2015年、学術・一般書部門のタイトルで、今回ランクインしたもののうち特筆すべきものをご紹介します。

【人文科学分野】

刊行年が古くとも、「名著」とされるようなものが定番書籍としてランキングに長く定着するのが人文科学分野の特徴です。今回の１～３位も前年の同順位のタイトルが入れ替っているのみで、W・マクニールの『A World History』（1998年刊）が引き続き上位にランクインしています。昨年ランクインしていないものでは縄文時代から戦後までの日本史をわずか130ページにまとめた J. ハフマンの『Japan in World History』 や、トマス・ネーゲル（1937年～）による哲学入門書の『What Does it All Mean?』　(1987年刊) が印象的です。小論文・レポート作成のいろはを指南する『How to Write: Successful Essays, Dissertations, and Exams』も、2002年刊行の旧版から一定の支持を集めています。

【社会科学分野】

2015年最も多くの注目を集めた1冊が、社会科学分野のトップセラー、『Japan and the Shackles of the Past』です。投資銀行家として活躍後、経済評論家に転じ、筑波大学で教鞭を執るなど、約40年を日本で過ごしてきた著者 R・ターガート・マーフィーが、日本という国の本質について一般読者に向けて歴史的経緯をひも解きながら論じるもので、出版後は主要メディアに書評が掲載されました。2015年末には 『日本 - 呪縛の構図 -この国の過去、現在、そして未来』（早川書房）と題した上下巻で邦訳も刊行されました。 このほか、国際関係論の教科書が圧倒的な強さを見せた社会科学分野ですが、グローバル化と格差の拡大といった現代社会の問題を反映するキーワードが随所に見てとれるランキングになっています。

【自然科学分野】

自然科学分野は、『Atkins’ Physical Chemistry』の改訂第10版、ジョナサン・クレイデン他著 『Organic Chemistry』　第2版をはじめ、日本市場では訳書でもよく知られている弊社の代表的な教科書タイトルが上位を占める状況に大きな変化はありません。その中で目新しいのは2015年春に改訂新版を刊行したルイス・ウォルパートによる発生生物学のテキスト、『Principles of Development』　第5版で、こちらも訳本が出ているものです。
意外なところでは刊行から20年を経ている Oxford Chemistry Primers シリーズの無機化学教科書のランクインです。トピックごとに分けられた薄いテキストを揃える本シリーズは根強い人気を誇ります。2015年には一部のタイトルで大幅に刷新し、オンラインの学習サポートがついた改訂新版を刊行しました。

【辞事典】

言語系の辞事典の商品群では2013年以来、英英辞典に新刊のないままで、持ち運びに適した小辞典の人気が高いという状況が見てとれます。Mini と Beginner’s の2種でランクインしている英和・和英辞典も引き続き好調です。
小辞典の対極に位置するOxford English Dictionary第2版、全20巻と補遺版3冊の収録内容をPCに格納してお使いいただけるのが魅力のCD-Rom（日本語環境でのテクニカルサポートが受けられる日本正規輸入版）もランキング上位に定着しています。

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