時間とは一体何か。熱力学第二法則から複雑系や生命の起源まで、時間に関わる現在の物理的理解の方向性について案内する一冊。ニュートンに始まり3次元の「空間」と1次元の「時間」が4次元の「時空」というアインシュタインの概念を経て今日に至るまでの物理理論の発展を振り返ります。時間観が相対性理論により一変させられたことで生じた論争や哲学的戸惑いにも言及するほか、その溝を埋めてくれる今日の統計力学、認知科学、 ... 続きを読む

心と物質の関係については、誰もが一度は思いをめぐらしたことがあると思われます。これを扱う哲学の一分科が心の哲学です。この分野にとって最も重要かつ興味深い「心身問題」や「二元論」はもとより、人以外の動物、異星人、機械などの意識を定義する上での問題や、「物理主義」「志向性」といった厄介なトピックも取り上げ概説します。さらに、心の哲学が扱う問題は心理学や神経科学、経済、進化生物学、言語学にも踏み込むもの ... 続きを読む

今日の世の中で増加の一途を辿る冒涜行為。宗教や人種的マイノリティーの認知度向上、新たなメディアの発展、監視社会化の進展、前時代的な冒涜罪の遺産など、その要因を検討します。有名な事例のほか、図らずも冒涜的になった風刺画、冒涜と性と避妊の関係性なども紹介し、人々の記憶に残るものと忘れ去られるものがある理由を考えます。人知を超えた絶対的存在であるはずの神が世俗世界に傷つけられ得るとの前提を置いている点で ... 続きを読む

聖母マリアに関わる教義・崇敬、民間の伝承、聖画像が最も活発に発展したキリスト教の起源から宗教改革までを核に、カトリックや正教会をはじめとするキリスト教の宗派、そしてイスラームにおける見解を概説します。過去から現在に至るまでのキリスト教意識、そして今日の世俗的な世界におけるいくつかの誤解や思い込みについて、美術史、考古学、ジェンダー研究から教理史まで学際的な視点で考察を加えます。今日の大衆文化におけ ... 続きを読む

作品の短さだけが「短編小説」の特色ではありません。このジャンルの発展と密接な関係があった米・英の新聞・雑誌といった発表媒体の発達をはじめ、エンターテイメント的な色彩が強かった初期から、写実主義、ポストモダンなどの作家たちによって国際的な発展を遂げた20世紀以降までを概括します。短編小説の普遍的な要素のほか、ストーリーに多様性を与えるテクニックについて、A・カーター、A・チェーホフ、J・ボールドウィ ... 続きを読む

英語圏で最も重要な作家の一人ながら、作品が難解と評されるジェイムズ・ジョイス（1882-1941年）。2022年にモダニズムの代表作品と評される『ユリシーズ』が初版刊行から100周年を迎えるにあたり、その業績に注目します。作家の生涯における出来事や時代背景を踏まえ、祖国アイルランドの文化的コロニアリズムからの脱却や、日常的な心理、風景を紡ぐ自然主義的な手法と象徴主義的手法の融合など、作品の主題との ... 続きを読む

経済制裁は、対象国が国外から入手していた物資を欠乏させることで、国内的な問題を生じさせることを狙う外交政策の一環です。ある国による別の国への制裁措置に関するニュースは頻繁に報道されていて、国際政治の駆け引きでは非常に重要ですが、一般にはあまり知られていないのかもしれません。例えば、米国は30カ国以上に対して制裁を実施しています。また、ロシアは旧ソ連諸国に対し、繰り返し制裁を加えています。中国は国よ ... 続きを読む

変化が激しい現代のビジネス環境において、企業倫理はかつてないほど重要なものとなっています。報道に目をやれば、非倫理的な企業行動に対する起訴、告発、罰則を報じる記事は、ほぼ毎日報じられていますし、議会では企業や個人に対する強制力を高め、処罰をより厳しくする法案を可決しています。組織は効果的な倫理・コンプライアンスプログラムの策定と実施を迫られ、自分たちの行動が富や評判を危険にさらすのではないかと、企 ... 続きを読む

歴史を俯瞰しながら国際外交の諸活動ならびに外交交渉のプロセスについて紹介します。外交は政治にとって不可欠だとする著者が、交渉の普遍的役割について概説します。外交手法が転換するきっかけとなった過去の事例を取り上げ、状況に応じ機転を利かせる柔軟さが求められることや、傲慢さや分別の無さ、過度にも思える警戒心によって国の命運が大きく左右されてきた点に注意を払い、外交交渉を成功に導く要素について確認します。 ... 続きを読む

中世スペインのマラーノによる詩や回想録をはじめ、東欧のアシュケナジムによるイディッシュ語作品、新世界へ移民した者たちの物語までユダヤ文学は広い時代と地域にわたります。F・カフカ、B・シュルツ、I・バーベリ、E・カネッティ、I・B・シンガー、S・ソンタグ、P・ロス、G・ペイリー、A・オズ、D・グロスマンや、ホロコーストの記録、1948年建国以来のイスラエル文学、20世紀末の南米、東欧、南アで誕生した ... 続きを読む