいくつかのカテゴリーに分類させます。この時、子供たちには新しい情報を学ぶ以上のことが求められます。なぜなら分類を行うには批判的に物事を考えて情報の意味を理解する必要があるからです。幼児・児童にはシンプルなカテゴリー分けが適しています。例えば「原色と混色は?」、「空を飛ぶ動物は?」、「泳ぐ動物は?」「それぞれの季節に適した洋服は?」といったものが挙げられます。情報の分類は批判的思考力を伸ばすために重要な役割と果たします。子供の英語レベルに合った取り組みを行わせることで、子供たちには幼少期から批判的に物事を考える癖がつくのです。Everybody Upなどのコースブックにも、子供たちの批判的思考力を伸ばすために適切なアクティビティが豊富に掲載されていますので、ぜひご活用ください。

2. プロジェクト

子供たちを少人数のグループに分けてプロジェクトを行います。共通の目標に向かって取り組ませ、物事の意味について話し合ったり一緒に何かを決めたりすることを通してコミュニケーション力コラボレーション力を身に付けさせます。さらに、プロジェクトに取り組むことで批判的思考力が高まり、創造力の向上にもつながります。ロボットを作ったりレストランのメニューを考えたりする楽しいプロジェクトであれば、まだリーディングやライティングの力が十分でない子供たちも無理なく取り組むことができるものもあります。プロジェクトが完成したら、短いフレーズを使った簡単な発表を行わせてみましょう。コミュニケーションの良い練習になります。最後に各グループが仕上げたプロジェクトを展示すると、子供たちの更なるやる気につながりますし、活気ある学習環境を作り出すことができます。子供に適した楽しいプロジェクトをお探しの方は、ぜひコースブックEverybody UpOxford Discoverをご覧ください。

3. ストーリーベースド・ラーニング

 ストーリーを基にした学習アプローチを取り入れてみましょう。物語は子供たちにとって大好きなものですし、英語を現実的なコンテクストで学ぶことができます。さらに、物語の登場人物の感情を理解することを通して、子供たち自身が感情を自己調整する力を身に付けます。自分の身に置き換えて考えさせるために、物語の内容について質問を投げかけたり、次に何が起こるか予測させたりすることも大切です。それによって子供たちはより物語に引き込まれ、物語を批判的思考で捉えたりお互いの意見を伝え合ったりできるようになります。内容によっては、物語を通して外国の文化を学ぶ良い機会にもなり、異文化コンピテンシーを身に付けさせることにつながります。新登場のコースブックLearn English With Dora the Explorerには各ユニットにストーリーアニメが用意されています。また、新サービスOxford Reading Clubではリーダー900冊をお読みいただけ、タブレット端末などのデバイス操作を通して子供たちのデジタルリテラシーを伸ばすこともできます。ぜひ指導にお役立てください。

4. 社会のルールと価値観

生活に必要なルールや価値観を身に付けさせましょう。友だちを助ける、あたたかい言葉をかける、一緒におもちゃを使う、公平に接する、優しくする、など、好意的な社会のマナーを学ぶことは子供たちにとって非常に重要です。これらのルールや価値観を身に付けることでお互いに協力し合えるようになりますし、感情を自己調整するために欠かせない「社会的に健全な生活」を送れるようになります。Everybody UpLearn English With Dora the Explorerなどのコースブックでは、社会のルールや価値観を学ぶ項目がシラバスに組み込まれていますので、英語学習を通してそれらを身に付けさせることができます。

子供への総合的な英語指導を考える

寄稿者: 芦川尚子(オックスフォード大学出版局) (2019/9/27)  

子供たちは、大人の想像以上に日々多くのことを吸収し、学び続けています。特に3~6歳の幼児期にあたる子供たちは、あらゆる点で急速に成長していきます。では、私たち英語教師は、幼児期の子供たちを指導するにあたりどのようなことに気をつけるべきでしょうか。そして子供たちが将来社会人となったときに大きく羽ばたけるよう、どのような能力を身につけさせてあげればよいでしょうか。

日本では子供の知識や技能だけではなく感性や道徳観なども包括的に伸ばしていく教育のことを「全人教育」と言いますが、欧米にも似たような概念があり「Whole child approach」と呼ばれています。このアプローチでは、学力や感性のほか、歩く、座るといった粗大運動能力など体の発達も視野に含みます。そして、子供たちの言語能力や社会情緒的能力*を伸ばしていくなかで社会生活に必要となる様々な知識や能力を身に付けさせます。社会生活に必要となる能力とは、例えば悩みや困難にぶつかったときに乗り越える力などです。こうして子供たちの能力を全面的に伸ばすことで、彼らの夢の実現へと繋げていくことが目標となります。ですから私たち英語教師は、英語指導が子供たちの様々な能力の発達へと結びつくことを心に留め、英語力を伸ばすことだけに注力するのではなく子供たちのあらゆる力を引き出してあげられるような環境作り・授業作りをしなければなりません。適切な環境とは、子供たちにとって安全かつ安心で、十分なサポート体制が整っていることを指します。そして、子供たちの好奇心を刺激し、時に難しいものにも挑戦させるような授業作りが成功のカギとなるのです。

まず環境作りですが、大事なのは子供たちに「ここは安心できる場所だ」と感じさせることです。すると子供たちのなかに「楽しい」「通い続けたい」「もっと学びたい」という気持ちが生まれます。パペットなどを使って子供たちと心を通わせるきっかけを作り、信頼関係を築いていきましょう。また、一人一人に目を配れるような授業運びになるよう注意し、その子の能力に応じて臨機応変に指導内容や方法を修正できるようプランニングしておくことが大切です。

次に、子供たちの知的・共感的好奇心を刺激するようなレッスン内容についてです。子供たち一人一人はそれぞれ違ったラーニングスタイルを持っています。よく言われるのは「VAKモデル」というもので、「Visual(視覚)」「Auditory(聴覚)」「Kinesthetic(身体感覚)」の3つに分けられます。レッスンプランを作成する際には、この3つの要素を含んだ指導内容やアクティビティをバランス良く入れましょう。例えば、「Visual(視覚)」はビデオや絵本、紙芝居など、「Auditory(聴覚)」は歌・チャンツやリスニング、「Kinesthetic(身体感覚)」はジェスチャーや身体を使ったアクティビティが挙げられます。

「VAK」の要素をバランス良く取り入れ、かつしっかりとしたシラバス構成に沿って「Whole child approach」の英語指導を行うためには、それらが予め揃っているコースブックを活用することをおすすめします。ここでご紹介したいのが、Learn English with Dora the explorerです。このコースブックは、世界的人気のアニメキャラクター、ドーラと一緒に英語を学ぶ楽しい教材で、幼児期に必要な英会話表現を学習しながら社会情緒的能力を伸ばすことができます。社会情緒的能力を伸ばすには生活におけるルールを理解させ、人との関わり合いの大切さやその方法を教えることが必要です。このコースブックでは、ドーラのアニメーションビデオやストーリーカードでの読み聞かせを通して、子供たちの非認知能力や知的・共感的好奇心を刺激します。そして、各レッスンにはAction Song、新出単語を紹介するビデオやドーラのアニメーションビデオ、ジェスチャーアクティビティ、クラフトなど、「VAKモデル」を活用した様々なアクティビティが詰め込まれているほか、少し難しいことや新しいことにチャレンジさせる工夫が散りばめられています。

*社会情緒的能力:社会性や協調性、自制心といったIQとは関係のない非認知能力、またはそれらを指す概念

Getting going with Let’s Go(Let’s Goを使い始めて)

寄稿者: 郡山ザベリオ学園小学校 英語科 (2019/7/17)  
LetsGo5

子供たちの学びは、そのクラスの構成やレベルに適した教材が使われているかどうかによって大きく左右されます。教師は授業で使用する新たな教材を探す際に、学習到達目標のみを考慮して選ぶだけでは十分とは言えません。それぞれのクラスにおいて、英語学習への意欲があるか、その先に何を求めているか、そしてどのような制約があるかを考える必要があります。学習者は誰なのか?クラスの人数は?授業の頻度は?誰が教えるのか?どのように保護者に学習成果を伝えるのか?教材はテストにどう利用できるか?リソース類の使用にどの程度時間を費やすべきか?また、最近主流のデジタルリソースやオンラインサポート付きの冊子教材を使用するにあたり、それを教師や児童が最大限活用できる環境があるか、なども考えなければなりません。

本校では今年度より1~5年生のクラスで Let’s Go 第5版のレベル1~5を使い始めました。この記事では、本校について、そして児童の英語学習に対する意欲や目標を最大限活かし且つ制約を緩和するためにLet’s Go第5版を選んだ理由についてご説明するとともに、教材を使用していくうちに分かったことについてもお伝えします。採用をご検討中の先生や既に使用されている先生方のお役立てればと思います。

郡山ザベリオ学園小学校は、福島県郡山市にある全校生徒約250名のカトリック系私立小学校です。英語プログラムは本校のカリキュラムにおいて欠くことのできない部分であり、本校の教育の特色でもあります。1・2年生は週2時間、3~5年生は週3時間、6年生は週4時間、英語の授業があります。

各教室にはパソコンとプロジェクターが配備されています。最近ではタブレットも50台購入しました。Let’s Go第5版には教科書をそのまま音声や動画とともにホワイトボードに映し出せるClassroom Presentation Toolというデジタル教材や、Online Playという子供たちがタブレットなどで自習することができる便利なウェブサイトがあります。

本校では、ほぼすべての授業がチーム・ティーチングで行われます。英語科教員は、専任英語教師1名、専任ALT1名、非常勤講師2名、担任1名、高校教師4名で構成されています。従って、どの教師にとっても教えやすい教科書を使うことが不可欠です。

週2~3時間の授業があるため、特に週1時間の授業がある学校と比べて、語彙が多い教科書が必要でした。来年から導入される小学校の新学習指導要領では、受容語彙(聞いたり読んだりすることを通して意味が理解できるように指導すべき語彙)と発信語彙(話したり書いたりして表現できるように指導すべき語彙)の両方合わせて約700語の英単語に触れることになっています。それとは対照的に、本校で使用しているLet’s Goシリーズでは5レベルを通して発信語彙が983語取り上げられています。各ユニットに新出語彙が明確に割り当られているだけでなく、オンラインのピクチャーディクショナリー等(Online Playに搭載)のサポートもあるので宿題を与えやすくなっています。低学年では一人で宿題を進めることができない子も多いため、現在本校では保護者が宿題をサポートできるよう日本語のガイドを作成しています。

児童の教材に対する反応はとてもよいです。各ユニットの学習内容に基づいたアニメーション動画で楽しみながらダイアログやチャンツを練習しています。当初、各ユニットのリーディングパートは、本校の児童たち、特に単語を読んで理解するためのフォニックスのルールをまだ学習していない3年生には難しすぎるのではないかと思っていました。しかしほとんどの子は、単語を分けてみたり、絵を手掛かりにしたり、推測したり、全く分からない場合は他の子に聞いたりしながら、ある程度スムーズに読むことができていました。

また、各ユニットのテストが編集できるのはとてもよいと思います。最近はオリジナルのシラバスをカスタマイズし、各ユニットの2番目に出てくる“Does he / she have a ____? ― Yes, she does. / No, he doesn’t.”のような「はい」「いいえ」で答えられる質問・返答の練習を飛ばす代わりに、“She / he has a _____.”など追加の会話練習を取り入れています。それにより、新しい表現をいくつも同時に覚えなければならない、という心理的負担を減らし、そのユニットの主要語彙の習得に集中させることができます。このようなシラバスのカスタマイズに合わせて編集することができるテストはとても便利です。

Let’s Goシリーズは語彙が豊富なシラバスで、デジタル教材も充実しています。週に2~3時間英語の授業がある本校では、1レベルを1年間で終えることができるのでとても適しています。また、同シリーズの教材を揃えて採用すると、基本の授業を発展させるために一部編集ができる追加のデジタルリソースがたくさん付いてくるので大変ありがたいです。どの教科書でもそうですが、Let’s Goについても本校の児童の学習環境・状況に合わせるために、例えば各ユニットで学ぶ会話表現の量を減らすなどの調整は必要でした。しかし、今年度後期には、状況を見てそれらの表現を学習内容に取り入れることができるかもしれません。私たちは、本校独自の環境とそこで与え得る限りの教育のためにLet’s Goを選び、うまく授業に取り入れ活用する旅を始めたばかりです。私たちができることの一つは、子供たちが学習する語彙や会話表現を増やしていくことです。児童が習った言葉を忘れずに運用していけるように、意味のある文脈で想像力豊かに言葉が繰り返し使われるような工夫を凝らした学びを提供すべく授業作りに励んでいます。

子どもたちの8つの知能を活かしましょう

投稿者:外山節子 (2019/5/14)

子どもたちは教室に多様性をもたらしてくれます。一人ひとり異なった学習者である子どもたちを受け入れ、伸ばすにはどうしたら良いでしょうか?その答えの一つ「多重知能理論」について詳しくお話ししたいと思います。ハワード・ガードナーは、ひとはIQテストで測ることができる以外にも、複数の知能を持っているとしました。トーマス・アームストロングなどの教育研究者が、「多重知能理論」を学校の場面に応用しました。

ガードナーの用語 知能の働き 易しい呼び方(外山訳) アイコン
言語的知能 言葉を使う 言葉の知能
論理数学的知能 数やパターンを使う 数と論理の知能
空間的知能 空間やイメージを使う 芸術の知能
身体運動的知能 体全体や手を使う 身体の知能
音楽的知能 歌い、リズム感があり、音楽を楽しむ 音楽の知能
対人的知能 他者を理解し、共に作業する 人間関係の知能
内省的知能 自分自身を理解する 自分を理解する知能
博物的知能 自然を理解し、物事を分類する 自然と博物の知能

 

私は20年前から小学校でゲスト・ティーチャーとして英語授業をするようになり、その経験を通し、多重知能理論を実感として理解するようになりました。小学校に行くようになった当初は、30人から40人の大人数の学級をどのように教えたら良いかわかっていませんでした。私の授業案はうまくいかず、ずっと黙ったまま身動きしない子どももいて、私には小学校英語は無理かなあと思っていたところ、特別支援学級での英語授業を依頼されました。一人ひとりの子どものニーズを念頭に、1回の授業に様々な活動を入れるように努力しました。うまくいきました。この経験を通常学級でも活かすようになり、担任教諭とのティームティーチングを今日まで続けてきました。小学校の英語教育に少しでも役立ちたいと願ってのことです。

「多重知能理論」のおかげで、どの子どもも取り残されない、学級全体が参加できる授業計画を作ることができるようになりました。8つの知能と、その知能を活用する英語活動のMIパイ表をご覧ください。

 

- 8つの知能と、その知能を活用する英語活動

さて、「小学校3年生に月2回アルファベットの授業をしてください」と依頼が入ったとしましょう。まず、アルファベットに関連する活動案をブレーンストーミングしましょう。次に、MIパイ表のそれぞれの知能の欄に振り分けて書き込みます。次のようになります。

1つ1つの活動の所要時間は、学級の子どもたちの性格によって異なりますから、担任の先生に「おしゃべりで活発」か「静かで慎重」か、など教えていただきます。それから、全体が45分になるように活動を選んで組み合わせます。最初の授業ですから、初対面の子どもたちが「音楽の知能」、「身体の知能」、「人間関係の知能」を使うようにし、子どもの様子を見る余裕を持ちます。最初の授業を振り返ってから、2回目の授業計画を作るようにします。

- 8つの知能と、その知能を活用するアルファベット学習の活動

第一時 活動の内容 準備 多重知能
1. 挨拶:ゲスト・ティーチャーと知り合う  
2. ABC Song:ボードに貼ったアルファベット表拡大版を指差しながら歌う。 -Alphabet表
-CD
3. ペアになり、大文字の形を身体表現する。 -Alphabet表
4. Lois Ehlert作“Eating the Alphabet”を楽しむ。 -絵本
5. 振り返り:本時でいちばん楽しかったことは何か考える。希望する子どもが発表する。  

 

小学校の英語授業では、すべての子どもに「できた!」「楽しかった!」という成功体験を保障したいものです。子どもたちに、自分の強みを見つけさせ、様々な知能を発揮させてください。そうすれば、あなたは最高の先生になります。

 


外山節子について
ベストセラー児童英語教材 English Timeの共著者として有名な外山節子氏は、敬和学園大学の客員教授を務めるとともに、NPO にいがた小学校英語教育研究会(PENの会)の理事として小学校教諭を指導するなど、幅広い活動を行っています。

参考図書
Intelligence Reframed, Howard Gardner, 1999, Basic Books.
You’re Smarter Than You Think, Thomas Armstrong, 2014, Free Spirit Publishing.
In Their Own Way, Thomas Armstrong, 2000, Jeremy P Tarcher/Penguin.
脳科学を活かした授業を作る 本田恵子 2006 C.S.L.学習評価研究所
自分の強みを見つけよう〜「8つの知能」で未来を切り開く 2018 有賀三夏 ヤマハミュージックメディア
特別新学級外国語活動のためのストーリーを歌で楽しむ英語絵本セット指導マニュアル 外山節子監修・著 砂田由美子/本間アユ子共著 2011 コスモピア
特別新学級外国語活動のための歌とリズムを楽しむ英語絵本セット指導マニュアル 外山節子監修・著 砂田由美子/本間アユ子共著 2011 コスモピア
Eating the Alphabet, Fruits and Vegetables from A to Z, Lois Ehlert, 1996, HMH Books for Young Readers.

イベントレポート ― Oxford Day 2018

寄稿者:Oxford University Press Japan (2018/11/2)  

 
今年のOxford Day は、これまでにない規模での開催となりました。全国各地よりご参集いただきました教育関係者の皆様に、心よりお礼を申し上げます。マイケル・スワン氏、キャサリン・ウォルター氏をはじめとする国内外の専門家らを交え、知見の共有や交流が活発に行われた当日の様子をご紹介します。

弊社は年間を通じて、様々なイベントを企画しています。今後開催予定のイベント・セミナーについては、こちらのページでご確認いただけます。イベント会場にて、皆様にお目にかかれるのをスタッフ一同楽しみにしております。

※この動画の視聴には、次のブラウザのご利用をお勧めします:Google Chrome、Safari、FireFox

イベントレポート―Let's Go第5版出版記念パーティー

寄稿者:Oxford University Press Japan (2018/11/2)  

 
去る10月9日(火)・10日(水)、東京と大阪にてLet's Go第5版の出版記念パーティを開催し、多くの先生方にお越しいただきました。当日は、新版のご紹介や楽しいグループアクティビティ、Let’s Goトリビアクイズを行ったほか、共著者によるトークセッションではLet’s Go誕生秘話も披露。ご参加者には軽食やお飲物をお楽しみいただき、和やかな会は盛況のうちに幕を閉じました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

Let's Go第5版では、フォニックスの基礎から学べる初学者向けレベルを新設。定評ある教授法とシラバスはそのままに、コース全体を通して「Can-do」アクティビティやアニメーション動画、新しいリーディング素材などを加え、これまで以上に充実した内容で先生方と学習者をサポートします。詳細を見る

また、無料でアクセスできる生徒用ウェブサイト「Online Play」も開設。全レッスンの音声と動画のほか、生徒の学習をサポートする楽しいゲームやアクティビティも満載です。Online Playにアクセスする
 

※この動画の視聴には、次のブラウザのご利用をお勧めします:Google Chrome、Safari、FireFox

 

Hopscotch Activity Sample

(2018/9/3)  
classroom

「石けり遊び」を通して体を使って学ぶ

体を動かしながら何かを学ぶというのは、子どもたちにとってごく自然のことです。話せるようになる前の子どもも、指示を耳で聞き取り、それに沿って動作を行うことで物事を覚えて行きます。ここでは、Oxford Basics for Childrenシリーズの『Listen and Do』より、教室で使える「石けり遊び」を用いたアクティビティを紹介します。

Hopscotch アクティビティシート (PDF) 100KB

質の高い教師トレーニング――私の授業を変えたIIEECコース

寄稿者:服部紀子 (2018/8/2)  
Noriko Hattori

寄稿者について
子供向け英語教室English Factory(名古屋市)の代表を務める服部紀子氏は、公立小学校でも英語指導に従事しています。2015年にIIEEC – Oxford University Press 児童英語教師トレーニング 認定コースを受講して以来、IIEEC大阪のStudy Group Meeting に定期的に参加。Model Action Talk(MAT)メソッドのスキルアッププログラムも受講し、さらなる指導力の強化に取り組んでいます。


みなさんは、4歳児に"What's this? It's a/an__."をどのように教えますか? 私は2015年にIIEEC-OUP 児童英語教師トレーニング認定コースを受講し、最善の方法を見つけました。英語を学ぶ日本人の子供の大半は、1週間にたった1時間のレッスンしか受けていません。 彼らは、教室以外に英語を練習する機会はあまりないのです。このコースは、そのような状況にある中で、みなさんが最少の時間で効果的に英語を教えることを可能にする手助けになるでしょう。

IIEEC-OUP 児童英語教師トレーニング認定コースとの出会い

このコースは6つのワークショップ(12のモジュール)で構成され、各ワークショップには「レクチャー」と「スキル演習」があります。スキル演習では、効果的な絵カードの持ち方、語彙、答えと質問を結びつけての指導方法が紹介されます。 私は、ワークショップを通して、Model Action Talk(MAT)メソッドの使い方を学びました。 MATメソッドは系統的、計画的に子供に英語を教えるために考案された指導法で、聞く・話す・読む・書く、4つの技能においてすぐに成果を出すことができます。

授業における指導の効果

私は、このコースを受講してから、生徒が積極的に英語で話すようになったので驚きました。 4歳男児は、「水筒」は英語で何というのか知りたく、自分の水筒を指差して "What's this?"と聞いてくれました。7歳男児は、教室の中にある備品を指しながら、"What's this?"、"What's that?"と繰り返し聞いてくれました。5歳男児は、ジェスチャーすることをがんばったので「腕が疲れた」と私に訴えてきましたが、彼の表情はとても明るかったです。 9歳男児は、鉛筆を忘れて "I want to borrow a pencil." と言いました。彼は、以前、ある会話表現の中で「want to」を学び、また別の機会に "May I borrow a pencil?" を学びました。彼は、二つの知っていることを合わせて、自分で正しい文章を創り上げました。生徒たちは、これまで以上に活気に満ちて、創造的になっています。「生きた英語」(Living English)つまり、自然のスピード、リズム、イントネーション、正確な発音を、本当に楽しく学んでいます。私は、指導に集中することでより効果を感じ、より多くの達成感を得ています。生徒が、自分たちの英語力が向上することで充実感を味わうだけでなく、わたし自身も講師として、子供の成長を喜ぶ親のような気持ちを味わっています。

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IIEECコースをお薦めする理由

楽しくユニークなMATメソッドによって、子供たちは難しいことでもすばやく容易に学ぶことができるようになります。そんなMATメソッドを学べるこのコースは、みなさんにとって目から鱗の体験になると思います。生徒たちは、ジェスチャーを使って、正しいスピードとリズムの自然な発話を身につけます。また、発話しながら、特別な方法で読み書きを学びます。このコースは、生徒が聞こえてくる英語に自然に反応できるようになり、物事に対し積極的かつ興味を持ちながら流暢な英語を話せるようになるための指導法を習得することができますので、すべての講師、または英語講師になりたい方に受講をお勧めします。
 

 

記事英文 

・IIEEC-OUP 児童英語教師トレーニング 認定コース 2018 の詳細はこちら

 

Project Packs

(2018/3/27)  
classroom

子どもたちのコミュニケーションスキルや批判的思考力を養うためのプロジェクトワーク素材を無料でご提供。アクティビティシートと対応する音声がセットになっているため、すぐにでも授業に取り入れられます。ダウンロードしてぜひご利用ください。

Portraits: Activity sheets (PDF) and audio (MP3) -15MB
Maps and Symbols: Activity sheets (PDF) and audio (MP3) – 21MB

Everybody Up Way! Part 5
パーソナライゼーション~自ら考え状況に合わせて表現することは最も大切な「P」

 

投稿者:Patrick Jackson  (2017/5/9)  
classroom

祖母がよく言っていました。「もし人と話していて会話が滞ってしまったら、その人自身について話してもらいなさい」。これで大抵はうまく行きます。自分のことについて語るのが好きな人は多いですし、そういう話題なら話す内容にも事欠かないのではないでしょうか。これはどの言語にも言えることですが、“What about you?”ほど便利な表現はありません。

子供の英語学習にも同じことが言えるでしょう。Everybody Upでは、プレゼンテーション、会話練習や表現に加え、状況にあわせて自ら考えて発話する活動にも特に力を入れています。実際、このコースがたくさんの先生方に支持されている理由の一つはそこにある、と私たちは考えています。

私たちはどの子にも自己表現する機会を与えたい、と思っています。自分の人生の物語を英語で伝えられるようになって欲しいのです。それはただ楽しくて子供たちの興味を惹くだけではなく、言語を学ぶための大きな手助けとなるのです。生徒一人ひとりの人生は一つとして同じものはなく、われわれ教師にとっては指導に活かせる情報の宝庫です。どの子にもそれぞれの人生の物語があり、それを話す機会が与えられると子供たちは皆喜びます。

自分が好きな物や嫌いな物のこと、飼っているペットのこと、趣味のことなどについて発表し合ううちに、子供たちの中にもっと英語で話したいという気持ちが膨らんできます。そして自分たちの人生や世界において英語が果たす役割がわかったとき、自信が芽生えるのです。さらに、自ら考えて表現する活動は、生徒同士、そして生徒と教師の絆を深めてくれます。それは「相手のことを知る」過程と言えるでしょう。

Everybody Upには、子供たちの写真が豊富に使われています。それがいきいきとしたページ作りに活かされており、また表紙の特徴にもなっています。この子供たちはEverybody Upフレンズと呼ばれ、学習内容を自己表現に活かす練習においては特に大きな役割を担っています。Everybody Upフレンズには、各レベルの学習者の年齢層を想定しそれに合った年齢の子供たちが起用されており、また人種も様々です。Everybody Upが全世界を対象としたコースブックだからです。

このEverybody Up フレンズはテキストの随所に登場し、毎回のレッスンの終了時に学習者に直接語りかけます。例えば、“I like chicken. What about you?”、“What places do you clean up?”、“When do you eat breakfast”など、質問はシンプルなものばかりです。私のお気に入りの質問は、恐竜をテーマにしたCLILレッスンの最後に問いかけられる “Do you have a pet? Does it have claws?”という質問です。この質問を目にするといつも、私が飼っている犬の小さく尖った爪を思い出します。

Everybody Up第2版では、各レベルのテキストに4つのプロジェクトが追加されました。これは、生徒たちに学習内容を自らに置き換えて発話・表現するための機会を与えるためのものです。もちろん、各プロジェクトは活発なコミュニケーションを促すクリエイティブなアクティビティが基になっています。たとえばレベル1には、生徒たちが「All About Me」という本を作るプロジェクトがあります。レベル4には、自分が想像する夢の島の地図を描き、そこで何をして過ごすのかを考えさせる、という楽しいプロジェクトもあります。このように自らの考えを伝え合う機会を積み重ねることによって、生徒たちはより大きな満足感を得ることができ、自信を持って英語を話せるようになります。

これもEverybody Upの大きな特徴の一つなのです。

記事原文 

Everybody Up Way! Part 4: 見た目良ければ学び良し

 

投稿者:Patrick Jackson  (2017/4/6)  
classroom

教材のデザインは学びに影響を与えるか?

児童英語に関して言えば、答えは「間違いなく大いに影響する」です。なぜなら他の年齢層の学習者に比べ、子供は目の前に見えているものを頼りにするからです。貧弱なデザインや見た目がつまらない教材を与えると、退屈そうな反応が返ってきます。教師がその教材の価値を重んじていなければ、生徒たちも軽く扱うでしょう。Everybody Upの制作中、私たちが最も優先したことの一つはデザインでした。デザインの良さが効果的な学習を促すとわかっていたからです。

私たちが目にしている世界は、色で成り立っています。動物たちが森の中で果物を探すときのように、私たちは色によって何かに気づいたり物事を選択したりしています。上質な紙を用い、高品質な印刷を施された教材は、子供たちの学習に大きな違いを生み出します。それは、子供たちがどのように情報を得て、いかに自然な流れで学習するかに関わる重要な部分なのです。

ページ内のレイアウトも、レッスンの流れを決める重要な一部分です。これまで何を学び、そしてこれから何を学ぶのか、という流れが分かりやすいものが好ましいと思います。これも学習方法に関わる重要な点だからです。Everybody Upのページは、現在の形になるまでに何通りものレイアウトが試されました。私たちは、わかりやすく、一貫性があり、学習の楽しさが伝わるデザインを追求しました。

レッスンを始める際に欠かせないのは、外の世界へとつながるような写真です。良い写真は主題をいきいきと引き立たせます。多くの写真を掲載しているEverybody UpのCLILレッスンのページがその良い例です。また、語彙の導入部にも、出来る限り多くの高品質なイメージ画を掲載しています。その方が生徒たちの記憶に残りやすいからです。

子供が実際にアクティビティを行っている写真は、見た目にも楽しく、また生徒たちの学習意欲を高めます。こうした写真は、子供たちにスタジオで実演してもらい撮影しました。これらの写真を見れば、生徒たちもEverybody Upの内容を身近に感じられることでしょう。そして、毎回のレッスンの終わりには、写真の子供(Everybody Upフレンド)が生徒たちに向かって質問する箇所があります。ここでは実生活で活かせる会話のモデルを示しています。

物語や登場人物を表すイラストが適切であれば、内容を理解しやすくなります。Everybody Upの各ユニットのレッスン3には、毎回ストーリーが登場します。ここでは、文脈における語彙の使い方を学習するとともに、「親切にする」「友達と仲良くする」「公平な行いをする」など16種類の道徳観について学びます。それぞれのストーリーは美しいイラストとともに展開するため、話の流れを理解しながら楽しく読み進めることができます。また、ロールプレイにもイラストが添えられており、学習効果を高めるのに役立っています。

デザインにおいては、その他にも次々に新しいことが追加されています。歌やお話にアニメーションが加えられ、Everybody Upのコンテンツがより充実しました。これについては私たちも最近まで実現するとは思ってもいませんでした。実写を用いたドキュメンタリー風のビデオやポスターも登場し、実効性のある指導やインタラクティブな授業作りがこれまで以上に容易に行えるようになりました。また、ウェブサイトや新設されたオンライン・プレイを活用すれば、生徒の家庭学習の機会も増えるでしょう。このように学習をサポートするツールが揃ったことに心が躍ります。

あるときオックスフォード大学出版局のデザイナーの一人が、「キャンディみたいな本が作りたい」と言っていました。他のどの年齢層の学習者とも異なり、子供は視覚的に学習します。その年齢が低ければ低いほど、視覚的要素は重要になってくるのです。

Everybody Upは視覚的な魅力も満載なのです!

記事原文 

Everybody Up Way! Part 3: 歌の持つ力

 

投稿者:Patrick Jackson  (2017/3/2)  
classroom

私は今、北京でのEverybody Upのプレゼンテーションを終えて帰って来たところです。まずそこでの出来事を少しお話ししましょう。それは私のトークが始まる直前のことでした。母親とともに会場に来ていたフィオーナという7歳の女の子が私の所に来て、歌を歌ってもいいかと尋ねました。もちろん私は喜んでそこに跪き、フィオーナが歌う映画『サウンド・オブ・ミュージック』の「エーデルワイス(Edelweiss)」にじっと耳を傾けました。すると、彼女の歌声に思わず涙が右頬を伝いました。この時私の心の琴線に触れたのは、彼女の美しい歌声やこの歌を上手に歌えるようになるまで積み重ねたであろう努力、そして私のために歌ってくれたという優しい心だったことは確かですが、同時に私は何かもっと他のものも感じていたのです。

「エーデルワイス」は私が赤ん坊の頃に母がよく歌ってくれた歌でした。その頃からはずいぶんと長い年月が経ちましたが、実はフィオーナの歌声を聴いた瞬間、赤ん坊の頃と同じような感覚が蘇えったのです。彼女の歌声が私の奥深くにある何かと結びつき、私の心は揺り動かされました。

このことをフィオーナの母親に話すと、彼女はフィオーナが赤ちゃんの時によく「ユー・アー・マイ・サンシャイン(You Are My Sunshine)」を歌っていたと言いました。それを聞き、今度は左頬を涙が伝いました。なぜなら、その歌は私の2人の子供たちが赤ん坊だった頃、私がいつも歌い聞かせていた曲だったからです。この二つの偶然について話すと、私のプレゼンテーションに参加していた300人の先生方は皆一様に驚きました。その後、私たちはこの2曲を2回ずつ一緒に歌い、会場は涙に包まれました。歌は心と深く結びつく力を持っています。私たちの心はともに歌うことで一つになったのです。

Everybody Upにおいても、歌は重要な意味を持っています。作曲を担当した方々の中には、グラミー賞を受賞したジュリー・ゴールドさんがいます。彼女は「世界中の子供たちが楽しく英語を学ぶための歌を作曲できるなんてラッキーだわ」と言ってくれました。ゴールドさんに曲を手掛けていただけた私たちこそラッキーです。またありがたいことに、Super Simple Songsでおなじみのデヴォン・タガードさんとトロイ・マクドナルドさんにも作曲に携わっていただきました。お二人は「子供たちが自信を持って英語を学べるような歌を作るのが大好き」なのだそうです。さらに、もう一人とても興味深い活動をしている方がいます。病院で音楽や笑いによって子供たちの心を癒す仕事をしているアイリーン・ワイスさんです。「子供たちの気分が晴れるような歌を作るのが好き」とワイスさんは言います。そして最後に、忘れてはならないのがレッド・グラマーさんです。グラマーさんは、Everybody Upに収録されている「I Like Chicken!」のようなとても元気で楽しい曲を手掛ける作曲家です。本書の共著者キャシー・カンパとチャック・ビリナも、ソングライター、パフォーマーとしても精力的に活動しています。

Everybody Upは、まさに鳴り物入りで発刊されました。そして、本書の宣伝活動も兼ねて開催されたGlobal Sing-Alongというコンテストでは、子供たちがEverybody Upに収録されている歌を歌うことによって、世界中の学校が歌を通じてつながることができました。子供たちが歌う姿は美しく感動的でしたし、英語学習にも役立ったようです。それこそ歌の持つ力と言えるでしょう。

歌はEverybody Upにとって欠かせない要素なのです!

 

記事原文 

Everybody Up Way! Part 2: CLIL is Easy! CLILは難しくありません!

 

投稿者:Patrick Jackson  (2017/2/2)  
patrick jackson

最近、CLIL(内容言語統合型学習/クリル:Content Language Integrated Learning)が注目されています。CLILとは、他教科の内容を学びながら言語学習を行う外国語指導法です。これを聞いて戸惑う先生方もいらっしゃるでしょう。何かとても難しいもののように感じられるからかもしれません。しかし実は、CLILはとても簡単で楽しい指導法です。生徒たちはCLILを取り入れた授業が大好きです。CLILによって、生徒たちは教室の壁を越えて外の世界とつながることができるのです。

Hard CLIL(ハード・クリル)やSoft CLIL(ソフト・クリル)という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、あまり難しく考える必要はありません。Everybody Upの各ユニットのレッスン4には、毎回Soft CLILが取り入れられています。このレッスンでは、英語学習と他教科を結びつけながら必要となる語彙や文法を学び、あわせて既習の言語を活用していきます。

Everybody Upには、理科、図画工作、社会、算数、保健などさまざまな科目を取り上げたCLILレッスンがあります。CLILレッスンは各ユニットのクライマックスと言ってもよいでしょう。生徒たちはユニットを通して積み上げてきた言語を実際の文脈の中で活用することになります。それは生徒たちにとって、とても楽しい体験となるのです。なぜなら自分が英語を話していると実感できるのですから。

私がEverybody UpのCLILレッスンの中で一番気に入っているのは「Dinosaurs」です。それはレベル4ユニット5のCLILレッスンで、恐竜たちが美しいイラストで描かれています。生徒たちはまず、feather、 tail、 claw、 wingといった動物の体の部位をあらわす語彙を学びます。次に、かつてどんな恐竜が存在していたのか、それらが何を餌としていたのか、体長はどのくらいか、どんな行動をしていたのかなどを学習します。本レッスンを通して、「Microraptor(ミクロラプトル)」といったカッコいい恐竜の名前だって覚えられますよ!そして最後に、生徒たちは自分の家で飼っているペットについて話し合い、実際の文脈の中で学習した言語を使う練習をします。

さて、本記事をお読みいただいた先生方には、指導経験や自信の有無に関わらず、CLILがそれほど難しい指導法ではないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。CLILは言語指導法のひとつにすぎません。この指導法において最も大切なのは、生徒たちが興味を持てるような生きた文脈の中で英語を使うことができるということなのです。

それがEverybody Upを支える理念でもあるのです!

 

記事原文 

Everybody Up Way! Part 1:
  Linked Language Learning―教室と世界を結ぶ言語学習「6つのアイデア」

Everybody Up第2版の出版を記念して、著者のパトリック・ジャクソン氏が、言語学習を様々な活動と関連付ける「Linked Language Learning」について寄稿してくださいました。Linked Language Learningは、Everybody Upシリーズの根幹をなすコンセプトであり、多くの先生方の支持を得る理由にもなっています。

 

投稿者:Patrick Jackson  (2017/1/10)  
classroom

私は今アイルランドに住み、仕事もここでしています。家の近くにニューグランジと呼ばれる場所があります。5000年以上の歴史を持つ、石と土でできた巨大な古墳です。昼が最も短くなる冬至の朝、日の出の光が細長い通路に射し込み内部の小部屋を照らす瞬間を見ようと、多くの人がこの場所を訪れます。

この特別な瞬間、私は英語指導の現場がどうあるべきかをいつも考えます。子供たちは教室の壁を越えたもっと広い世界と結ばれなければならない、光が外から中へ差し込むようにしなければならない、と私は思います。そうすれば、教室は光が輝き出す場所になり、決して忘れることのない楽しい場所になり、そして、そこに来ることができた幸運な子供たちに勇気と力を与える場所となるのです。それこそが私たちが願う教室の姿です。

最近の幼い子供たちは、かなり長い時間を教室の中で過ごしています。しかも、不自然なほど長時間じっと座っていることが多い。学校が終わると家に帰る前に他の教室でまた多くの時間を過ごす子供も少なくありません。家に帰ってもまた勉強という子もたくさんいるでしょう。こうした子供たちは、何をやってもすぐ飽きてしまい、やる気を失いがちです。授業に参加する気もなくし、学習プロセスの全てが嫌になり、スイッチを切ってしまうのです。この競争の激しい組織化した環境の中で、私たちのように児童を指導する立場の人間として最も難しいのは、彼らがどうしたら燃え尽きずに、また簡単にあきらめずに学習を続けることができるか、その方法を見つけることです。悲しいことですが、それが現実です。

どうすれば、魅力的で、子供たちが楽しみに来てくれるような、そして心が浮きたつようなレッスンを作り上げることができるでしょうか。どうしたら、子供たちのやる気を促し、気持ちを奮い立たせることができるのでしょうか。生徒たちの意欲を呼び覚ますための最良の方法は、どうすれば教室と外の広い世界とをつなぐことができるか、それを考えることだと私は信じています。それが、Everybody Upが完成するまでの支えとなった信念なのです。

ここでは、その具体的なアイデアをいくつかご紹介しましょう。

#1 先生が行うShow and Tell

教師が何かちょっとおもしろいものを教室に持って来ると、子供たちはとても興味を持ってくれます。持って来るものは、教師自身に思い入れがあるものであれば何でも構いません。私が子供の頃、ある先生が古い銀のスプーンを教室に持って来て、それについてじっくり話してくれたことがありました。35年も前の話ですが、そのスプーンのことは今でもよく覚えています。こうしたことが生徒自身の興味や情熱を周りと共有することにつながっていくのです。

#2 Snail Mail(カタツムリのようにのんびりした郵便)

今日では、誰もが当たり前のようにインターネットを使って簡単に世界中の人とコミュニケーションをとっています。ですが、メールよりもっともっと楽しいのは、どこか他の国の教室から送られてきた、ちょっとした食べ物やシールの入った昔ながらの小包です。外国から送られてきた絵ハガキなども、子供たちはほんとうに嬉しそうに受け取っています。海外の教室との交流はとても簡単にできますし、生徒たちにもよい刺激になります。ぜひepals.comというウェブサイトを見てください。きっと海外の教室と交流を希望している相手が見つかるはずです。私自身は、自分と気の合う世界中の教師たちとつながる方法としてすでに何年もこれを利用していて、とてもうまく活用できています。

#3 教室を「グローバル本部」にしよう

教室を「世界とつながるグローバル本部」のように飾ってみましょう。掲示スペースは生徒が作ったプロジェクト作品を展示するのに最適な場所です。また、壁のあちこちに世界中のいろいろな場所のポスターを貼ってもよいでしょう。こういった掲示物や資料は各国大使館や観光局などに問い合わせると、教師向け印刷物として快く送ってくれます。
※日本国内の大使館や観光局によっては、ポスターなどの請求に応じていない機関もあります。予めご確認の上、ご自身の責任においてご請求ください。尚、ポスター請求などに係るトラブルについて、弊社は一切の責任を負いかねますので予めご了承ください。

#4 「インターナショナル・デー」の開催

インターナショナル・デーの開催を計画してみましょう。生徒たちは一人一人、またはペアである国について調べ、それを発表します。保護者の協力が得られるのであれば、それらの国に関連した食べ物を少し用意してもらえるかもしれません。生徒には国旗を描かせたり、その国の言葉をいくつかフレーズで覚えさせたりしてもよいでしょう。このような活動は、みんなで楽しむこともでき、さらに国際的な物の見方を養うのにも役立ちます。

#5 ビデオやパワーポイントで自分たちの町を紹介しよう

自分たちの住んでいる町や村について英語版のビデオを作成させて、インターネットを通じてそれを他のクラスと共有してみましょう。生徒たちは楽しんで取り組みます。パワーポイントを使う方法もあります。町の中のおもしろい場所をいくつか写真に撮って英語でキャプションをつけただけのものを流してもいいですし、本格的に生徒にパワーポイントを使ってプレゼンテーションさせてもいいでしょう。これは自分たちの身の回りの場所を「英語版」にしてしまうというとても面白い方法です。

#6 English Huntingに出かけよう

教室以外の場所にあるいろいろな英語を探させてみましょう。これを行うだけで、生徒は英語が教室の中だけではなく、いろいろなところで使われていることを認識できます。携帯機器を持ち歩ける年齢なら、英語狩りをして、獲物を教室に持って来てもらってもいいでしょう。

今回ご紹介したアクティビティは、教室と外の広い世界を結ぶための数あるアイデアの中の一部にすぎません。教師として気持ちが入り込めば、どんどんアイデアは湧き出てきます。そして、一旦Linked Language Learning Teacherになったら、あとは前進あるのみです!一つ一つのプロジェクトも、毎年行っているうちにそれが英語授業の伝統になることもあります。新入生に前年度の生徒が作った作品を見せるのもよいでしょう。こうしたアクティビティは、子供たちが積極的にレッスンに参加し、英語を学ぶ目的を強く自覚するために最も適した方法だと私は確信しています。また、生徒たちにとって忘れられない学習の機会と体験を与える方法としてもベストです。しかしなにより、もっとも大切なのは、そのどれもが生徒たちにとって楽しいアクティビティであるということなのです。

Everybody Up!

パトリック


 

Everybody Upの共著者であるパトリック・ジャクソン氏。本連載Everybody Up Wayでは、児童英語教材Everybody Upの魅力やその背景にある著者・指導者としての思いを綴っている。

 

記事原文 

公立小学校における外国語教育 ~ 4つの主な傾向

オックスフォード大学出版局日本支社は、2015年夏より、滋賀県大津市教育委員会と協力し同市の小学校で行われる外国語活動に教材や教員研修を提供しています。この記事では、教員研修を担当する弊社のティーチャートレーナーRob Peacockが、公立小学校における英語教育の4つの傾向についてお伝えします。

 

投稿者:Rob Peacock  (2017/1/10)  
classroom

公立学校での英語教育は多くの点において重要な変革の時を迎え、その傾向は特に小学校で顕著に表れています。オックスフォード大学出版局日本支社では、2015年の夏より、ある自治体の教育委員会と協力し、その地域の小学校で行われる外国語活動のために教材の提供や教員研修を行っています。こうした画期的な事業に参画し、授業見学やワークショップを通して、私は、今後の日本の教育現場に強いインパクトを与えることになるであろう新しい傾向に触れることができました。ここでは、その中でも特に重要と考えられる4つの側面についてお話しします。

1: 中学年、低学年への外国語指導の拡大

現在の学習指導要領では、小学校の外国語活動は5、6年生が対象とされていますが、新たな指導要領では3、4年生まで前倒しされることになっています。私たちが協力している自治体では、全ての学年で弊社のベストセラー教材Let's Goシリーズを1コマ45分の授業で用いています。5、6年生は週に1回、1年生から4年生は月に1回コマ授業があります。早期教育における学習体験は、その後の成長期の外国語学習に対する意欲に影響をおよぼすため、初等教育においてはポジティブな環境作りがことさら重要となります。

2: 担任教師とALTのチームティーチング

コマ授業は、担任の教師とアシスタントのALTとで行われます。弊社が協力している自治体の教育委員会では、担任がALTとのチームティーチングを効果的に行うことを重要視しています。そのため、私たちは担任の教師がイニシアチブをとって授業を行うための研修を行っています。複数の学校から参加していただく集合研修や、授業見学も併せて行う学校単位の研修など、様々な形式で実施することで、自治体全域のすべての先生方に受講していただけるよう工夫しています。その結果、「かつては英語の授業はすべてALTに任せていたが、今では自信を持ってクラスをリードしている」といった報告を多くの先生方から受けるようになりました。

3:モジュール授業による学習時間の増加

多くの教育委員会では、授業前の朝の時間や昼休みなどを利用した短時間のモジュール授業を導入しています。私たちが協力している自治体の小学校では、10分間のモジュール授業を週3回行っています。弊社が推奨するモジュール授業には3つのパターンがあります。1.Oxford Reading Treeを使ったインタラクティブな読み聞かせ授業、2.Jazz Chantsを使った歌やチャンツの授業、3.Let's Goの教師用・生徒用カードを使ったゲームを取り入れた授業。こうしたモジュール授業を追加することによって、子供たちが英語に触れたり、英語でコミュニケーションを図る練習をしたりする機会が増え、さらに英語学習の楽しさも伝えることができるようになるのです。

4:楽しいアクティビティを通じて養うコミュニケーション能力の重視

現在の学習指導要領では、外国語活動を行う目標として、①外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませ、②言語や文化について体験的に理解を深めるとともに、③積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る、の3点を掲げています。弊社が協力する地域の英語の授業では、ゲーム、歌、プロジェクト、インタラクティブな読み聞かせなどを取り入れ、これらの目標に含まれる重要な要素を満たすよう工夫しています。そして、先生方はさまざまな工夫をして楽しく学習できるゲームなどを導入しています。あるクラスで私が見たアクティビティは、友だちを紹介するフレーズ(Let's Go レベル1 ユニット3の"This is my friend, ~.")を練習するものでした。クラスの担任教師が、あらかじめピカチューやふなっしーなどいろいろな人気キャラクターのマスクを用意していました。児童はペアになり、1人がお面をかぶります。そして別のペアを見つけては、"This is my friend, Funassyi."と言ってお面をかぶった友達を紹介するのです。子供たちは大喜びでこのアクティビティを行っていました。そして、"Let's meet Pikachu next."などと楽しそうに話していました。このアクティビティがあまりに楽しかったようで、子供たちは英語をとても自然に使っていました。

今後も早期段階での外国語習得に多くの力が注がれていくのであれば、好ましい結果が望めると思います。我が子により早い段階での英語教育を、と願う保護者の意向により民間の英語学校に通う生徒の数が増え、その最初のクラスでは、ゼロからのスタートではなく学校で習ったフレーズを復習するところから始まるかもしれません。全体としては、学習意欲の向上や、外国語学習や外国の文化について学ぶことに対し積極的な態度を示す子供の増加が見込まれるでしょう。

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