都市が好きな者は「郊外」を軽蔑し、広い庭が好きな者は人が密集する歩道や地下鉄を嫌います。しかし、郊外に暮らす人のほうが多いというのは今日の世界的な流れです。その背景にはどのような歴史があり、社会、政治、文化にとって何を意味するのでしょうか。交通手段やインターネットの発達が、英米のコンパクトな都市を大都市圏に変化させた経緯をはじめ、欧州と東アジアでの垂直に伸びる郊外、北米・南米の即席の郊外、雇用の場 ... 続きを読む

依存症とは、公共と個人の関心、社会と刑事司法の関心、家族、社会、医療の対応にまたがるテーマです。依存症の定義、なぜどのように発症するのか、治療法、この問題に社会がどう対処すべきかなど基本的事実を概説し、違法・合法の依存性薬物のほか薬物とは関係のない特定の行動（強迫性ギャンブルなど）が依存症とされるケースにも言及します。依存から回復へ至る著者の個人的経験にも触れながら、治療法の評価から法律や規制とい ... 続きを読む

陪審員が判決や事実認定を行う陪審制はどのように生成・発展してきたのでしょうか。今日の陪審制の原型とされる12世紀イギリスで設けられた制度が、植民地から世界へ継受された過程を説明します。刑事事件での一般陪審員の登用は、国民主権の実質化や司法への信頼や理解促進といった文脈で、欧州、南米、アジアに広がっていきました。一方、英語圏では米国を除くすべての国で民事陪審は事実上廃止され、米国でさえ非常に稀となり ... 続きを読む

ハンナ・アーレント（1906-1975年）の生涯と業績に光をあて、その思想が私たちにとっていかに重要なものであるかを明らかにします。実存主義の二大巨頭、ヤスパースとハイデッガーに師事し、政治について思索するに至ったその背景に、ドイツでユダヤ系の家庭に生まれ育った出自や、ホロコーストの経験が影響を及ぼしていることは言うまでもありません。権力、悪、全体主義、直接民主主義の意味と構築を探求したアーレント ... 続きを読む

ナノテクノロジーはSF小説などでの取り上げられ方などによる先入観も手伝って、一般からは正しい理解や認識が得られないまま敬遠されたり懐疑的な見方をされてきました。しかし、実際のところ、非常に刺激的な科学の一分野なのです。本書では原子間・分子間力、単一原子イメージング、量子閉じ込め、自己集合、分子機械、ナノ磁性など、ナノテクノロジーの主なテーマや概念を紹介し、プローブ顕微鏡で覗くナノスケールの世界へ読 ... 続きを読む

マイクロバイオームとはヒトの体に共生する微生物（細菌・真菌・ウイルスなど）の総体のことで、近年、人や動植物の健康や疾患と密に関わるものであることが明らかになってきました。疾患の治療や予防、持続可能な農業や食品生産への応用が進められる中、事実と異なる、あるいは誤認させるような主張の存在も懸念されます。マイクロバイオームの事実を概括し、私たちの健康がどのように、そしてなぜ微生物叢に依存しているのかを説 ... 続きを読む

クルト・ゲーデル(1906-1978年）は約100年前、どのような数学体系も不完全であるとする有名な定理を発表し、数学の本質に関する一般的な前提を覆し、大きな関心を集めました。本書は今日では数学の考え方に大きな影響を与える画期的な知的業績として確立された定理を、知的・歴史的文脈に位置づけ、重要な概念を説明し、実際に述べられている内容に対する一般的な誤解を解きほぐします。この定理は哲学的にもさまざま ... 続きを読む

傑出した哲学者で神学者のカンタベリーのアンセルムス（1033-1109年）について概説します。アリストテレス哲学の再導入で、哲学的言説が難しい専門用語で埋め尽くされる少し前に活躍したアンセルムスの言説は、明瞭かつ親しみやすいものです。自由な選択とは本人の内的状態や外的影響によって決定されるものではないという、今でいうリバタリアン的な自由意志について初めて明示しました。今日に至るまで、すべての神学者 ... 続きを読む

恐ろしく悲惨な悪事を耳目にしたとき私たちは「悪」という言葉を思い浮かべます。悪は神話や幻想であるとの考え方がある一方、悪は現実であり現代の世俗的倫理観の下では重要な役割を果たす概念だとの見方も存在します。悪は普遍的か、理解不能か。悪人を隔てる特別な心理的特質はあるのか。悪行の背景にある心理を分析し、精神病質と共感に関する現在の議論も吟味します。悪の哲学的問題に対するさまざまな見方を検討する一冊です ... 続きを読む

■国際多読教育学会 英語学習者文学賞 受賞■ 2人の人物がロンドンのベイカー街にあるシャーロック・ホームズの元を訪れ、調査を依頼した。興味をもったホームズは、友人のワトソンを現場のダートムアへと調査に向かわせた。薄暗く寂しいダートムアでは、バスカヴィル一族当主のチャールズ卿が命を落としていた?これは殺人だったのだろうか。現場に残された手がかりも不可解なものばかり。さらに、バスカヴィル一族の中 ... 続きを読む