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記事:CLIL導入のヒント

CLIL: 内容の三次元的側面

投稿日:2016/3/30

バーミンガムで開催された2016年のIATEFLのコンファレンスでの講演に先立ち、フィル・ボール氏が、 Improving language education through content: the “3 dimensions” of CLIL(教科を通じた言語教育の改善:CLILの3次元的側面)について寄稿してくださいました。

 

おもしろいことに、かの有名な1975年のブロック・レポート(Bullock Report:英国の歴史家アラン・ブロックの著作A Language for Lifeを指す) 以来続いている「教科横断型言語教育」の流れの中で、教科担当教師が代用語学教師になることを推奨される一方で、語学教師は教科の世界を理解するように求められることは決してないという皮肉な状況が続いている。教科の指導のこととなると、語学教師は暗闇の中に取り残され、通常の授業を見学することはめったにない。語学教師がその世界に最も近づくのは、Soft CLIL(いわゆる「言語主体」のこと)を実践することだが、この言葉の使い方は少しまちがっている。なぜ、われわれは「言語主体」にしたがるのか?なぜ「内容主体」にしないのか?言葉を補助として使えばいい。教科担当教師が言語を理解するように求められるなら、なぜ語学教師に教科を理解するように(そして使用するように)、求めることができないのか?そこには、ありあまるほどの多種多様な素材が、使われるのを待っているというのに。

それでもなお、語学教師が、たとえばバイリンガル教育を行ったりこのアプローチを少しでも取り入れている学校などで、CLILを理解し携わりたいと考えるなら、「内容」の3次元的側面を理解するのは有益だ。CLILの基本は「コンセプト(concepts)」と「手段(procedures)」と「言語(language)」の3つである。この考え方から見れば、言語も教科のひとつとなる。教師は、授業中何かの点で、この3次元のうちどれかひとつが他より際立っていると発見することがあるかもしれない。「コンセプト」の次元(重要)が高ければ、「言語」の需要も同じぐらいの高さだろう。こんなときは、ミキシング・スタジオで行うように、「手段」のボリュームを下げ、“どのように行うか”を他の次元より音を小さく、つまり平易にすればよい。組み合わせはさまざまだが、需要の変化に応じて“ボリューム”を調節するというのは、効果的な指導法である。

コンセプトとしての内容を採用し、手段の選択(認知スキル)という方法により、あるディスコースの文脈から派生した特定の言語を用いる-それはパワフルな考え方である。CLILの中心にある次元間の相互作用だ。特定のタイプのディスコースを用いて、何かを行えば、結局のところコンセプトは理解されるのだ。

懐疑論に立ち向かうためには(そしてよい評判を広めるためには)、CLILの核となる2つの特徴の基本は以下であると強調すればよい:

  • 教科のクラスで言語学習をサポートする(Hard CLIL)
  • 言語のクラスで教科学習をサポートする(Soft CLIL)

これらがうまくいけば、そのほかのこともうまくいくだろう。さらに、この2つの文をこんなふうに変えてもいいかもしれない。

  • 教科のクラスで言語を認識することをサポートする
  • 言語のクラスで教科を認識することをサポートする

CLILを成功させるためには、教えるのが語学教師であっても教科担当教師であっても、学習者を「コンセプト」と「手段」という名のプールに放り投げ、「言語」という浮き輪を投げ入れることが大事だ。言語学習は長年の間、学習者をプールの浅い所に慎重に連れて行き、きっといつかは泳いでくれるだろうと淡い期待を抱いてきた。だが、深い方にたどりつくことのできる学習者はあまりにも少ないのだ。

 

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児童英語クラスで手軽にできるCLILのアイデア

投稿日:2014/7/15

ティーチャー・トレーナーのフレイア・レイフィールド氏による児童英語クラスでCLILを行う実践的なアイデアを紹介します。

 

カテゴリー分けタスク(理科)
いろいろな種類の単語のフラッシュカードを用意します。ボードに大きな円を2つ描きます。それぞれの円に、例えば、fruit / dairy(くだもの/乳製品)、 plastic / paper(プラスティック/紙)、 animals / plants(動物/植物)のようなカテゴリー名を付けます。年齢の高い子どもたちには、living / non-living(生物/無生物)のようにもう少し難易度の高いカテゴリーを設けるとよいでしょう。フラッシュカードを生徒に1枚ずつ配り、正しい方の円の中にカードを貼りつけるように指示します。英語の読み書きがすでにできる年齢であれば、単語名を書かせてもよいでしょう。グループに分かれて話し合い、カードが正しい場所にあるかどうか確認します。

重さや大きさを測る(算数)
いろいろな物の重さや大きさを測ります。そのときに学習している内容に関連した物を選びましょう。たとえば、教室にあるものの重さを測ったり、手や足の大きさや身長を測ったりしてもよいでしょう。結果は、図や絵を用いたりして記録するように指示します。作業はペアで行います。最後にペアごとの結果をクラス全体に発表します。英語にたくさん触れる機会にもなり、また数学的なスキルも身につきます。

雑誌の切り抜き(図工)
古雑誌を用意します。または生徒に1冊ずつ持って来させてもよいでしょう。学習中の内容に沿った雑誌を選ぶようにします。たとえば、トピックが家ならインテリアやガーデニング関連の雑誌、外国や休暇について学ぶなら旅行雑誌やパンフレット、動物や環境なら野生動物関連の雑誌などです。生徒をペアに分け、ペアごとに1枚ずつ白紙の紙を配ります。生徒はあるテーマに沿って雑誌を切り抜き、紙に貼って行きます。テーマはたとえば、Places you want to go to(行ってみたい場所)とかAnimals you like(好きな動物)などがあります。こうしてできたコラージュをクラスで発表し、自分たちが選んだ絵や写真について説明します。どの年齢にも活用できるアクティビティです。

インターネットを使ったリサーチ活動とピア・ティーチング(社会)
やや年齢の高い子ども向けのアクティビティです。クラスを2~3人ずつのグループに分け、グループごとに異なるテーマを与えます。たとえば、動物について学習中なら、グループごとに異なる国名を割り当てます。生徒たちは、その国に住む動物を3~4種類選び、その動物について調べます。たとえば、The Kangaroo is a marsupial. It carries its baby in a pouch(カンガルーは有袋類です。お腹の袋の中に赤ちゃんを入れて運びます)といった情報を探します。この情報をプリントアウトしたり、メモリースティックにダウンロードしておき、クラスで発表します。新しくわかったことを英語で発表するよい機会となります。

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子どもを引きつけるCLILレッスンとは

投稿日:2014/5/1

児童向け新シリーズOxford Discoverの共著者、チャールズ・ビリナ氏が、児童英語クラスでCLILを最大限に活用するための実践的なアイデアを紹介します。

 

子どもを教える教師である私にとって、彼らがレッスンに引きつけられているかどうか見分けるのは簡単なことです。表情や姿勢、質問や答えの内容ですぐにわかります。そういうクラスは、子どもたちのポジティブなエネルギーで教室が震えるような感じがします。 そのようなクラスの特徴とは何でしょうか?ここにいくつか挙げてみました。

活動的、実用的、有意義、建設的、実験的、刺激的、やりがいがある、参加型

自分の学習に対する価値と目的がよくわかっていて、積極的に考えたり、知りたいことを質問しようとする生徒は授業に集中します。授業からそのような特徴を取り除いてしまったら、生徒は退屈し気持ちが離れてしまいます。

世界を発見する
ここで私たちは、CLIL (Content and Language Integrated Learning)として広く知られている内容重視型言語教育について思い起こします。CLILでは、教室の窓を開け、驚くべき外の世界を中に招き入れます。生徒たちは、授業の中で活動しながら、言語という道具を意味のある方法で使うことによって、自分自身で世界を発見していきます。その結果として、言葉に流暢さが増すのです。

幼い学習者たちにとって、CLILがうまく機能したレッスンは、有意義で、刺激的で、やりがいがあります。また、深く考え、積極的に学ぶ姿勢を要求します。

成功へと導く8つのポイント

CLILを児童英語クラスに組み込む際に覚えておきたいポイントを8つご紹介します。

1. 教科を通じて世界を紹介する
語学教師としての目標は言葉の流暢さを身につけさせることにありますから、高い言語スキルを養うためには、幅広い種類の主要教科(社会、理科、図工、算数などの分野)を導入するべきです。それぞれの教科には、独自の語彙、文法、学習アプローチがあります。こうしたCLILのレッスンでは、社会的言語(BICS: Basic Interpersonal Communicative Skills基本的対人伝達能力)と、学習言語(CALP: Cognitive Academic Language Proficiency認知・学習言語能力)の両者を組み合わせたり強調したりしながら、使用していきます。

2.生徒自身に質問を考えさせる生徒主導のアプローチ
ある教科を導入するときに、生徒にはまず、それについて「自分が知っていること」と「何が知りたいか」を話し合う機会を与えなければなりません。この探究型学習アプローチにより、生徒たちははじめから授業に引きつけられていくのです。その教科について前もって知っていることや自分の経験などを話すように求めれば、生徒は自分が学習過程に積極的に参加していると感じられます。そのあと、「なんでだろう」という疑問を持つようになり、その教科に関連した独自の質問をするようになってくると、その答えを見つけるという自分だけの興味を見出すようになります。こうした方法により、生徒を強く授業に引き込むことが可能となるのです。
 
質問事項は、科目によって以下のようなものがあります。
 
チョウの羽はなぜ4枚あるのか?
1年はなぜ365日なのか?
川や湖のそばに町ができるのはなぜか?
 
このとき、教師も一緒に考えながらプロセスに参加してもよいでしょう。「先生にも質問があるんだ」とわかると、生徒たちの認識が変わってきて、教師を学習パートナーとして見るようになるのです。

3.フィクションとノンフィクションを使って教科を導入する
私たちの世界にあるものはすべて、フィクションやノンフィクションの形で表現されると豊かさが増します。知識を新たな形で導入するためには、生徒たちは物語や説明文などに触れる必要があります。これにより、知識とともにリテラシースキルも身につきます。
以下は、Oxford Discoverからの引用ですが、フィクションとノンフィクションを使って教科を導入しています。ここで扱う教科は自然科学で、「私たちはこの宇宙のどこにいるのか?」という大きな問題を提示しています。


Oxford Discover Student’s Book 4より


Oxford Discover Student’s Book 4より

最初の読み物では、ある少女の夢の宇宙船について書かれた詩を通して、教科が導入されています。次の読み物では、太陽系について科学的な説明がなされています。この2つの読み物を通して、生徒たちは独特な学習方法に取り組むのです。

4.生徒の言語レベルに合った内容を選ぶ
使用する教材に使われているボキャブラリーや文法が、生徒が理解できるレベルであることを確認しましょう。これはつまり、生徒が読む物に含まれるボキャブラリーや文法のほとんどが過去のレッスンですでにきちんと指導され、学習済みであるということを意味します。
 
しかしながら、CLILのレッスンでは毎回、その教科やトピック特有の内容を理解するために必要なボキャブラリーや文法も導入されます。このような単語や文法は、本文を読む前か後にきちんと指導します。読み物の内容を通して新しいことばや文法を学ぶうちに、内容の理解度は増していきます。

5.子どもにとって興味深く、刺激のあるものを選ぶ
世界は魅力にあふれた場所ですが、教材となると退屈なものもよく見られます。生来子どもが持っている好奇心を刺激するような内容の教材を探しましょう。言葉の間に、不思議なもの、探究心をくすぐるもの、発見があるものが含まれていることが大切です。

6.学習内容を意味のある方法でまとめさせる
その教科についてある程度のことがわかったら、その知識を確認する機会が必要です。はじめは内容理解を確認するアクティビティでも良いですが、思考力を要する少しレベルの高い課題に速やかに進みましょう。
 
CLILがうまく機能しているレッスンでは、よく図式が用いられています。例えば、タイムラインやベン図、マインドマップ、表(原因と結果や、一連の出来事をかき表したものなど)などです。図式化は、情報の分析や理解に欠かせません。
 
これは、先の太陽系についての文章を図式化したものです。ここはベン図を用いて、地球と金星の比較をするように求めています。


Oxford Discover Student’s Book 4より

7.学習したことについて話す機会を与える
CLILのプログラムの中で、生徒たちは精読アクティビティを通してリテラシースキルを養います。しかし、リスニングやスピーキングのスキルを学ぶ機会も必要です。CLILのレッスンにはそのような機会がたくさんあります。例えば、読み物を使って独自の質問事項を作るように促すこともできます。これは、自分が知っていることを明らかにするのと同様、自分なりの方法で学習を進めさせることにもつながります。お互いに質問したり答えたりすることによって流暢さも改善されます。
 
さらに、上の例で使った図を会話へと飛躍させることもできます。ペアを組んで互いに話し合いながら、空欄を埋めて完成させるのです。完成したら、他のペアと一緒に学習したことを話し合うこともできます。

8.締めくくりの総括プロジェクト
総括プロジェクトとは、これまでに学習したことを利用して、独創的に何かを作り出すプロジェクトのことです。優れた総括プロジェクトは、協力的(生徒が協力し合って何かを成し遂げる)で、独創的(自分たちのアイデアを活用する)で、コミュニカティブ(プロセスの中でリスニング、スピーキング、リーディング、ライティング活動を行う)なものです。さらに、そのプロジェクトをクラスで発表する機会を設けましょう。これは人前で話すスキルを身につけるのにも役立ちます。
 
以下は、Oxford Discoverから引用した太陽系をテーマにした総括プロジェクトの例です。生徒たちは小さなグループに分かれて、グループごとに太陽系の模型を作成し、クラスで発表します。


Oxford Discover Student’s Book 4より

最後にお話ししたいのは、良いCLILのレッスンには生徒が主体的に学習するアプローチが使われているということです。教師は教室の中をまわって、生徒が積極的に参加しているか確認したり、学習を成功させるために必要な言語手段を用いたりして、学習プロセスを促進させます。生徒が自分で質問して、自分で答えを探せるように促す探求型のレッスンなのです。
 
一番大切なのは、CLILでは生徒たちが自分の言語スキルを有意義に建設的に利用できるということです。彼らは知識を求めたり発見したりしながら、言葉の流暢さと自信を身につけていくのです。
 
CLILを使ったレッスンや21世紀型スキルを子どもに教える実用的なアイデアやコツをもっと知りたい方は、こちら(Teaching 21st Century skills with confidence)へ。無料で利用できる動画やアクティビティや教具などが掲載されています。

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私たちは今何を学習しているのか?幼稚園におけるCLIL学習について

投稿日:2014/4/30

幼稚園児を対象とした新シリーズShow and Tellの共著者マーガレット・ウィットフィールド氏による、幼稚園でCLILを行うための実用的なアイデアの数々です。

 

CLILといえば、ここ何年ものあいだ英語教育の現場では流行語となっており、多くの教育プログラムの一部としても定着してきました。CLILを支持する人たちの主張によれば、教科(例えば理科や音楽など)の学習と言語の学習を組み合わせることで、生徒たちの学習意欲や理解力が高まるとされています。しかし、これは英語と教科の知識をある程度身につけた年齢の高い子どもたちの話であることが多いようです。では、幼稚園でもCLILを行って同等の効果を上げることはできるのでしょうか?

ところで、すばらしいことに幼稚園ではCLILを行う必要がないのです。だって、すでに行われているのですから!幼稚園の子どもたちは、数を学んだり、歌を歌ったり、絵の具を混ぜ合わせるなど、常に新しいコンセプトや教科に触れています。それに加えて、小さな子どもたちは生まれつき、自分の身の回りのことについて好奇心旺盛で、新しいことを探求するのが大好きです。そこで、ゼロから始める代わりに、日頃幼稚園で行われている活動が、教科と言語学習の可能性を最大限引き出すために利用できるかどうかを見てみましょう。

まねっこ遊びをしよう
まねっこ遊びはこの年頃の子どもたちの遊びの基本です。衣装を着たり、想像したりしながら、まわりの大人たちの世界を探検しています。これを利用すれば、何通りも方法で、さまざまなテーマの可能性を探ることができます。

社会科学
家族について考えましょう。家族構成や仕事について話したり、ロールプレイで家族を演じる機会を与えます。これをもとにして、動物の家族について話し合ったり、ロールプレイを行ったりして、テーマを科学へと広げていくのです。


Show and Tell Student's Book 2より

言葉の学習
ヒーローや王子さまやお姫さま、海賊など、子どもたちが興味を持っているキャラクターを使ってみましょう。これは、人物描写の練習方法としても優れています。一緒に絵本を見て、そのキャラクターがどんな服装をしているか、いろいろな場面でどんなふうに感じているかなどを話し合います。そのあと、キャラクターになりきって、幸せになったり、悲しんだり、暴れん坊になったり、勇敢になったりしてもらいましょう!


Show and Tell Student's Book 3より

社会科学
職業に注目してみましょう。職業の名前や服装、色の言い方を学習して、制服について話し合います。また、それぞれの仕事ではどんなことをするのか話し合ったり、消防士さんやお医者さんやおまわりさんなどの役をロールプレイしてみようと促してもよいでしょう-それほど応援する必要はないかもしれませんね!


Show and Tell Student's Book 3より

こうしたアクティビティは、どれもみなさんが教えている学習内容と関連しているかもしれませんが、ロールプレイはより多くの言葉を使う必要があるため、子どもたちは演技を通じて言葉を記憶しながら学習できるのです。

体験学習
実用的なアクティビティは、この年齢の子どもたちの興味ややる気を持続させるためのカギであり、あらゆる分野のトピックを利用して行うことができます。‘sink or float?(「浮くかな?沈むかな?」)’という実験アクティビティをご覧ください。このほかにもいくつかアイデアがあります。
 

教科 学習言語 アクティビティ
算数:数を数える、単純な足し算と引き算、多いか少ないか考える 数字、おもちゃの名前
How many?
おもちゃ(その他のもの)を使って、いろいろなお話の中で数を数える。例:「テディベアのピクニック」
音楽:歌を覚える、拍子をとる、算数:後ろから数える 数字  'Five little monkeys’のような簡単な数え歌を覚える、打楽器を使って拍子をとる
科学:感覚の学習 食べ物の名前
Is it …?
I like/don’t like…
目隠しをして、味やにおいで食べ物を当てる。

 


Show and Tell Student's Book 1より

このような一覧表は、CLILのアクティビティの計画を立てるのに役立ちます。教科から始めるか、言葉を目標にするか、すでにやっているアクティビティをもう少し発展させてみようかなど、いろいろな要素を考慮することができます。言葉と教科が自然に調和するように、またアクティビティで使う言葉は、覚えやすくて場面に合ったものを選ぶようにしてください。各要素の難易度も考慮に入れましょう。言葉が難しい場合は、子どもたちになじみのある教科を利用した方がいいかもしれません。コンセプトが難しければ、言語レベルを子どもたちに合わせるようにしましょう。

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CLIL:一時の流行か、それともまだ流行中か?(Part 2)

投稿日:2012/11/27

Project第4版の出版を祝したティム・ハードン氏による寄稿のPart 2です。今回はCLILプログラムの実践的な意義について述べ、私たちがこの先CLILとともにどこへ行くのか(CLILが私たちをどこへ連れて行くのか)を考察しています。ハードン氏はOUPのシニア・ティーチャー・トレーナーで、6年に渡ってCLILに携わってきました。Part Iはこちら(英文)。

 

スペインで5年間、フリーのCLILトレーナーとして働いていたとき、教師たちのCLILに関する質問がだんだんと変わってきたことに気がつきました。はじめの2年ほどは、「何」と「なぜ」の質問ばかりでした。例えば、「正確なところ、CLILとはいったい何なのか?」「なぜ学校や生徒の教育に効果的なのか?」といった具合に。しかし研修期間も終わりに近づくにつれて、これらの質問に対する答えも多かれ少なかれ出尽くしたようで、焦点が「どうやって」に移ってきました。「CLILを実施するにはどんなふうに取りかかったらよいのか?」「実際の問題にどう対応したらよいのか?」
 
この寄稿のパート2では、これらの「どうやって」の質問の中からよくあるものをいくつか取り上げて、簡潔に答えてみようと思います。いつかそう遠くない将来に、今よりもっと多くの教師たちが直接的にも間接的にもなんらかの形でCLILに関わる日が来るという想定に基づいて(Part 1参照)、CLIL実践に関する問題の闇の部分に少しでも光を当てることができればと思っています。

1) 外国ではCLILは一般的ですか?どの国でも実施するアプローチは同じですか?
最近までCLILはヨーロッパが中心でした。しかし今では他の国々でも一般的になりつつあります。どこの国でも、自国のニーズに合った方法でCLILを採用しています。ですから、CLILの実施方法には、唯一の正しい方法というものはないと思われます。

2) CLILの教科担当教師は言語を教えなければならないのでしょうか?言語に関する問題にうまく対処できないときにはどうしたらよいのでしょうか?
CLILの教師は普通、語学教師のように言葉を教えることはしません。ただし授業の中で主なボキャブラリーを教えたり、再利用したりする場面はあるでしょう。語学教師と教科担当教師が協力し合う理由のひとつは、あるトピックにおいて語学的に問題となりそうなことを前もって特定し、それらに効果的に対応できるようにすることです。

3) 指導の主眼は、教科と語学のどちらに置かれていますか?
難しい問題で、それについては多くの見解が発表されています。しかし、一般的には教科が中心とされています。第2言語は発言やコミュニケーションの手段です。CLILの教師が言葉に焦点を当てるのは、この役割の効果を高める意味において必要なときだけであって、たとえば単純過去と現在完了のちがいなどにあえて言及することはありません。

4) CLILの教師に語学指導の経験がない場合、どのようなサポートが必要ですか?
CLILのプログラムを成功させるには、CLILの教師と第2言語の教師が定期的に協力し合うことが大切です。これからの授業に備えてストラテジーやアクティビティなどの計画を立てたり、質問される可能性のある内容を明確にしておく必要があります。

5) CLILの教師が第2言語で教科内容を理解させるには、どのようなストラテジーがありますか?
視覚教材を多く使う、短い文で説明する、理解しているかどうか頻繁に確認する、さらに相互方法論的アプローチを用いるというのも、この難題に取り組む方法のいくつかです。もちろんこれは簡潔すぎる回答です。CLILの研修でも数時間から数カ月もかけて扱われることの多い問題なのですから。

6)CLILが成功するかどうかは、主に教師の英語レベルにかかっているのでしょうか?
CLILの教師がうまく英語を話せるかどうかより大切なのは、その教師が第2言語でコミュニケーションをとることができるかどうかであり、また生徒もコミュニケーションできるように導いてあげられるかどうかです。CLILでは、言葉を正確に使えることよりも、効果的にコミュニケーションできるかどうかを重んじる傾向があります。

7)場合により母語で説明するのは間違いでしょうか?
さまざまな考えや概念を、利用可能なあらゆる言語的および非言語的リソースを使って説明する方法を探すというのは、CLILの最も興味深い挑戦のひとつです。しかしながら、効率性を考えると、母語によって要点を明確にすることが望ましい場合もあるでしょう-生徒たちが言語理解の困難を克服するための支えとして、次第に母語に頼るようにならない限りは、母語の使用は許容されるでしょう。

8)英語教師の役割はどうなりますか?英語の授業は変わりますか?
CLILは専門の語学教師による授業の必要性を変化させるものではありません。実際、CLILによって教科の教師と語学教師が共同する機会が生み出され、それが生徒たちにとって大きな利点となっているのです。

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CLILで教える:授業での利点

投稿日:2010/11/29

フリーライターでブロガーのマリア・レーニア氏が、CLIL (Content and Language Integrated Learning)を使った授業の利点について述べたはじめての寄稿です。

 

CLILを使った教育プログラムを作成する、もしくはCLILを使って一度だけ授業を行う―そう考えただけでも、不安になったり、悩んだり、戸惑ったりすることがあるのではないでしょうか。しかし、その手ごわそうな見かけにどうか騙されないでください-CLILは、無理なく直感で指導したり学んだりできる方法なのですから。とはいえ、他の教授法と同じように、CLILもある程度の理解力と努力を必要とします。また、みなさんそうだと思いますが、CLILを指導の過程で習得したいと思うのであれば、それも可能です。教えやすい教授法は、成功へのカギです。CLILは、教師1人でも実践できますが、多くの場合、二人の教師がレッスンプランを作成する前に協力し合います-つまり、互いに学び合うということです。生徒にとって有益な知識を広げるということは、教師もまた新たな内容を指導できるように学ぶことによって、自分自身の知識を広げていくことになります。この過程には困難もあるかもしれませんが、CLILで教えてよかったと思えることの方が多いでしょう。いずれにせよ、これまで何を聞いたか聞かなかったかにかかわらず、これから述べるCLILの利点や問題点は、自分のクラスに取り入れるかどうかを判断する際の参考になるでしょう。

CLILの背後にある教育学的意図
みなさんはよくご承知だと思いますが、CLILとは科目を中心に指導しながら、外国語の指導に間接的に取り組む方法です。例えば、スペインの地理を教える場合、スペイン語による地理用語は二次的目標です。あまり論理的なアプローチとは思えませんが、なぜ今人気が高まってきているのでしょうか?-そしてCLILのねらいとはいったい何なのでしょうか?
 
CLILではトピックに重点が置かれ、外国語の語彙は教科を通じて教えなければなりません。CLILの背後にある理論では、語学教育を他の教科と切り離すより、互いに補い合って同時に教える方が学習内容の内在化と保持を向上させるとしています。つまり先の例に戻れば、スペイン語の地理用語を二次的目標として学習した方が、地理という足場のない中でただその語句を学習するよりも、効果的に覚えられるというのがCLILの考え方なのです。また、関連語彙がその場で補充されるため、スペインの地理もより効果的に学習できるというわけです。要するに、CLILは言語と教科の関連性を利用して、より効率的に指導することを可能にしているのです。

CLILは授業に何をもたらすのか

  • 多くの事例では、CLILは生徒の学習意欲を高めることに成功しています。学習意欲が高まれば、別々の科目で慎重に学ぶよりも素早く、しっかりと学べるようになります。現実の世界では、白か黒かはっきり区別することはほとんどありません。ですから、2つの教科によって幅広い現実という絵が描けるのは、CLILの大きな利点なのです。ただし、あくまでも内容を重視した教科が主要な目標であり、語学は二次的なものだということを忘れないでください。こうすることで、一貫性が生まれ、言語学習の発達を促す強固な足場を築くことができるのです。
  • CLILは、このように教科と言語がしっかりと結びついているため、その中には当然、文化的、社会的意義が込められています。CLIL学習の結果として、生徒たちの外国文化についての理解も深まり、言葉と社会の関わりという観点から“大きな絵を見る”ことができるようになるのです。
  • CLILの授業でも、さまざまな言語の中に幅広い教科に応用できるスキルや知識があることはいずれ明らかになるでしょう。生徒たちは、このようなスキルをきちんと理解できるようになり、それらをもっと質の高いものにしようという気持ちが芽生えるかもしれません。
  • CLILに挑戦することで、生徒たちは自分の能力に自信を持てるようになるでしょう。一番良いのは、それによって自信過剰にならないということです―CLILによって促進された正しい認識力とアカデミックな技能は幅広く認められ、高く評価されているのですから。

みなさんはどう思われますか?授業でCLILを使用したことがありますか?それはどんな授業でしたか?

 

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